《(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~》魔學校からの刺客・3
しかしながら昨今はその発言の意味が捻じ曲げられていて、どちらかといえば、客商売全に広まってしまっている。そもそも客商売全に広まってしまうこと自発言の真意とは大きく違ってしまうし、その発言こそがクレーマーを生み出してしまうのだろう。
「ちょっと待った、さっきから聞いていればあなたは酷い発言ばかりしているようね」
そう言って姿を見せたのは、やはりメリューさんだった。そしてその隣にはリーサが立っている。
いつまで話を傍聴していたのだろうか――もしかして俺が何かするのを待っていたのか。だとすればもっと早く出てきてくれればこの橫暴な魔の話を聞くことは無かったのだけれど。
「やってきましたか。いったい何をしていたのですか、時間稼ぎをしたところで私はあなたを連れ戻す準備はとうに出來ているのですよ!」
「まあ、そうは言わずに。先ずはこれを食べてみてはくれないか」
そう言って、メリューさんは手に持っていた皿を魔の前に置いた。
それはモンブランだった。
栗をふんだんに使ったケーキで、確か現地の言葉で『白い山』という意味だったかな。スポンジケーキの土臺の上に生クリームをホイップしたものを包み込むように螺旋狀に栗のクリームを巻いていく。それがモンブランのスタンダードなつくり方だったはずだ。
「何だ、このケーキは」
「存じないようですね。こちらは、栗を用いたケーキでございます」
「栗、だと?」
それを聞いて、初めて魔は表を変えた。
目を見張るような表に変化を遂げた、と言えばいいだろうか。いずれにせよ、ずっと同じ表で固定されていたから、表を変えることが出來ないんじゃないか、と思っていたから、これにはちょっと驚きだった。
「ええ、そうです。ご存知ではありませんか? 栗を使ったケーキ……モンブランはかなり有名なものなのですよ。……こんなに味しいものを知らないとは、魔も知識は偏っているんですね?」
「……あなた、私は客よ?」
「さっき、客としてやってきていないというこちらの言葉にうんともすんとも言わなかったのはどなたでしたか?」
売り言葉に買い言葉。
しかしここはメリューさんが一歩リードといったじだろうか。
「……で。私に何をするつもりですか」
「だから、言っているじゃ無いですか。この目の前にあるケーキ……これを食べてください、と。ああ、もちろんお金は要りませんよ。これは、こちらからの好意ですから。好意にお金をいただけません」
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