《(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~》お姫様の家出・3

「……これは?」

ミルシア王陛下の前に定食を置くと、目を丸くして俺に質問した。

「これはじゃがですね。と馬鈴薯、それにカロットをれています。カロットは甘くて味しいですよ」

「へえ。じゃが……聞いたことは無いけれど、見たことはあるわ。これ、アルシスがよく作ってくれた……」

アルシスさん。

確か、ミルシア王陛下の國、グラフィリア王國のメイド長だったか。

もしかして、今回ここにやってきた理由は――。

「アルシスさんと、喧嘩でもしましたか。的には、口喧嘩を」

それを聞いたミルシア王陛下は目を丸くして、頬を赤くする。

どうやら俺の言葉は図星だったらしい。

「な。な……、どうして分かったの……?」

「いや、もしかして、そうなのかな……って思っただけですよ。ほんとうに、そうなんですか?」

「それは……。うん、まあ、そうね」

馬鈴薯を口にれて、何度も、何度も、その味を噛み締めながら頷くミルシア王陛下。

そしてその余韻が殘っているうちにご飯を一口。味について何らかのを覚えているのかもしれない。目を瞑りながらうんうんと頷いている。

そして、しの間を置いて箸を置く。

「……あんたの言うとおり。私、アルシスと喧嘩をしたの。些細なことでね。なんで喧嘩したかを教えることすら笑っちゃうくらい」

それから、ミルシア王陛下はぽろぽろと喧嘩した理由をこぼしていった。それから、喧嘩してからどうしてここにやってきたか、についても。

「私ね。自分の國以外何も知らないのよ。確かにあの國はずっと戦爭を続けている。けれど、それだけなのよ。他國との流は私がやっているけれど、それも儀式的なものばかり。きちんとしたものは大臣が行っているから。もちろん、容は理解しているけれど、大臣はいつも私のしていることにしゃしゃり出てきて……。だから、私は自分の國のことしか知らない。きっとそれは大臣の優しさなのかもしれないけれど」

「自分の國からも逃げたくて……。そして、その場所が、」

「ボルケイノしか、無かった」

ここを選んでくれるのは、ボルケイノの店員という立場からすれば有難いことだと思う。

けれど、普通の人間としてミルシア王陛下と接してみると、それはまた違う考えとなる。

「……仲直りしたら如何ですか?」

俺は気がつけばその言葉を口に出していた。はっきり言ってそれはタブーに近いこととも言えるだろう。他人同士の仲に口を出すのは、あまり良いことではないだろう。それは俺が怖いれたくないから、という自分勝手な都合があるからかもしれないけれど。

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