《(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~》するするさらりと味しいものを・中編

「まあ、メリューさんが何とか出來るならそれでいいんですけれどね。それで? メニューはいったい何を作るつもりなんですか?」

「それなら簡単だ。ってか、お前も知っているはずだぞ、ケイタ。何せお前が昔教えてくれた『ニホン料理』のひとつだ。あれが一番良いと思うのだよね」

「ニホン料理で……するするさらさら? そんなもの……正直たくさん思い浮かびますけれど」

メリューさんの異國料理(正確には『異世界料理』とでも言えばいいのだろうが)はかなりバリエーションが多いのだけれど、異世界人は結構俺の世界の料理も舌が馴染んでくれるらしく、よく俺の世界の料理をメリューさんに教えることがある。俺もこのボルケイノに居る人間として、多は料理をすることが出來る。とはいえ、それはメリューさんと比べれば月と鼈……とどのつまり比べるまでも無いものだ。メリューさんの実力が百としたら僕の実力が一、それくらいの実力差がある。

話を戻すことにしよう。メリューさんは結局、萬能ではあるのだけれど、全知全能ではない。とどのつまり、さすがにメリューさんが知らない國の料理は勝手に作ることなど出來やしない、ということ。

だからニホン料理はメリューさんも知らない、ってわけ。作ることも出來ないから、そこに関しては俺のほうにウェイトがあるかな。ま、だからといってそれが良い方向に導かれるのか、と言われると微妙だけれど。

「で、どうなんだ。思い浮かんだのか、思い浮かばないのか」

メリューさんの言葉を聞いて我に返る。思い浮かぶのか――って、答えは一つしか思い浮かばない。きっと、メリューさんはあれのことを言わせたいのだろう。

「お茶漬け……ですか」

「そうそうっ。それだっ。一度食べさせてもらって、作り方を懇願したの。覚えているだろう?」

ある夏の日の出來事を、まさか未だに覚えているなんて。まあ、大量の料理のレシピを覚えているメリューさんだ。エピソードの一つや二つ覚えていて當然なのかもしれない。

「でも別にお茶漬けじゃなくて、もっと何かあるんじゃ……」

「相手はミルシアだ。珍しいものじゃないと納得しない。お茶漬けなんてここでしか食えないだろうよ」

「そりゃあまあ……」

お茶漬けなんてお客に出したら「帰ってくれ」の合図というローカルルールもある――なんてことをメリューさんに言ったらどんな反応をするのだろうか。

ま、それはローカルルールだし、別に関係無いか。

取敢えずメニューが決まったのなら、俺はもう用済み。メリューさんが料理を完させるのを、待つばかりだ。

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