《(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~》三人きりの時間・前編

ケイタが片付けを終えて帰ったタイミングで、ティアが私のメイド服の裾を引っ張ってきた。

「……どうかしたか、ティア?」

いつもこんなことをしてこないから、何か嫌な予がしてきたが、とにかくティアの話を聞いてみないと何も始まらない――そう思った。

ティアは持っていた重たい本を開くと、私に見せる。

それの正はティアにしか分からず、ティアが眠るときも常に持ち歩いていたから、その本が何であるかは誰にも分からなかった。

しかし今、ティア自が本の正を私に開示している。

これは、ある意味チャンスなのではないか?

そう思いながらも、ゆっくりと――本の中を見ていく。

『×月○日 六名來客。全リクエストを到達。殘り七パーセント』

『×月△日 十三名來客。全リクエストを到達。殘り四パーセント』

「……これは、日記か?」

こくり、とティアは頷いてなおも話を続ける。

「この日記は、あなたの呪いがいつまで続くかを示したもの。そして、呪いは今日の営業を持って到達した。父様が定めた目標は、これでおしまい。あなたはこのボルケイノを営業する必要は無くなった。人間にも戻れるから、元の世界に戻ってまたトレジャーハンターの道に戻ればいい」

「……何というか、あなたってほんといつも急に言うわよね。明日、またボルケイノが閉まっていたらケイタたちが困るわよ」

「知ったことではない。そもそも、この世界に別世界の人間が干渉し続けることがいびつなゆがみを生み出すものだった。それを消し去る上でも、急に空間を閉鎖するしか方法はなかった」

「何かメッセージを殘すことは可能かな?」

「可能。強いて言えば、手紙にて伝えることならば」

「それでかまわないよ。時間をくれ。あと、シュテンとウラとリーサをどうするか考えないと……適當に言い訳を考えて、どこかに預けるか旅に出て貰うか……」

「それならば、既に相談をしている」

「あら、どなたに?」

そう言った瞬間、ボルケイノの扉が開かれる。

ってきたのは、ミルシアだった。

「……ミルシア。まさかあなたが、ティアの相談相手、ってこと?」

「うん。前にティアちゃんから話を聞いていてね。確かにボルケイノって変わった場所だなーとは思っていたのだけれど、まさか別世界なんてね。流石に想像はできないわよ。……で、何だっけ。シュテンちゃんとウラちゃんの鬼娘姉妹と、リーサという魔の卵を預かってほしいって話? 働かせてもいいのよね?」

矢継ぎ早にどんどん話を進めていくが、まずは、ちょっと待ってほしい。

「ちょっと、ちょっと待って。ミルシア。ほんとうにあなたにお願いしていいの? あなたは一応一國の王でしょう? そう簡単に事を決めて……」

「三人の養いぐらい、どうってことないわよ。それにアルシスがメリューのことを認めているからできることだし。別に鬼だろうが魔だろうが働いて貰えば平等に扱う。それがアルシスのルール」

意外と彼も人間らしく、それできちんとした考えを持っているのだな、と思った。

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