新しい住処はイギリスの首都ロンドン。今回も高層マンションに住んでいる。いまだ男に出會っていないが、慌てず様子を見ることにした。どちらにしろ、高度な文章は読めないので慌てていても仕方がし、イギリスは5歳から初等教育が始まるから図書館で調べるとしよう。

通學は絵さんに車で送ってもらい、學式に參加。まだ子供なので、學式に集まった生徒は男でもに見える可能がある。現に僕は、髪が長いからに見える可能が高い。生徒については見た目だけで判斷はできないだろうが、先生は間違いなく全員だった。

イギリスの男風の名前を知らないだけかもしれないが、クラスにっても男風の名前は見當たらない。疑問は深まるばかりだ。

數日通い、校であれば自由に移できるようになったので、ずっと行きたかった図書館で本を探すことにした。狙うは世界史。今世を理解するためには世界史が手っ取り早いだろう。早く、前世の知識と比較したい。

すぐに目當ての本が見つかったので、読んでみると偉人の多くがということ以外は、ほぼ前世と同じ流れだった。そして偉人の一部は男だということもわかり、「この世にいる男は僕だけなのか？」という問いに答えを出すことができ、ひとまずは安心した。だが、別の大きな問題があった。

本には「有史以來、人口の9割以上が。9割を下回ったことはない」とはっきり書かれている。僕の錯覚だが、本が「男の比率が大きく偏ったいびつな世界にようこそ」と語りかけているようにじた。

さらに詳しく読んでいくと、王が國中の男を集めた後宮を作って贅沢三昧な生活をしだ結果、革命で滅びた。戦爭になると男がに襲われ、陵辱される事件が発生する。など、前世と今世では、男の立場や行が逆転している。それに加えて、9割がという比率だ。近年になっても、治安が悪化すると「男狩り」と稱する拐行為が蔓延し、外に男が出られない國もあるようだ。

アメリカで母さんが「外には怖い人が沢山いる」と言ってたのは、脅しではなく事実だったのか。この世界、怖い。

僕の怪しい英語力でどこまで正確に読み取れたか不安ではあるものの、この世界では男は圧倒的な弱者であり、に搾取されてきた歴史があったのは間違いないだろう。もちろん男も何もしなかったわけではない。

自衛手段として、これも有史以來から々と試されてきた。その中でも、一人の男に複數のが集まり、男はに神との安らぎを、は男の安全と金銭を提供するハーレム制度が代表的だろう。

昔は、村に男が1人いて全員の共有財産だったこともあったらしい。子供も村全で育てていたようだ。ハーレムメンバーだけで村が作れるとは……想像してた規模より大きい。なんだこの世界は。

これを読んだときは、ライオンみたいだなと笑ってしまったが、今でもこの制度が殘っているということは有効な手段なのだろう。

そう、いまでも男はハーレムを作ることが推奨されている。いや、社會に強制されている。

歴史書ではハーレム制度の詳しい説明は書かれていなかった。詳しく調べようとしても僕の英語力では、書かれても理解できそうにない。

「母さんたちが寢ている間に、スマホで調べるか」

その晩、母さんたちが寢てから起こさないようにベッドを抜け出し、サイドテーブルで充電しているスマホのロックの解除(目の前で解除していたので覚えていた)し、ブラウザを立ち上げ「ハーレム制度」で検索。すぐに目的のページにたどり著いた。ハーレム制度には男とにそれぞれ義務と権利が課せられているようだ。

男は「が男のを守る」「複數のと際&結婚」できる権利がある代わりに、「の神的・的な満足させなければならない」といったハーレムを適切に管理する義務から「20代で最低でも一人と結婚し、子供を作らなければならない」といった法による強制まである。

また、男は15歳になると1(最上級)〜10(最下級)にランク付けされ、男ランクに応じてハーレムに加えられる人數が制限される。検査は毎年行われ、結果し応じてランクが変する。

そもそもこのシステムの起源は、子供を作る能力。端的に言ってしまえば、種無しを見つけるためだと言われているが、現在は、男を評価するだけの仕組みに変化し、見た目・格・格・力・権力・名聲といった複數の項目から男をランク付けをしている。

は男ランク・ハーレムの序列が社會的なステータスになるようだ。

過去には男平等を訴えてハーレム制度を廃止した國もあったが、出生率が著しく下がり、この狀態が続くと國として維持できる出來なくなるため、ハーレム制度が復活したという歴史的な経緯があり、この世界において男を平等に扱うことは、滅亡する行為だというのが歴史が証明してしまった。男は明確に扱いを変えるというのが世界的にも常識となっているようだ。

「社會に余裕があればこそ、男平等の世界が実現できるのか。男比が偏った世界では、男で適切な役割を押し付けないと、これ以上の繁栄は困難と。表面上は前世と似てたから油斷していたけど、歪で狂った世界だな」

「ここまで男が貴重だと、僕が通したときはとろろご飯とかでてくるのかな。ははは、笑えない冗談だ」

大きな衝撃をけたため、思わず獨り言をつぶやいてしまった。し手が震えながらもスマホを作して、さらに人口についても調べてみると、前世との意外な違いが見えてきた。

「世界の人口は、前世の三分の一にも屆かない。特に、人工授・子バンク・醫療施設が整っていない途上國は人口がない。アフリカ大陸あたりは、人がいない可能もありそうだ。しかも、産業革命が起きても人口発は発生はせず、人工授のシステムが整って、ようやく人口が大幅に増加したのか。それでも人口発とは言えない増加率……か」

様々なwebサイトを見ながら、さらに前世との違いを整理し、転生して5年。ついに結論を出すことにした。

「間違いなく転生先は、パラレルワールドもしくは異世界だろう」

表面上は、前世と共通しているところが多かったので結論を出すのに躊躇していたが、見えにくい部分でこうも違うと、この結論を出すしかない。そしてこの結論を出すということは……。

「妻や子供をもう一度見たかった。という淡い願いは儚く消えたか」

死ぬ直前は辛いことが多かった。結婚しているのに想いは通じず、心は磨耗するばかりだった。だが、付き合って初めてのデート・結婚・子供の誕生・子供の長、一つ思い出せば次々と出てくる幸せだった思い出。

「そうか、もう、取り返しがつかないのか。そしてまた、結婚をしなければならないのか」

そう心から実したとき、これ以上、何かを調べる気にはならなかった。

「もう寢よう」

そう心の中でつぶやいてから、再び、母さんのベッドに潛り込んだ。