《男比が偏った歪な社會で生き抜く 〜僕はの子に振り回される》30話

ライブ配信でやりたいことは、いくつかあったんだ。

その中には格付け番組のような企畫もあったんだけど、一人じゃ盛り上がらない……。というこで、ラジオでは定番の普通のお便り――ふつおたを試すことにした。

匿名のアンケートで集めたものの中から、母さんや絵さんの厳しいチェックを通って採用されたのも容ばかり。

ライブを出したいからって、事前に教えてもらうことは出來なかったけど、どれも僕が話しやすいネタばかりだと思っている。

「これから、みんなから送ってもらったお便りを読むね!」

言い終わると同時に、畫面の右側にお便りのテキストが表示された。

僕の目の前にモニターがあり、それを見つつコメントをするので、実際にお手紙を持って話しているわけじゃない。

「最初は、えーっと……ペンネーム、するウサギさんですね」

なんて可らしい名前なんだろう。

きっと、純粋でキラキラしたことが書かれている違いない。

「ユッキーこんにちは!」

「はい、こんにちは」

一人で二人役をやっている。なんだか奇妙な気分だ。

「最近、運命的な出會いをした男の子がいるんです! 何度も襲いかかろうとしてしまいましたッ! この気持ち、どうすれば良いですか!!」

「うんうん、好きな異がいたら襲いかかりたくな……ったらダメだよね」

らしい名前なのに容がエグイ。

チェックかられてしまったのかな……?

顔を橫に向けてる。

エンジニアとしてパソコンを作している飯島さんの隣に母さんがいる。

パイプ椅子に座りながら、小さくうなずいていた。

あ、この容はオッケーなんだ。

転生して十年以上経つけど、常識のズレは、まだあるみたいだ。

「運をして、発散すると……いいんじゃないかな」

盛り上げなければいけないのに、一言で終わらしてしまった。

々と経験の乏しい僕には、これ以上の発想は出てこない。

どうしようと助けを求めるかのように、コメント欄を見ると「どんなスポーツが好きですか??」といった容が滝のように流れている。

そうか、これを拾って話を広げれば良いのか!

「僕が好きなスポーツはサイクリングかな。ロードバイクも良いけど、ミニベロに乗って街中を走ってみたいんだ」

ミニベロとはタイヤが小さい自転車のこと。街乗りに最適なんだ。生まれ変わる前はよく乗っていたんだけど、この世界で同じことをしたら自殺行為だろう。

に囲まれて攫われてしまうか、警に補導されるかの二択かな。デッドオアライブいたいな世界だ。

飯島さんが「SNSのトレンド一位がサイクリングになった……」とつぶやいているけど、気にしたら負けだ。次に行こう!

「じゃ、次! ペンネーム信じれば救われるさん。えーっと、あなたは実在しますか? それとも高度なAIなのでしょうか?」

「おっと! これはまた、メタい話ですねッ! ちゃんと回答しようと思うので、こういった話が苦手な人は音聲を消してください」

數秒沈黙してから、再開する。

「僕は、極裏に開発されたAIではありません。実在します。バーチャル日本にちゃんといます! どうです、しは安心しました?」

次の瞬間。コメントが止まった。

ううん、止まったように見えるほど高速に流れている。これじゃぁもう役に立たないな。ちなみに、同時接続數は見ないことにした。もう訳の分からない數字になっていたからね。

ちらっと、母さんの顔を盜み見ると渋い表を浮かべていから、容的にギリギリだったかな? でも、僕みたいな男はちゃんといるんだよって、伝えたかったんだ。

それが分かっているからこそ、チェックが通ったんだと思う。

その気遣いが、ありがたいな。

「だからさ、いるかいないかなんて些細なことで悩まず、今この瞬間をもっと楽しもうね!!」

手を握って親指だけ上げる。文字は読めないけどコメントの流れは速いままなので、僕のアクションで盛り上がってくれていると信じて次に進む。

「じゃ、次! お便りはいっぱいあるからね、どんどん読むよー!」

テキストが切り替わる。今度はしだけ長めの文章だった。

「ペンネーム、虛構に生きるさん。私たちの間では二つの派閥に分かれて、日々、お互いを攻撃しています」

冒頭から騒だな…。

読んでも大丈夫なのだろうか。

「毆り合うことも多く、このままだと爭いはもっと激化してしまいます。助けられるのはユッキーだけです!! お願いします! あなたは、本當に男なのか、それとも実はなのか、教えてください!! 私たちはどちらでもOKですから!!」

バーチャルならではの疑問だね。最後の一文を無視した想だ。

男なのかなのか、皆さんのご想像にお任せします、と答えるのが無難かな。でもそうしたら、彼たちの爭いは終わらない気がする。

この世界において男の取り合いは、拐、殺し合いといった犯罪に走ることも珍しくなく、僕だって危ない目には遭ってきた。

自己満足だとは分かっているけど、この世界に住むには、幸福な人生を送ってしいと願っている。だって、あまりにも悲慘なことが多すぎる。

きっと前世の価値観を引きずっている僕だけが抱いてしまう想いで、他の男たちからすると、不自由な生活をしている自分の方が、不幸だと思っていると思う。

その考えは正しいと思うし、尊重はする。

ただ、この世界に一人だけ、全く逆の考えをもった男がいても良いんじゃないかな。

「男か、か、だって!? 僕は男だよ!!」

口で言っても信じてくれないからこそ、こういったお便りが來ているのは間違いない。証拠を出す必要があるだろう。

「あ、ちょっと、待っててね!」

飯島さんに合図を送って音聲をミュートにしてもらい、母さんに向かって話しかける。

別以外の部分はモザイクかけるから、証拠として健康保険証を見せたいんだけど良いかな?」

「ユキちゃん、本気なの?」

「うん」

「…………はぁ」

母さんから深いため息が出た。

怒っているわけではなく、わがままな子どもを見る目をしている。

曖昧なままの方が都合が良いって分かってはいるけど、僕はハッキリさせたいと、そう思ってしまったんだ。

「いいわよ。飯島さん、準備できるかしら?」

「は、はい! 1分でいけます!」

現場が慌ただしくなった。

財布から健康保険証が出ると寫真が撮られる。

パソコンを作してモザイクをいれると準備が整った。

「いつでも、いけます!」

飯島さんの張した聲がスタジオに響きわたった。

「分かったわ。ユキちゃん。大丈夫?」

「うん。考えは変わらないよ」

「なら、好きなようにしていいわよ。何があっても守ってあげるわ」

「母さん……」

申し訳ないと思いつつも決斷は変わらなかった。

正面にあるモニターをじっと見つめる。

「ミュートを解除します」

ミュートアイコンが消えた。

「みんな、お待たせ! それじゃね。証拠を見せるよ。バーチャル健康保険証の一部だよ!」

お便りの上に表示された。

モザイクばかりの健康保険証だけど、別の部分だけは「男」の一文字が読めるようになっている。

コメント欄を見ようとすると……消えていた。

「え!? どういうこと?」

ライブ配信中だということも忘れて、飯島さんに話しかけてしまった。

スタッフの存在をじさせたくないと思っていた僕としては大失態だったんだけど、どうやらそれどころではないみたいだ。

「そんなこと……あえりえるの……」

必死にパソコンを作しているみたいで、僕の聲には反応してくれなかった。

母さんはモニターをじっくり見つめて微だにしない。

何がおこったの…?

「配信サイトが、落ちました」

「どういうこと?」

狀況が変わりすぎて理解が追いつかない。オウム返しをしてしまった。

「アクセスが集中しすぎてサーバがダウンしたみたいです。世界中で使われているサイトなので、普通じゃ考えられませんが……。現実で起こった出來事です。ネットでもかなり話題になっているみたいで、すでにニュースサイトに記事が掲載されています」

飯島さんから攜帯電話を見せてもらうと「噂のバーチャルキャラクターは、実在する男だった!」の文字が目に飛び込んできた。

コメント欄には歓喜の聲が大多數であり、中には「神は実在した!」といった訳の分からない容もある。ううん、違う。それが大半だった。

どうしよう……。

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