この前の実況配信は「吐息事件」と呼ばれるようになり、多くのが失神して倒れてしまった。正確な數は怖くして聞いてないけど、數十レベルではないのは間違いなさそう。多分、百でも足りないかも。

急院する人もいたらしく、當然、アーカイブは公開できない。伝説の畫になったはずなんだけど……録畫していた人も大勢いた。そういったたちは個人で楽しむだけではなく、CDといった理デバイスで闇取引をするようになって、ちょっとした社會問題になりつつあるとニュースで報道されてた。

インターネットに公開したらすぐに削除されるシステムがあるらしいので、ネットでは絶対に取引されないのが唯一の救いかな。

今回の配信の影響はそれだけでなく、別の所にもあった。なんと、筋トレブームが到來しているみたい。サプリメントからジムまで筋トレに関連する企業の売上が軒並み上がっていると聞いて、僕のほほはずっと引きつっていた。

なかには、この前の配信をイヤホンで聞きながらラニングをしている人もいるらしい。目の焦點は合わず、よだれがずっと出ていたみたいだから、健康に良いのか悪いのか判斷に迷う。

僕の聲は、麻薬か何かなのだろうか……？

世の中はそんなじで混があったけど落ち著きつつあった。

そんなとき僕のところにも事件が発生していた。

「男からクレームがあったの？」

先ほど政府から電話があったと母さんから報告があったんだ。

僕のバーチャルタレント活に対して不満を持っているらしい。

「即刻、活を中止しろ。さもなければ、男の名譽を傷つけたとして訴える、と言っているらしいわ」

母さんから想像すらしなかった、衝撃的な言葉を聞いた。そのときの會話を詳しく聞いてみると「にこびを売るな」って、政府にクレームがきて巡り巡って最後は僕の所に屆いたみたい。

直接連絡できないのは男保護法があるからだ。

貴重な男同士が直接爭ってしまうような事態は避けるために、こういったときには政府が仲介役をするのがいっぱんてき。とはいえこういったケースは相當珍しく、數十年ぶりに使われた制度らしい。

ちなみに前回は、お互いの容姿を罵り合ったというとてもくだらない話で、政府を振り回していたようだった。

「相手は誰なの？」

「それは分からないわ。ただ、複數ではなく一人。ランクはユキちゃんの方が高いわ。"どうしましょうか？"って、こちらの意見を伺うような姿勢があるから、間違いないと思って良いわ」

男の個人報が分からないのは殘念だけど、たった一人の意見だと聞いてし安心した。そのほか大勢の男からクレームが來ていたら、さすがに自粛しないとマズイとじたからだ。

「ランクって久々に聞いたけど、こんなときに役立つんだね」

「こんなときだからこそ、ね。ランクが高い方が価値があり、優遇される。この社會の常識よ。とはいっても、貴重な男だから両者ともむげには出來ないの。男同士のトラブルの場合、普通の裁判は難しくて、極力表沙汰にしないように裏で処理するのよね。お互いの要求を伝えながら落とし所を探すじにしたいみたいだったわ」

「そっかぁ……最悪、諦めた方が良いのかな」

「ユキちゃん。こういったとき、弱気はよ。私たちは正しいことをしているのよ。をはりなさい」

そういう母さんの目は鋭く、息子の僕は一度も見たことがない表だ。これが、この世界で息子を育てる母親の覚悟みたいなのもなのかな。誰にも負けないと強い意志をじるのと同時にし怖かった。

この世界のは強いと思っていたけど、母親はもっと強いのだろう。

「う、うん」

僕は良くも悪くも違う世界の常識を持っているため、他の男に言われたら「もしかしたら本當にそうなのかも？」と思ってしまった。けど、母さんがハッキリと言ってくれたことで、消えかけていた自信が戻ってきたようにじる。

「それに、もしかしたらだけでいている可能があるの」

「……どういうこと？」

「どうも話を聞いていると、"男の名譽を傷つけている"ってことにがないのよね。最初は強制されているとか言っていたらしいけど、事実を伝えたら今度は、を売りにしていると言っているらしいわ。主張が二転三転しているのよ」

この話を聞いて前世のクレーマーについて思い出した。

自分に不快なものがあること自がけれられないのか、些細なことで他人を攻撃する人たちだ。例えば挨拶の聲が小さい、表が暗い、他の客を優先してたなどだ、他にも和菓子屋で「ケーキが売ってないってどういうこと！？」と騒いだり。

クレーマーが勝手に作り上げた常識で生きているから、世間の常識、考えとあわないんだ。そのくせ世の中の流れを悪用することには慣れていて、時には難癖を通してしまうほどのパワーがあるから厄介だった。

この人たちは引くことを知らない、謝れない、他人を思いやられない。だから徹底的に戦うしかないのは明白で、母さんが言っていたいことはやっぱり正しい。

「を売りにって……ゲームで遊んだだけなのに？」

あきれてが言えないというのは本當なんだなって、こんな時に実したくなかった。けど、脳に「バッカじゃないの？」って言葉が繰り返されるばかりで、的確な反論が思い浮かばないほど、思考が鈍ってしまった。

優遇されている狀態になれている男が、もしかしたら真の敵なのかもしれない。相手が勝手にすり寄ってくるから努力は不要。法に守られ安全な場所から、を働きアリのように扱うことになれている彼らは、今の生活に満足しているからこそ、変化を恐れる。

力が弱く、數がない。男は生的な弱者であり、保護されるのはわかるけど、傲慢になるのは違う。異を労る心を忘れてはいけないのに……。

「ユキちゃんが疑問に思うのも仕方がないわ。私や政府も同じようなことをじてるの」

「拠がコロコロ変わって、現実を見ていない……確かに的にいてそうだね」

「そうなのよ。そんな相手に負けたくないわよね？」

もちろんだ。僕はこのがもっと楽しく暮らせる世界にしたいと思っている。男がないからと言って苦しい思いをしている人を救いたいんだ。んな人に襲われはしたけど、だからこそ気づくことが出來た。抑圧され続ける辛さに。

どうしようもなく、悪意だらけのがいることは否定でしないけど、多くのは本能に振り回されているだけなんだから、助けてあげたいと思うのは僕にとっては自然な流れだった。

社會の激しい競爭にさらされて、異を求める心は止まらない。それなのに世の中には男がなく、出會いはない。辛すぎでしょ、普通に考えて。

それなのに、よく分からない論で僕の活を邪魔してくる人がいる。

許せるわけないじゃないか。負けるわけにはいかない。

男の敵は男、というのであれば徹底的に戦おう、抗おう。僕はがしでも心穏やかに暮らせる世界を目指したいんだ。

「僕はこの活を続ける理由があって、訳の分からない主張のためにやめるつもりはないよ」

もう、さっきまでの弱気な僕はいない。敵だって、はっきり認識したからだ。

世間の常識からすると変わったことをしているかもしれないけど、でも、誰かをおとしめるようなことをしているわけではないんだ。を張って、正しいことは正しいと、はっきり言っていく決意をした。

「分かっているわよ。男の名譽を傷つけるつもりはない。活は続ける。そう伝えておくわ」

「母さん、ありがとう」

「する息子のためよ。當然のことじゃない」

母さんに抱きしめられて頭をなでられる。

親離れできるか心配になったけど、今はその心地よい気持ちにを任せたかった。