《ぼっちの俺、居候の彼》act.12/お邪魔します
5時間目、6時間目と時間が過ぎ、席を立つ。
教室を離れて昇降口に向かうも、俺の後ろから2つ足音が続いた。
誰のものかは大予想がつく、俺はヘッドホンを付けて気を逸らそうと努める。
しかし、自は悪い方へと向かって行った。
「兄さん――?」
「あっ、揚羽……」
昇降口でバッタリ妹に會う。
靴を履き替える途中だった彼はピンクのおしゃれな服に著替えていて、締りのある細な付きが浮き出ていた。
彼の視線は、俺からその後ろに移る。
おそらく、見ているのは津月の事だろう。
俺と津月、そして揚羽は昔から3人でよく遊んでいた。
當然ながら揚羽と津月は面識があるし、昨日転校してきたっぽいから揚羽と話をしていただろう。
なのに、なんか気まずい。
昔の3人が揃ってるのに、どうしてこんなに気まずいのか。
何も言わないのはまずい、俺がヘッドホンを外した、その時だった。
「揚羽ちゃぁぁああんっ!!」
津月バカが揚羽に突撃した。
「つ、ツッキーッ!?」
本當に突撃でその理量を揚羽はなんとかけ止める。
長は揚羽の方が高くて、何故か津月は妹ので泣いていた。
「うぉぉおおおおお揚羽ちゃぁぁああんっ!! とっしぃーが私以外のに手ぇ出してるんだよぉおおおおおっ!!!」
「えっ、そんな……。噓でしょ兄さん……」
「うん、噓だから。津月、どうやらボコボコにされたいらしいな」
「私のとっしぃーがぁーっ! 音楽以外はからっきしでインドア暗のとっしぃーがぁぁあああっ!!!」
「頭姫、アイツほっといて帰ろーぜ」
「うん」
俺と頭姫は2年の下駄箱へと向かうのだった。
と、そこに2人が突撃してくる。
「ちょっと兄さん! その人誰!?」
「私を置いてこうとするなぁああっ!!」
「うるせーよお前ら。このポンコツはただの居候、津月は家まで來たいならくれば?」
「行くっ!」
萬歳して答える期の友に、俺は言葉1つ返さず昇降口を出て行く。
青い空と強い日差しが出迎えると、後ろから俺の左右に津月と頭姫が立って歩いた。
「…………」
妹は追ってこなかった。
ふと後ろを見れば、殺意を込めた視線で俺を睨んでいる。
居候の……その存在は、矢張り妹にとって、俺を恨む素材になるらしかった。
そんな妹をほっぽって家路を歩く。
今日は荷に被害もなく、背中が重たかった。
なのにスーパーで買いをして、居候にも荷を持たせながら帰宅する。
2kのマンション、防音あっての家賃6萬。
まぁ、スピーカーは曲を最後に試しで鳴らしたりするぐらいしか使わないが。
ヘッドホンで聴くのと作った音が違ったりすると調整するんだ。
玄関を上がり、リビングに抜けて荷を下ろす。
後ろから続いた子2人のうち、1人は顔を輝かせ、もう1人はガックリため息を吐いている。
「ここがとっしぃーの家!? 何にもないけど、とっしぃーの匂いがする〜っ!!」
「メガネ取れメガネ。つまんねー変裝はいいから」
「へっへっへぇー、とっしぃーに取ってもらう〜♪」
「割るぞ、そのメガネ」
津月は無駄にデカい縁のメガネをかけていた。
一応変裝のつもりらしいが、學生服で友人連れて歩いてる中を、わざわざ聲掛けてくる輩も居ないし、あまり役に立たんだろう。
彼の隣では、ドサリと買い袋を下ろす頭姫が、疲れたと言わんばかりに天を仰いでいる。
「疲れたぁ〜……」
「言わんでも顔見りゃわかる。頭姫、買ったもん整理しといて。津月は勝手にしろ、俺はPCの所にいるから」
それだけ言うと、俺はリュックを手に自室へとっていった。
カーテンを閉め、電気を付け、PCを起する。
機の上にキーボードやハードシンセを置いて、ひとまず俺はメールを見た。
「ん、依頼來てる」
「え? どんなの?」
「…………」
すぐ後ろから聞こえた聲に、反応することはなかった。
メールを拝見すると、1度曲作りをさせてもらったことがある、個人で活するエロゲー製作者さんだった。
容はBGM作で、ピンクな曲とか、日常で使えるようなBGMを作ってしいとのこと。
「えーっ、1曲1萬7500円って安くない? とっしぃー、こんな依頼けてるの?」
「うっせぇよ。こんなBGMなら草案ちょっと考えれば1曲7時間ぐらいで作れるわ。しかも8曲で1ヶ月猶予くれてるし、けるっつーの」
「安いえっちな同人ゲームって、1000円ぐらいだから1000DLぐらい軽くいくのにね。そのうち音楽で14萬円しか貰えないなんて、とっしぃー可哀想」
「アイドルが言っていい言葉じゃねーな」
それに、この依頼主とちょっと話したことがあって、この手のゲームは絵と宣伝のイラスト次第で全く売れないらしいから、絵に力をれるとか。
でも前作は2000DLいったとかで300萬の儲けになったと聞いた。
一気に300萬といえば大金だが、ストーリーとかイラストとか、制作期間は意外に長いからな、ゲーム作るのって大変そうだ。
「で、なんなんだよお前。俺は仕事出來たんだからあっちいってろよ」
「うわーっ!5年ぶりに再會したの子にそんなこと言うの!? だからとっしぃーぼっちなんだよ!」
「お前が勝手にうちまで付いてきたんだろ。お前に構うって言ったって、昔みたいに駄菓子屋行ったりする歳じゃねーからな」
「……お話しできるだけでいいんだよ? 私に構ってよ……」
「…………」
力のない聲で懇願し、後ろから抱きしめてくる。
あぁ、思えば昔から、津月とはこんなじだった。
俺が突き放し、それでも津月は付いてくる。
それでなんだかんだ言って遊んで、音楽が趣味だからと俺が曲を作って聴いてもらい、津月が歌や踴りを俺に披した。
そんな関係が、高校生になっても続くとはな。
「……わーったよ。話相手になるから、リビング行こうぜ」
「えーっ、あの子居るじゃん。2人っきりがいいよーっ」
「俺もお前もガキじゃねーんだから、ほら、どけ」
「むーっ。しょうがないなぁ」
パッと津月が俺の後ろから離れ、俺は立ち上がる。
い頃を思い出したからだろうか、ふと津月の顔を見てしまう。
昔も今も、ツーサイドアップは変わらない。
顔付きもいままで、つきも縦一直線。
でも、背がびた。
俺より頭1つ分くらい小さいが、久し振りに雑誌や新聞以外で見る、本の彼。
「……おやおや? とっしぃーが私に見惚れてる」
「……人間、年取るよな、って思っただけだ。年取っても、長してない所は長してないけどな、そことか、そことか」
頭やを指差すと、華麗な正拳突きが俺の鳩尾にクリーンヒットする。
……やっぱり、昔と変わってねぇ。
「……痛え」
「とっしぃーが悪い。私、ひんにゅーじゃないもん。普通だもん」
「輝かしいほどの絶壁じゃねーか」
「……な、なに? とっしぃーはおっきい方が好きなの!?」
「自あんま興味ない」
「じゃあパンチラッ!? パンチラがいいのねっ! 私のでよければ、遠慮なく見ていいのよ!」
「じゃあ遠慮なく」
ペラリと思いっきりスカートを捲めくる。
直後なにやら悲鳴が聞こえたが、気のせいだろう。
白くて細い足を目で追っていくと、純白でフリフリの付いたパンツが目にった。
しかしそれも束の間、俺のスカートを持つ手が叩かれる。
「アホなのっ!? 本當に見る奴が居る!?」
「だって、子高生のスカート捲る機會なんて滅多にねーしな。今のうちにと思って」
「思って、じゃないよ! 生ける伝説、ツッキーのパンツを見ようなんて不屆きもいい所だよ!!」
「世の中なんて知るかよ。つーかお前のだから捲るんだし、他の子にはやんねーよ」
「……えっ?」
荒げていた息は急に整い、キョトンとして俺の目を見てくる。
の起伏が激しい奴だな、なんだよ……?
「……そ、それって……私の事、とっしぃーは……あの……」
頬を赤らめ、人差し指と人差し指をの前で合わせ、くねくねしながら上目遣いで見てくる。
元気なコイツもウゼェけど、あざとくてもウゼェな……。
「俺、お前のことだと思ってねーから。パンツ見たって気にしないし、な?」
「なっ……ツッ、いや、でも……それなら、私のっても、なんとも思わないよね?」
「お前の、男と変わんねーしな」
ローキックが飛んできた。
なんか最近、周りの子が本気で俺を立てなくさせようと畫策してる気がしてならない。
うだうだしてても時間の無駄なので、さっさとリビングに向かうのだった。
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