新學期が始まってし経った某日の休み時間。

「衝撃の事実！」

遙はるかが突然騒ぎ出した。

「なんだ？」

「めっちゃ暇」

「なんのことだ」

俺がそう聞くと、遙はるかはおもむろに時間割を取り出して見せてきた。

學院のカリキュラムは、一般的な科目に加えて魔の授業がっている。分量としては三分の一くらいが魔に関する座學や実習だ。

しかし、遙はるかの場合、中等部在籍の間に高等部までの単位を取ってしまっている。ほかの科目と違って、理論も実習も、試験に合格さえすればいいからだ。自車の免許に近いかもしれない。

「半端に飛び級制度があるのも考えものね」

「いや、お前普通の科目の方がヤバいじゃねーか」

多理數系の方がマシらしいが、遙はるかの全的な績は決して良くないと聞く。

「せやな。そもそも飛び級はムリデスワ」

「それこそ空き時間はそっちの自習に當てた方がいいだろ」

白しら加波かば（歴史擔當教員）が泣くぞ。

「無理じゃぁ～孤獨な戦いで死んでしまぅ～」

遙はるかがわざとらしく嘆いて機に顔を伏せる。

しかし、すぐさまガバリと起き上がって聲高に言う。

「そうだ。部活を作ろう」

「そのこころは」

「仲間がしい！」

「お前友達すっくないもんな……」

「ジャカシイ！　あと翼つばさ君が思ってるほどなくはないぞ！」

「しかしなんだ。何部だ？　どっかで聞いたことあるような、活容が名前からだと分からないようなヤツを言い出したらはったおすぞ」

俺の言葉に、遙はるかは得意気に鼻を鳴らして応える。

「魔研究部でっす！」

「技研じゃダメなのか？」

技研、正式名稱「魔技研究部」。魔を宿すことができる魔マジックアイテムの研究や開発を行っている部。遙はるかもその部室にはよくり浸っている。

俺の疑問に遙はるかが応える。

「あくまで、道を作る方じゃなくて、魔そのものを対象にする予定」

「授業でやるのに部を作って人が集まるのか？」

「英會話部、自然科學部、數學研究會があって魔研究部が存在しえない理由にはならないと思うのね」

「ふむ……」

そんな會話をしているうちにチャイムが鳴り、一先ず話はそこで中斷となった。

その日の放課後。遙はるかが聲をかけてきた。

「魔研部作れそうだよー」

「はっや調べるの」

「ふふん。殆ど生徒手帳に書いてあったネ」

遙はるかはポケットから生徒手帳を取り出して俺に見せながら話す。

「しかして最初の一年は非公式団扱いみたいだけど」

「じゃあ部室とかはないってことか？」

「文蕓部が昔使ってた方の部室が空いてるんだってー。そこ使っていいって言われたよ」

「顧問は」

「青あお谷木やぎさん～」

「可哀想に……」

またもや遙はるかの暴走に巻き込まれる教員、青あお谷木やぎさんじゅっさい。

「あとはー、部員が五人いて、來年度の生徒総會……？、で、信認されれば晴れて公認団としてちゃんとした部活になりマース」

「一応新學期始まってまだ経ってないから、集められるとは思うが」

「んー。とりあえず、ピカルンと副會長フクチョー、空也ソラにはってもらえるように手配済みだよ」

「せっこ」

「というわけで、翼つばさ君がってくれれば定員クリアだよ」

「暗にれと言っている」

「フフフ。別に言ってませんヨ」

ニヤニヤ笑う遙はるかに見つめられながら、しばらく考えるふりをする。

「りますけどね」

「ありがとー」

そのまま、二人で部室棟に出向いて部室を確認しに行った。

「開帳～！　ってゴホゴホ」

遙はるかが勢い良くドアを開けると、溜まっていた埃が一斉に舞う。

「まずは掃除からだな」

すぐさま窓を開けて換気をし、掃除用を持ってきて埃取りを行う。

數十分も払い続ければ、だいたい綺麗になった。

箒を持ったまま遙はるかがぶ。

「テッテレー！　遙はるかはの巣を手にれた！」

「校で公然とイチャつこうとするんじゃない」

「どの口が言いますかねー」

遙はるかのツッコミに、スッと顔を背ける俺。

遙はるかはニヤニヤしつつも、割と真面目な雰囲気で言った。

「安心して。ちゃんと『らしい』活はするし、部員も募集するよ」

機を移させながら、遙はるかが呟いた。

「仲間がしいから始めるんだもの」