《ACT(アクト)~俺の婚約者はSな毒舌キャラを演じてる…~》世の中の男子が全員”ヒーロー”になれるわけじゃないってことを、俺は知っている…
「奏太君!大丈夫!?」
なごみは捕まっている俺の姿を確認するやいなや、一目散に俺の方に駆け寄ってきた。
「心配ねぇよ」
「よかった…。本當に心配したんだから…」
俺に抱き著く彼の目には涙がにじんでいた。
「っていうか、お前こそ大丈夫だったのか?ほら、あの二人に無理やり連れてこられたんじゃ…」
「うん。私は大丈夫。あの人達にはここの場所を聞いただけだから」
「そうか」
とりあえず無事を確認できたのはよかったが…問題はここからだ。と、その時。
「はい、終了~」
「ちょっ!」
新町の號令で男はなごみを強引に引きはがし、
「奈々と理恵はケンイチの代わりにその押さえといて」
「了解~」
「わかった!」
それを取り巻き二人へ引き渡した。
「申し訳ないけどの再開はここまでよ。あとは私達の用件が終わった後でゆっくりやりな!――ま、終わった後もアンタ達が仲良く話せるかどうかは分かんないけど」
新町につられ取り巻き二人も俺たちに嘲笑。勿論なごみがこの仕打ちに黙っているはずもなく、首謀者である新町をキッと睨み付け反撃に出ようとするのだが…
「早く奏太君を離しなさい!いい加減にしないと――」
「ちょっと、波志江さん?アンタそんな偉そうな態度取ってていいわけ?」
それは余裕の笑みを浮かべる新町によって遮られた。
「今の自分の狀況分かんないの?アンタ達をどうするかなんて私達の気分次第。アンタ自も、そこで縛られてき取れないアンタの彼氏もね」
クスクス
再び向けられる三人による嘲るような笑い聲。
「くっ…!」
なごみも冷靜になって立場を理解したようで、何も言い返すことができず悔しそうに奧歯を噛む。
こういう時こそ俺がかないと…まずはこっちの非を認めてうまく渉を――
「新町、なごみもこの前のことはやり過ぎだと思ってる。だからここがぁっ!」
「奏太君!!」
突然腹に食らったトゥキックによって俺は強制的に黙らされた。
「痛いのが嫌なら黙ってた方がいいぜ?なんせ俺は、お前が喋ったら暴力で黙らせろって指示されてるからな」
「そ、そういうのは、先に言えよ…」
「あ~ごめんごめん。言うの忘れてたわ。――藤岡、今回アンタには発言権無いから。一言でも喋ったら…もうわかるわよね?」
痛みに苦しみ俺を見て、楽しげな新町。
そんな相手を前にして聲を荒げるなごみ。
「新町さん!あなた――」
が、しかし…
「ごはっ!」
今度は顔面を蹴り飛ばされ、俺は無様に地面に転がった。
「奏太君!?――ちょっと!離しなさいよ!!」
「あ、ちなみにあなたが私に逆らった場合も同じペナルティだから」
「!!」
無言で睨み付けるなごみの姿を見て、俺という人質がしっかり機能したことを実し、ほくそ笑む新町エリカ。
予想通りとはいえ、何もできないのはもどかし過ぎる。
「ちょっと、何睨んでるの?藤岡を返してほしいんじゃないの?」
「…はい、すみません」
「はぁ?返してほしかったら頼み方ってもんがあるんじゃない?」
さらにこれでもかというほど楽しげに煽りまくる新町。
「…お、お願いします…奏太君を解放して、ください」
そして、悔しそうに頭を下げるなごみの姿に満足したのか、
「わかったわ。それじゃあ波志江なごみ。アンタに選択肢をあげる」
新町はついに本題と思われる容を切り出した。
「いい?選択肢は二つよ。アンタ自を解放するか、藤岡を解放するか。――勿論殘った方にはとびっきりのペナルティが待ってるから楽しみにして頂戴」
「…ペナルティの容は?」
「うーん、そうねぇ…。藤岡が殘った場合は半殺しになるまでリンチでいいとして…波志江さんが殘った場合はどうしようかしら…みんなどう思う?」
わざとらしく顎に手をやったり、嫌味たっぷりの口調で取り巻きに意見を求めたり…イチイチ仕草がこちらの気持ちをさらに逆なでやがる。
「え?普通にリンチでいいんじゃない?」
「え~それじゃあつまんないじゃん!寫真をネットに流出とかどうかな?」
新町同様楽しげに意見を出す取り巻き二人組。
「そうね…。じゃあ二人の間をとって、集団レイプとかどう?ほら、ケンイチの友達とか集めてさ!」
「!!」
新町の口から飛び出したとんでもないペナルティの容にに目を見開くなごみ。
「おお!いいんじゃない!!」
「いいねいいね!それ面白そう!!」
最終的ななごみへのペナルティは“集団レイプ”に決まったらしい。
「じゃあケンイチ!そういうことだから、よろしくね!」
「任せとけ。っていうか、もう選択肢とか無しでの方居殘りってことでいいんじゃね?」
「ははっ!だめよ~?だって強制じゃなくて自分で選んだ方が面白いじゃん!」
「確かにー」
「さっすがエリカちゃん!頭良い!!」
「よっしゃ。今のうちに何人か聲かけとこっかな~」
倉庫はなごみへのレイプ話で大盛り上がり。
そんな中、ふとなごみの方へと視線を向けると…先程まで怒りで染まっていた彼の顔は必死に隠そうとしているものの不安と恐怖のを隠すことはできず、そのは小刻みに震えていた。
――このゲス共が!!
必死に冷靜さを保っていたはずなのに、気付けば自分でも痛いほど拳を握る手に力がっていて、
「おいおい、兄ちゃん。何反抗的な目してんだよ。そんなに毆られてぇのか?あ?」
ケンイチに倉をつかまれるまで自分が相手を睨み付けていることに気付かなかった。
「……」
「チッ、なんだよ!何も言い返さねぇのかよ、面白くねぇ」
でも、今はコイツ等の挑発に乗っている場合じゃない。
今は俺にできることをやらないと…!!――俺は睨み付けないよう下を向き、言葉を発しないよう強くを噛みしめることで煮えたぎりそうな怒りをなんとか抑えつけ、自分のやるべきこと…ここから二人で出する策を見つけるため、頭を捻った。
今は土曜日の午後。この育倉庫も普段の休日ならどこかの部活連中が使いに來るはずで助けも期待できるんだが…生憎今日は創立記念日だかで部活も全部休み。外からの助けは期待できそうにない。
しかも、相手はいかにも喧嘩の強そうな男が一人と3人。その上俺は両手を縛られていてき取れず。なごみに戦闘力なんてあるはずもなく、自力で敵を屈服させて出するのも困難極まりない。
あとは何とか俺が隙を作ってなごみだけでも逃がせるかだが…ダメだ。このケンイチとかいう奴、常に俺の方を警戒してやがる。
「あ、ちなみに言っとくけど、この前みたいに停學とか退學チラつかせたって意味ないから」
「そうそう。私達もう覚悟決めてるし」
「ケンちゃんに至ってはもう退學になってるしね~」
「おい、誰がケンちゃんだ」
「あ、あとケンイチって今は普通だけど、スイッチっちゃうと止まらなくなっちゃうから。そうなったら私達も止められないわ――一応藤岡が殘った場合は半殺しってことになってるけど、本當に半殺しで済むかしらね」
「ぐっ…」
「ちょっとコイツ泣いてない?」
「うわ~ホントだ!泣いてる~!!」
俺が出方法を考えている間も新町達の一方的な脅迫じみた煽りは止まらず、なごみの目には涙が滲んでいた。
クソ…何か方法は無いのかよ…!!何か、何かないか…!?――何か使えそうなものは無いかと必死に周りを見渡す。
が、しかし…そんな都合よく何かが見つかるわけもなく。
「ちょっと、いつまで黙り込んでんのよ!さっさとどっちにするか選びなさいよ!!」
「そうよ!さっさとしてくれない?」
「もう私が決めていい~?」
その間三人から一斉に回答を急かされるなごみからは、既に昨日まで學校で見せていた強気の姿勢は消え去っていた。
「私達もそんなに暇じゃないの。さっさと選んでくんない?ほら!藤岡!?自分!?どっち選ぶのよ!!」」
「わ、私は……」
ガシャ
新町に壁際まで追い詰められたなごみは小さな聲で俯き。そして、一滴。彼の頬をつたうが見えた。
――もう限界だ。
「なごみ!俺を殘してお前は逃げろ!!ごはっ!」
胃が逆流してくる。
「そ、奏太君!?しゃべっちゃダメ!!」
「い、いいから…早く逃げ…ぶぁっ!」
口の中に鉄の味が広がってくる。
「そんなことできるわけないじゃない!これは私の責任なんだし…ここは私が――」
「うるせぇ!がはっ――し、心配すんな…お、俺には策が、ある…から――ぐふぉ」
勿論策があるなんて大噓。いろいろ考えた結果二人での出は不可能。俺の目標は既に“なごみをここから無事で出させる”ことに変わっていた。
俺だって痛いのは嫌だし、半殺しなんて真っ平だ。でもまぁ、しゃあないだろ。だって、好きなの子を犠牲にするわけにもいかんし…。
「てめぇ!舐めてんじゃねぇぞ、コラ!!」
「がっ…ガハッ…ヴォァ…」
「奏太君!!奏太君!!もうやめて!!」
最早意識を保つのすら限界だ…。ははっ、っていうか俺もう既に半殺しの狀態じゃね?
「もうやめて…私、こんなのんでない…せっかく奏太君に心配かけないように格も変えたのに…せっかく奏太君のお嫁さんにふさわしいの子になろうって頑張ったのに…」
視界には泣き崩れるなごみの姿が。いいから俺なんて殘して早く逃げろよ…。俺だってお前のそんな姿見るために張ってんじゃねぇんだから…。
「お願い…!もうやめて…!奏太君は関係ないの…!――私が殘るから!レイプでもなんでもすればいいから!――だから、奏太君に酷いことしないで!!」
なごみの悲痛なびが倉庫中…いや、おそらく外にまで丸聞こえな聲で響き渡る。
「なご…み…がはっ!」
しかし、けないことに俺にその悲痛なびに答えるだけの力は殘っていなかった。
視界がかすむ…どんどん意識が遠くなっていく。
「はっ!もう遅ぇよ!こいつボコボコにした後、お前も犯してやんよ!!」
「ははっ!いいね、それ~!!」
「ざまぁみろ!お前が調子に乗ってるから悪いんだよ!クソ!!」
おい…テメェら、さっき言ってたことと違うじゃねぇかよ…!!約束くらい守れねぇのかクズが…!!――ダメだ、もう喋れねぇ…。
クソっ…すまん、なごみ…。俺じゃあお前を守ることできなかったわ…。
「殘念だったわね!だからさっさと選べって言ったじゃない!バ~カ!!」
クソッ…もし俺が漫畫とかアニメの主人公だったら上手く助けてやれたのに…!!
意識を失う寸前、自分の無力さを嘆いていたその時…
ガンガンガン
「「「!?!?」
外から扉を叩く音と、
『おい!誰かいるのか!?さっき悲鳴みたいなのが聞こえてきたけど…大丈夫なのか!?』
一人の男の聲が聞こえてきた。
「た、助けうううっ!」
「おい!今日は誰も來ないんじゃなかったのか!?」
ぼうとしたなごみの口を咄嗟に塞いだケンイチだが、その表には焦りのがはっきり出ている。
「し、知らないわよ!何でこんなところに人がいるのよ!!」
「で、でも大丈夫よ!側から鍵かけたし…」
「そ、そうだよ!外の人が鍵取りに行ってる間に逃げれば――」
そして、焦りまくっているのは他の共も同じで…。敵さんがゴタゴタしているうちに…
「ちょっと待ってて!!」
カチャカチャ…カチ――ガラガラガラ
「おい、大丈夫か!?――って、なごみちゃん!?…と奏太!?」
「「「!!!!」」」
「お、太田君…?」
そして、勢いよく扉を開け放ち、かなり見覚えのある救世主はやってきた。
「さ、さすが…ハーレム系主人公…主人公の名前は…伊達じゃねぇな…」
もう大丈夫だ…。この男の顔を見た瞬間、不思議と確信できた。
だって、俺みたいなモブキャラのなんちゃってモテ男なんかじゃなく、真のモテ主人公様が來たんだから…。
「け、ケンイチ!早くそいつもやっちゃってよ!!」
「お、おう!わかってるっつーの!!」
相手は喧嘩慣れした不良と他3人。
対するこちらの戦力は、運神経は良いものの喧嘩しているところなんて見たことすらない男・大田平ただ一人。
まだ完全に助かったと決まったわけじゃなく、むしろまだピンチの狀況だというのに…俺は平の登場に安心して気が緩んだせいか、事の結末を見屆けることなく完全に気を失ってしまった。
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