《ACT(アクト)~俺の婚約者はSな毒舌キャラを演じてる…~》結果は……

「ごめ”んね”……。私のせいで……」

「別にお前のせいじゃねぇよ。ただ……」

いつもワイワイ騒ぎながら、なんだかんだで楽しく弁當を食べている屋上になごみと二人きり。しかし、今日ばかりは楽しいどころか二人の間にポジティブな雰囲気は微塵もなく、お通夜のような空気が立ち込めていた。

それもそのはず。なぜなら……

「別れるしか、ないな……」

俺達は今まさに別れ話をしようとしているのだから。

原因は勿論中間テスト。死ぬ気でテスト勉強に取り組んだものの肝心の結果が伴わず。

俺が全科目70點以上という過去最高點を記録した一方で、なごみの方はというと……現代文38點、古典33點、英語リーディング31點、英語ライティング34點、日本史40點、生30點…化學27點、數學Ⅱ26點、數學B25點――多くの科目でなごみ史上過去最高點、殘りの科目もここ2~3年では最高點を叩きだしたらしいのだが……殘念ながら、赤點は合計で3科目。大健闘も一歩及ばず。條件未達のため破局という結末となってしまった。

「あとちょっと……あとちょっとだったのに……」

なごみは一杯頑張った。2週間、全くサボることなく、不満をらすこともほとんどなかった。さらに、俺の教え方が悪かったせいで“テスト対策プリント”の出來が良くなかった時も、その後必死に頑張って遅れを取り戻し、最後はフラフラになりながらも何とか全科目のテスト範囲をやりきった。

しかし……現実というのは思った以上に殘酷だった。俺は、今回程“努力は必ず報われる”という言葉を憎らしく思ったことはない。

「私、別れたく……ないよぉ……」

気が付くと、彼の目には涙が溜まっていて……。ポツリ、ポツリと溢れた涙が頬を伝って地面に落ち、コンクリートの中へと染み込んでいく。

別れたくない――それは俺も同じだ。『もしかしたら、別れたフリしてコッソリ付き合ってればバレないんじゃないか?』――そんな思いが何度も何度も頭を過る。

多分普段の俺なら、間違いなくどんな卑怯なことをしてでも約束なんて反故にしていただろう。

でも、最早“お義母さん”と言っても過言ではない関係になったなごみの母ちゃん……。そんな人を相手にしている今回、できればそういうことはしたくはないし、まだする必要もない。――だって、まだ俺達は完全にチャンスを逃したわけじゃないのだから……。

「泣くなよ。これで本當に終わりって決まったわけじゃないだろ?」

「……へ?」

予想外の言葉に顔を上げ、泣き顔のままこちらを見上げるなごみに俺はニヤリと笑って返してやった。

「次の期末テストだ」

「次の……テスト……?」

「ああ。もし、そこでお前が自分の力で全科目赤點回避できたなら、俺はもう一度お前の母ちゃんに渉しに行くつもりだ」

條件をクリアできなかった場合は別れろとは言われていたが、二度と付き合うなとか、將來的な結婚も絶対に認めないとか、チャンスは一度きりなんてことは言われてない。

それに、ちゃんと結果を出した後で許可を貰いに行くんだ。――ルール上全く問題はないはずだ。そう……俺達の敗北はまだ確定したわけじゃないんだ!

「要するに、次のテストで條件をクリアできれば、もう一回付き合い直せるかもしれないってことだ」

それに……確証はないが、多分それでおばさんも許してくれると思う。だって、そもそもあの人は、別に俺達の際や結婚に本気で反対してるわけじゃないし、むしろ俺達の際には賛という立場なんだから。

普段から簡単に他人の裏をかいたり掌で転がすような人だ。うっかり俺程度にを突かれるような欠陥ルールを放置しておくとは考え難いし、むしろ俺達が失敗した時のための保険として敢えて救済措置として殘していって考える方が自然だろう。

「まぁ、次のテストでちゃんと結果を出して真剣に頼めば悪いようにはしないだろ」

「でも……」

「心配すんな。もしダメだって言われても、俺が何とかしてやる。それこそ、どんな手を使っても、だ」

「奏太君……」

あくまでも最終手段ではあるが……萬が一なごみ母に反対されれば、その時は駆け落ちでも何でもしてやる! ――心の中でそれくらいの覚悟をしながら、俺は不安げな顔をするなごみの頭にポンと手を置いた。

「悪いが俺はこんなことでお前を諦めたりなんてしねぇよ。知ってるか? 俺って割と諦め悪い方なんだぜ?」

「ふふっ。知ってるよ、それくらい。――だって、私の未來の旦那さんだもん」

そう言って子供っぽく得意気に笑うなごみの目には、もう涙はなかった。

「なごみ、別れよう……」

「……うん」

こうして、俺達は一旦婚約者兼人兼馴染という関係にピリオドを打ち、馴染以上人・婚約者未満という新たな関係で再びスタートを切った。

……が、しかし、この1時間後。この俺達の決斷が実はただの茶番だったと知らされることになるとは、夢にも思わなかった……。

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