《ACT(アクト)~俺の婚約者はSな毒舌キャラを演じてる…~》男にとって巨は夢と希であるとともに、災いの元でもある……

「あ~、マジでツイテない……」

憎き中間テストも無事終了し、6月も10日程が経過した今日この頃。梅雨りはもうし先だというのに外は土砂降り。

そんな中登校してきたばかりと思われる生徒から『最悪~!』とか『マジでついてねぇ……』とか『朝からテンション下がるわぁ……』という聲が聞こえてくるが、そんなことを言う彼らに言ってやりたい! ――今この瞬間に限れば、お前らなんかより俺の方がよっぽど“最悪”だ、と。

「ようやく雨を乗り越えて登校したと思ったら、次は落しかよ……。しかも、よりにもよって生徒手帳……」

家を出る時に持っていたのは確認済み。恐らく登校中にどこかで落としたのだろう。

生徒手帳という學生が持ち得る最も便利な分証明証を紛失し、朝からガックリと項垂れていると、

「よお、奏太。どうした、朝からため息なんてついて?」

「ああ、平か……。それがよぉ――って、お前がどうしたんだよ!?」

聞き慣れた友人の聲に振り返ると、そこにはいつもとはちょっぴり違う、頬に見事な手形をつけたイケメンが立っていた。

「あぁ、これか……? いや、実は――」

恐らくここに辿り著くまでにも同じ質問をいろんな奴からされたのだろう。平はしうんざりしたじで経緯を喋りはじめた。

「実は今日の朝、下駄箱で穂と一緒になってしばらく喋ってたんだが――」

ちなみに、穂というのはコイツのハーレムの一人。客観的に見ても可い部類にり、陸上部のエースという運系ハイスペックの持ち主で、人あたりの良い格もあってか男共に人気のある上位カーストの住人として有名だ。

穂の奴、今日から夏服にしてきたから褒めたんだが、『私、が無いから冬の制服よりスタイルが分かりやすい夏服って苦手なんだよね……』って気にして元気なかったから、『んなことないって! っていうかの大きさなんてどうでもいいじゃん』って勵ましてやったんだよ」

「おお」

うむ。誰にでも瞬時に真剣な顔でこういうフォローがれられるところがコイツがハーレム王たる所以なのだろうな。とりあえず俺にはハーレム王の適正が無いことを再認識した。

「だが、問題が起きたのはその直後だった。次の瞬間、俺の目の前を橫切ったんだ――超巨子が……」

……うん、なんとなくもうオチが読めました。

「……それで、どうなったんだ?」

「思わず橫切った巨子を見ちまったせいで『さっきの大きさなんてどうでもいいとか言ってたくせに!』って言われて……次の瞬間にはこのザマだ……」

「……なんていうか、ご愁傷様としか言えんな」

案の定、予想した通りの結末だった。

恐らくほとんどの男にこれを避けるはないだろう。とても他人事とは思えない出來事を聞かされ、俺は同せずにはいられなかった。

そして直後……

「おはよ。奏太君」

「!!」

背後からその聞き慣れた聲が聞こえた瞬間、とてつもなく嫌な予が全を駆け抜けた。

恐る恐る振り返ってみると……

「おう、おは……よう……」

「よ! おはよ、なごみちゃん!」

「おはよう、大田君」

そこにいたのは昨日までとは違う、夏服姿の人兼婚約者だった。

分かってはいたが、一応チラリと元を確認してみると、そこにはロッククライミングすらできそうにない程の斷崖絶壁があるだけ。もし、ここで巨という名の兵が通りかかったりしたら……。

何なの? タイミング良過ぎじゃね!? もしかしてドッキリですか!?

「どうしたの? 朝からエロ本を母親に見つけられた時みたいな顔してるわよ?」

「とりあえず黙ろうか。お前の変な例えを聞いた子達が『うわぁ……』みたいな目で俺を見てるから。直ちに訂正を――」

「そんなことより私に何か言うことはないの?」

「えーっと、とりあえず今一番言いたいことは、『自分から振った話を強制終了させるのはやめてくれない?』ってことなんだが」

「そんなことより私に何か言うことはないの?」

「俺の話聞いてる? 俺は――」

「そんなことより、私に何か言うことないの?」

……ダメだ、全く會話にならない。これ、多分俺が期待通りの言葉を言うまで続くやつだ……。

まぁとはいえ、このいかにも『私を見なさい!』という風に腰に手を當て仁王立ちしているロリ型のがどんな言葉を待っているのか、俺は知っている。

が、同時に、何となくだが、その言葉を口にしてしまえば、目の前で痛々しい頬をしているイケメンの二の舞になる気がするのは気にし過ぎだろうか。

と、そこへ、

「奏太、奏太!」

頼れる我が親友が小聲で助け舟を出してくれた。

「俺に任せろ」

「い、いいのか?」

「おう! 今度晝飯奢れよな!」

そう言ってカッコよくウインクする平。さすがイケメン! 今ならハーレムメンバー達がコイツに惚れる理由が良く分かるぜ!! しかし……

「なごみちゃん、そういえばさっき先生が呼んでたから早く職員質に――」

「大田君、申し訳ないけど今はあなたの出る幕ではないわ。し黙っててくれる?」

「りょ、りょうかい~」

毒舌モードのなごみの前ではあまりに無力。カッコよく意気込んだ數秒後にはバッサリと一刀両斷され、フェードアウト。

「チッ、使えねぇ」

「手のひら返しが凄いな!」

仕方あるまい。期待が大きければ大きいほど、その反は激しくなるものなのだ。

「それで、奏太君。私に何か言うべきことはないの?」

とはいえ、唯一の救援隊を失った俺に、最早抗うは殘ってはいなかった。

「そ、そういえば、今日から夏服に変えたんだな……?」

「それで?」

「はい、大変よく似合っています」

「そ。ありがと」

俺から期待通りの言葉を引き出し、満足気な笑顔を見せる我が彼。仕方ない。こうなったらさっさと話題を変えるしかない!! しかし、

「そういえば今日の數學の課題ってさ――」

「それにしても今日は一段と暑いわね」

「え? お、おう、そうだな。それより――」

「実は私、夏服って苦手なのよね……。ほら、夏服って冬服よりもの線が良く見えちゃうのに、私あんまりスタイル良くないし……」

ギャー! 勘弁してくれぇ!! なんたるデジャブ!! 何で俺の悪い予はこんなに的中率高いんだよ!!

必死の抵抗むなしく、狀況は俺の想定した悪い方向へと一直線に進んでいく。

「……そ、そんなの気にする必要ねぇよ。っていうか、が大きい方がいいなんて発想俺にはないな!」

「本當?」

「お、おう! 當たり前だろ?」

さすがに、ここで何も言わないわけにもいかず、力ない笑顔を浮かべながらフォローする。

「そう。よかった!」

そして、それをけたなごみは安堵と嬉しさがり混じったような笑顔を浮かべ、

「あ、そういえば私、今日日直だったわ。――それじゃあ、奏太君、それから大田君、またあとでね!」

上機嫌に小走りでこの場を去って行った。そして、その背中が見えなくなると、

「おい、平!」

「うおっ! なんだよ、急に!?」

「さっきお前が見たっていう巨のことを教えろ! こうなりゃあ、夏の間その子とは絶対に出くわさないようにするしかない!!」

俺は先程助けようとしてくれた親友の肩を激しく揺さぶり、涙目で必死に訴える。

「あの、このクラスに“藤岡奏太”って子、いますか?」

「あ!」

突然教室のり口から聞き慣れない聲で聞き慣れた名前を呼ばれた気がするが、そんなもの今はどうでもいい。今は恐ろしき巨子問題が先決だ。

平! さっさと頼む! 多分狀況は一刻を爭うんだ!!」

「いや……もう遅いかもしれん……」

「はぁ!? お前何言って――」

「いや、だって、もうそこにいるし……」

「は!? いや、だから意味が――」

「君が藤岡奏太君?」

「すみません! 今取り込み中で――!!」

しかし、再び、今度はすぐ背後で自分の名前が呼ばれ、勢いよく振り返ると……そこには巨大な雙丘が……。

しっかりと向き直り、恐る恐る全を見てみると、顔は白で可いというよりは人系。手足はモデルのようにスラッと長く、長は俺よりし低いくらいで子にしては高いと言って差し支えはないだろう。

だが、そんなハイスペックな部分もあまり印象に殘らないくらい、その部は圧倒的な存在を放っていた。

「取り込み中のところごめん。私は三年生の駒形優 (こまがたゆう)。君が藤岡奏太君でいいのかな?」

「え? あ、はい」

っていうか、この人俺なんかに何の用なんだ? 俺はこんな巨な先輩知らんぞ?――などと思いつつ、視線は自然とその圧倒的な膨らみに。

ニュートンよ、引力はこんなところにも働くものなんですね。殘念ながら男たるもの、この引力には抵抗できません!

「私はこれを君に屆けに來ただけだから」

差し出されたものを見ると、なんとそれは今朝俺が失くしたと思っていた生徒手帳だった。

「え?――あ、俺の生徒手帳!! もしかして先輩が拾っていてくれたんですか!? すみません!ありがとうございます!!」

俺は歓喜のあまり勢いよく頭を下げた。

「よかった。きっと失くして困ってるんじゃないかと思って」

そんな俺に先輩は優しく笑いかけてくれた。

まさかこんなところで聖母様に出くわすことになるとは……。俺はこの巨な先輩の優しさと推定Fカップくらいはあるのではないかという圧倒的なボリュームせずにはいられなかった。

「ホントありがとうございます! あ、そうだ! 何かお禮を――」

「いいわ。お禮なんて。私はただ落ちているを拾っただけなんだし」

「そんな、でも!」

「いいの、本當に気にしなくて」

「うーん……じゃあ、今度何か困ったことがあったら相談してください! 助けになれることもあるかもなんで!」

「わかった。じゃあその時はお願いするね」

そう言って、駒形先輩は再び優しく微笑んだ。

「それじゃあ、私はそろそろ行くね」

「はい、ありがとうございました!」

ふと周りを見て見ると、教室を後にする先輩の後姿をクラスの男子全員がぼーっと目で追っていた。皆の衆、その気持ち分かるぞ~。

それにしてもこの短時間でこのクラスの男子全員を虜にするとは……巨聖母、恐るべし。――と、そんな呑気なことを考えていたのも束の間。

「奏太君、今のはどういうことかしら?」

「!!」

背後から冷え切ったその聲を聞いた瞬間、俺の全からの気が引いた。

「そ、そう! 実はさっきの先輩が俺の落とした生徒手帳を拾ってくれてて――」

「さっき言ったわよね?『が大きい方がいいっていう発想はない』って」

「い、言ったかな……?」

「そのくせあんな脂肪の塊をいやらしい目で凝視して……。何か弁明があるなら聞きたいものね」

「い、いやぁ、その……」

……なごみさん、目が怖いです。笑顔なのに目が全然笑ってないんですけど……。

「奏太君、私に何か言うべきこと、あるんじゃない?」

仕方あるまい。ここは男らしくしっかり謝って、ビンタをれよう。

「すみません! つい出來心で!!」

俺はクラス中が見守る中、潔くその場で土下座を披した。

「奏太君」

「はい!」

ビンタ……來るのか? 覚悟を決めて、顔を上げる俺。しかし、

「今日から一週間、私に絶対服従」

「……へ?」

俺に與えられた罰はビンタなんて生易しいものではなかった。

「罰として、今日から一週間、私の言ったことには何でも服従――いいわね?」

「いや、さすがにこれくらいのことで“何でも”っていうのは……」

「いいわよね!?」

「了解です!!」

勿論俺に拒否権はなく…。

「ドンマイ、奏太」

「クソ……なんて不公平な世の中なんだ……」

の引力に屈したツケは想像以上にデカかったようで……。これから一週間、俺の奴隷生活が始まることが決定した。

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