《ACT(アクト)~俺の婚約者はSな毒舌キャラを演じてる…~》よそはよそ、うちはうち……

「二人とも、この人が駒形優こまがたゆう……いや、駒田マサル先輩……見ての通りの男だ!!」

翌日の朝早く。俺と平はなごみと穂に集まってもらい、二人に駒田先輩 (本名)を紹介した。

「う、うそだよね……? 見ての通りって……これが、男の人……?」

「い、言われてみれば、子にしては骨格もしっかりしてるような……」

案の定二人は目を見開き、信じられないといった表で棒立ち狀態。

「し、信じられない……」

「私も……」

無理もなかろう。

サラサラとした髪、無駄一つないスベスベな、すらっと細く長い腳、そして元にスイカが二つ並んでいるかのような圧倒的なインパクトなどなど……どう考えてもにしか見えない裝男が目の前にいるのだ。逆に聞きたい! 裝しているこの人を、男だと認識できる人間がいるだろうか!? いや、いない!!

「いやぁ、なんかごめんね。俺のストレス解消が迷かけてたなんて」

言葉とは裏腹にほとんど悪びれることなく笑顔で謝る先輩。

実はこの人、以前からストレス解消のために時々裝をしていたらしいのだが、最近替えをきっかけに登下校でもやってみようと思い立ち……俺達と遭遇したのはその初日だったらしい。

ちなみに裝するときは見た目だけじゃなく聲や喋り方、格を変えるだけでなく、なんと裝の時専用で名前も変えているというから驚きだ。

そりゃあ聞き込みしても見つからないわけだ。っていうか、駒田先輩、アンタ初心者のくせにどんだけ裝にこだわり持ってんだよ……。

「一応生徒手帳とか、に付いてるか付いてないか、とか証拠も用意してもらってきたんだけど……どうする?」

「私は大丈夫。さっき先輩のったし……、あれで十分わかったから……」

「わ、私も……」

「あははっ! 俺のおっぱいはられることなんて想定してないしな。ればだれでも分かるよ!」

悲しい現実を突き付けられ、肩を落とす二人の貧と自慢気に笑う裝巨男。

「うぅ……、まさか男子にとしての魅力で負けるなんて……」

「偽以下の私のおっぱい……ははっ、ホルモンって一なんなんだろうね……」

ショックを隠せず、地面に両手をついて項垂れるぺったんこ達。

あまりにショックだったのか、なごみは口調が完全に素の狀態に戻っており、その変化に気が付いていない穂もまた、かなりの神的ダメージを負っているのは明白だった。

「しかも男相手に嫉妬までしてたなんて……」

「恥ずかし過ぎる……」

しかし、そんな彼達の様子も俺と平にとっては狙い通り。俺達は心ほくそ笑んでいた。

(よし、作戦は順調だ)

(あぁ。あとは落ち込んでいる二人に良いこと言って勵ますことで、俺達に対する怒りのを中和。そして、言いなり生活を終了させるぞ!)

俺達はアイコンタクトで會話し、頷きあう。

人間弱っている時程付ける隙は多くなる。恐らく男としては最低の方法なんだろうが、そんなことは関係ない!! 全ては俺達の平和な日常を取り戻すため!このチャンスを逃す手はない!!

名付けて“良いこと言って、雰囲気で怒りを忘れさせよう、大作戦!!”――作戦開始だ!!

俺達は再び頷きあうと、まず最初に平がき出した。

穂……俺が行っても説得力はないかもしれんが、子の魅力はの大きさなんかじゃない。裏表のない格とか、困った人見ると放っておけない優しいところとか……あと、人なところとか――俺はちゃんとわかってるよ、お前の魅力」

平君……」

まっすぐ見つめ合いつつ、し照れ臭そうに真剣な顔で、彼しがりそうな言葉を紡いでいく。

イケメンがこれをやって上手くいかないはずがない!これぞモテ男の真骨頂といったところか。

っていうか、平の野郎……、あんなキザなセリフを素の狀態でスラスラと言いやがって……!! この後俺が控えてんだぞ! めちゃくちゃハードル上がっちまったじゃねぇかよ!!

「ごめんな、穂。仲直り、しようぜ!」

「うん!」

そして最後にニカっとイケメンスマイル。

効果は抜群。穂の目には既に輝きが戻っており、平への怒りなど、もう微塵も殘ってはいないだろう。

そして、見事ミッションを功させた平は、

(次はお前の番だぜ!)

そうアイコンタクトを送ってきた。

よし! この流れ、俺も乗ってやるぜ!!

若干の張しながらも心の中で気合をれ直し、俺は一歩なごみの方へと近づいた。しかし……

「なぁ、なごみ――」

「奏太君。私、ちょっとショックけ過ぎてが渇いちゃったみたい」

タイミングの悪いことに、俺の言葉は丁度彼の言葉に遮られてしまった。

「え? あ、あぁ、確かに乾いたよな! じゃあどこか場所を移して――」

「私、もうここから一歩もけないの。――お願い、自販機で無糖の缶コーヒー買ってきてくれない?」

……あ、あっれぇ? なんか雲行きが怪しいような……

「……え? いやいや、何言ってんだよ。無糖のコーヒーって育館の前まで行かないと売ってない――」

「無糖の缶コーヒー、買ってきてくれない? 10分以に」

は強引に、再び俺の言葉を途中で遮ると、小悪魔的な笑みをこちらに向けてきた。

あの……なごみさん? 全然目が笑ってないんですけど……? っていうか、めちゃくちゃ嫌な予しかしないんですけど!?

「確かに男にとして負けて嫉妬していたなんて屈辱だわ。だから――この腹いせは奏太君へのペナルティの中でさせてもらうわ」

「え?」

あの……それ、ただの八つ當たりだよね?

「い、いやいや! ここはどう考えても仲直りして一件落著の雰囲気だったでしょ!? 見て!? 平達はすっかり仲直りしてるよ!?」

「よそはよそ。うちはうちよ」

「なんか母親みたいなこと言ってきた!!」

「ほら、奏太君。早く行かないと。あと8分よ」

「もう開始されてんの!? 俺まだお前の要求、承ってないんだけど!?」

「奏太君、言っておくけど命令に一個失敗する毎にこのペナルティは1日延長するシステムを採用してるわよ」

「何、その後付けルール!? じゃんけん勝負で負けた奴が言う『これ3回勝負だから』より質悪いわ!!」

「仕方ないじゃない。この場では私が法律なんだもの――あ、あと7分になったわ」

「ち、チクショー!!」

これ以上抗議しても無駄だと悟った俺は、ヤケクソで教室を飛び出した。

「ねぇ、平君? 私もああいうじにしたほうが良かったかな……?」

「頼むからなごみちゃんの影響だけはけないでくれ」

背中の方からは穂と平からの同の視線が投げかけられ、

「藤岡君~できれば俺の分も買ってきてくれ~」

「黙れ! 裝男!!」

「あはは、ひど~! ――頑張れよ~!」

駒形……いや、駒田先輩からは他人事のような適當な言葉が投げかけられた。

そんな中、俺は一人心の中で願った。――なごみが早く巨になりますように……、それが無理なら日本中から巨がいなくなりますように、と……。

結局この後、俺の下僕生活は4日後まで、當初の予定通り続けられましたとさ……。

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