《ACT(アクト)~俺の婚約者はSな毒舌キャラを演じてる…~》合宿初日、私は自由奔放なお嬢様に衝撃をけました……
夏休み補習合宿1日目。
今日も最高気溫35度を超えるだろうという猛暑の中、私はごく一部の問題児達を除いて夏休み期間にった學校で授業をける羽目になっていた。
授業が全部終われば奏太君に會えるとはいえ、憂鬱だ……。そして奏太君、半ば強引に勉強合宿に參加させちゃってホントごめん!!
「いいですか。今日は今配ったプリント、自力で全問正解するまで居殘りでやってもらいますからね」
心の中で奏太君に土下座する中、教卓からは溫厚で生徒からの人気も高い武田先生の聲が。
「え~そんなの無理に決まってんじゃん~」
「そうそう。こんなの解けたら夏休みに合宿なんて來てねぇよ」
そんな中、多分この合宿について何も知らずにやってきた生徒達であろう。先生に対して普段同様ふざけた態度で返す生徒達。――ご愁傷様です。
そんな彼らに、多分私だけでなくこの合宿に何度も參加している生徒達なら同じように同していることだろう。なぜなら……
「関君、所君」
「え? 何、先生?」
「何? もしかして柄にもなく説教とか――」
「君たちにはプリントをもう1枚追加します」
「「はぁ!?」」
やっぱりこうなった。
私も奏太君から聞かなければ知らなかったが、この合宿は私達赤點組にとっては追試の代わりに行われる最後の救済措置。だからこそ……
「ちょっと文句言ったくらいで追加の課題とかありえねぇよ!」
「そうだよ! 橫暴だ!! こんなのやって――」
「次、文句を言ったら落第としますが、いいですか?」
「「なっ!!」」
この合宿では徹底したスパルタ指導が推奨されており、反抗的な態度の生徒は即刻落第させられることも多々あるらしい。だからこの合宿中、教師に逆らえるものは誰もいない。
「さぁ、それじゃあみなさん、頑張って問題を解いてみてください。全部基本的な計算問題ばかりですが、わからないところがあれば遠慮なく挙手してくださいね」
武田先生がにこやかな表で私達に呼びかけた傍らで、課題を増やされたお調子者の男子がぐっと悔しそうな表を浮かべながら、私達の2倍の量になった課題に渋々取り掛かる。
そして、自然と教室は沈黙に包まれた。
あぁ、良かった……。私も何も知らずに普段の調子で高圧的な態度取ってたらあの人達と同じ運命だったよ……。私も心安堵しながら課題へと取り掛かろうとしたその時、
「先生、ワタクシ疲れてしまったので休憩がてら外の空気を吸いに行っても構いませんか?」
一人のが手を挙げながら発言した。
私よりし背が高いくらいの小柄な。顔立ちはお人形のように整っていて、はき通るように白く、ロングの髪はゆるやかでふわふわとしたウェーブがかかっていて…どこを見ても可らしいだけでなく、どこか気品のようなものをじるの子だった。
可いなぁ。ホントにお人形さんみたい。もしかして、どこかのお金持ちのお嬢様とかなのかな? って、いやいや! 今はそんなこと考えてる場合じゃないでしょ!!
一この子は何を言ってるの!? まだ授業始まったばっかりだよ!? そんなふざけたこと言ってたら、さっきの男子達みたいに課題増やされちゃうじゃん!!
そのの方を見て驚く私だったが、周りの生徒はそうではないらしかった。
聲がした瞬間、一斉にそちらの方へと振り返った彼ら・彼らだったが、その聲の主が誰だったのかを確認した途端、『なんだ、コイツか』と妙に納得したような表を浮かべて再び自分の課題へと目を落としていく。
え? え!? どういうこと!? 何でみんなこの子のこと気にならないの!?
キョロキョロと、教室の中で私だけが戸う中、
「下之城さん? まだ授業開始から15分程しか経っていません。休憩はまだまだ先ですよ」
武田先生、まずは冷靜に注意。
そうか。きっとこの子も最初は注意されるだけだってわかってたからふざけてみただけだよね。さっき目の前で落第寸前までいった男子がいるんだし、もう大人しくなるでしょ。と、思っていたのに、
「あら、外に出るのはダメなんですか。仕方ありませんね。ワタクシ、この場で休憩することにしますわ」
そう言って、彼は堂々と自分の機に突っ伏した。
「……あ、あの、下之城さん? 落第にしますよ?」
この行には先生も驚いたようで、顔を引きつらせながら落第を迫る。しかし……
「どうぞご自由に」
「へ?」
彼――下之城さんはしも顔を上げることなく言い返して見せた。
そして、さらに顔を引きつらせる先生に、
「別に先生が落第にさせたいのであれば構いませんよ。――但し、ワタクシを落第させるのなら先生もそれ相応の覚悟はしてくださいね?」
「!!」
顔を上げてそう告げると、ニコッと笑った。
「な、何を言ってるんですか! そんなこと――」
「できますよ。――だってワタクシの家はこの學校に多額の寄付金をしているんですもの。教師の一人や二人、どうとでもできますわよ?」
逆に先生を脅してる……? 実家の権力を振りかざして……!?
お金持ちの家の子供が先生を脅迫して好き放題――そんな漫畫やドラマでしか見たことのない景を目の前にし私は目を丸くする。
「せ、先生をからかうのも大概にしなさい! どんなにお金持ちの生徒だろうとあなただけ特別扱いするわけには――」
「先生、いいんですか? 來年、上のお子さん大學験じゃありませんでした? 下のお子さんも高校2年生……、そんな何かとお金のかかる時期に一家の大黒柱が失業なんて……、ワタクシ悲しいですわ」
不敵な笑みを湛えながらわざとらしく目を抑える彼に、思わず私は恐怖をじてしまった。
端から見ていただけの私がこうなんだ。當然當事者である先生は……
「……わかった。好きにしなさい」
案の定先生は彼を諦め、力なく課題に取り組む生徒達の見回りに戻って行った
「はい、先生。ご配慮いただいてありがとうございます。――それと、これに懲りたら生徒への脅迫は程ほどにしてくださいね」
下之城さんはそれだけ言い殘すと、すくっと席を立ちあがり、ニコニコしながら教室の出り口の方へと歩いて行った。
まさか誰も逆らえないこの空間で逆に先生を脅しちゃんなんて……。
いろいろと規格外な彼に、私は恐怖をじた一方で、つい、しだけその姿をカッコイイと思ってしまった。
やっていることは間違っている。でも、周りや他人にびず、自分の考えを押し通そうとする自信満々で強気なその姿に、私はしだけ魅ってしまっていた。
見ていれば分かる。私が演じている“偽”なんかじゃない。あれは“本”だ。
私もキャラを演じるんじゃなくて、あんな風に自然とできたらなぁ――何となくそんなことを考えながら下之城さんを目で追っていると、
「あ、そうだ!」
不意に彼は足を止め、ばっとこちらを振り返った。そして……
「そこのあなた! ――波志江なごみさん、あなたも一緒にいかが?」
「……え?」
何の前れもなく、唐突にご指名され、思わず間の抜けた聲がれてしまった。
彼とは喋ったこともなければ、存在を知ったのも今日が初めてでそれは彼だって同じはず。それなのに、なぜ?
そんな戸う私に、
「さぁ、行きましょう?」
「え!? ちょっ!!」
いつの間にやってきていたのか、予想外の出來事に茫然としていた間に目の前まで來ていた彼は、私の意志など関係なく、腕を強引に摑んで立ち上がらせると、そのまま教室の外へと引っ張っていった。
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