《ACT(アクト)~俺の婚約者はSな毒舌キャラを演じてる…~》束の間の休息、自由時間! そこに彼は突然現れた……

「あ~、まさか夏休みの夜に學校にいるとは思わんかった」

「なんか、ごめんね……」

合宿1日目もほぼ終わった午後9時。

夜になったにもかかわらず、相変わらずの猛暑ぶりを発揮している天候にうんざりしつつも、俺となごみはこの合宿の中で1日1時間しか許されていない貴重な自由時間を利用して人目のない校舎裏までやってきていた。

というかこの合宿、10時には消燈とか正気かよ! 今時小學校高學年でももうし起きてるわ!!――と、心の中でこの勉強合宿のスケジュールを作った教師共に愚癡を吐きつつ、

「俺が學校に來てるっつーのに、平が夏休みを謳歌してると思うとムカついてくるな。――よし、ささやかな復讐としてアイツの家に勝手にピザを送りつけてやろう!」

俺は誠に勝手な八つ當たりの計畫を発表し、なごみからのツッコミを待っていた。が、しかし、

「うん、そうだね……」

當の本人は俺の話など上の空。返ってきたのは適當な相槌だけで、我がボケは完璧にスル―された。

……あれ? なごみさん? 今は二人っきりだし、素の狀態ですよね? ボケ殺しはドSキャラの時だけで十分なんですけど? って、今はそんなこと言ってる場合じゃないか。

「……どうした? なんかあったのか?」

とりあえず俺はボケをスル―された悲しさと恥ずかしさをの中にしまい、若干涙目になりながら、ジェントルマンらしく隣で元気なさげにしている彼の様子を窺ってみた。

「ご、ごめん! 別になんでもないの! ちょっと疲れてぼーっとしちゃってた!! ごめんね! こんな噂通りのスパルタ合宿に無理やり付き合せちゃって!!」

「いや、まぁ俺の方は言うほど厳しくなかったし、そこまで気にする必要ないぞ? 授業も全部自習だし、靜かにしてさえいればスマホいじってようが寢てようが、基本何でもOKっぽかったし」

「え、そうなの!?」

俺自、參加してみて初めて知ったのだが、俺のような自由參加組はなごみのような赤點で強制參加している奴らと違ってスパルタ授業等は一切ない。

どうやら自由參加組にとっては、食事付き、いつでも質問できる先生付きで、且つ集中して勉強できる自習室のような存在になっているようで、周りに迷を掛けなければいつ何をしていようが基本何でもアリという方針らしい。

かくいう俺も今日の授業はほとんど寢ていたおかげで目が冴えわたっており、逆に寢すぎて疲れているくらいだ。

「そ、そうなんだ……。噂通りのスパルタ授業と山のような課題に苦しめられてたのは私だけ……。奏太君は穏やかな夏休みを過ごしてたのか……。良かったような、なんか裏切られたような……、奏太君、私は複雑な気持ちで一杯だよ……」

「ふっ、まぁこれが俗に言う実力社會という奴だよ。悔しければ君も頑張って勉強できるようになることだね! 何なら俺がこれから勉強教えてやろうか? 俺は晝間十分寢たから全然元気だぜ?」

「もう! 意地悪っ! 別にいいもん! 奏太君の力借りなくたって、私もやればできるんだから!!」

日頃山ほどの毒舌を浴びせられている仕返しに、ここぞとばかりにからかってやると、彼は頬を膨らまし、ぷいっとそっぽを向いて拗ねてしまった。――うむ。我が彼ながら、今日も可い拗ねっぷりだ。満足満足。

それに、見たじコイツも元気になったみたいだし、今日のところはもうし様子見ってことにしておくか。と、心の中で拗ねるなごみの反応をでつつ、いつもの調子に戻った彼にひとまず安心していると、

「あら、波志江さん。彼氏と二人きりの時はそんなじなのね。可らしいわ」

「「!?」」

突然背後から聲が子の聲が聞こえて、慌てて振り返った。

そこに立っていたのはなごみと同じくらい小柄な。そして……

「あらあらどうしたの、波志江さん? 心配しなくても大丈夫よ。わざわざ藤岡君に教えてもらわなくても、同じ補習組のワタクシがあなたの勉強を見てあげるから」

俺となごみを互に見ながら楽しげに話しかけてくるそのの表は、不気味なくらいにこやかだった。

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