《蛆神様》第77話《隠神様》-12-
あたしの名前は小島ハツナ。
最近、人外のバケモノの襲撃に遭う確率がめちゃくちゃ増えて憂鬱ぎみになっている高校一年生だ。
「ひぃいいい!」
粘土狀になったユヅキが、車のフロントガラスを突き破って侵してきた。
半狂になって悲鳴を上げるユヅキが、一目散に外に逃げ出した。
「お、おい」
イイダがあたしに目を向けた。
粘土。
というより、スライムに近いような印象がある。
半分でできた生き。
そんな狀態のユヅキが、あたしとイイダに挾まれる形で鎮座している。
これ。
どうすればいいんだ。
と、あたしに目で訴えかけている。
そんなの。
ひとつしかないでしょ。
この狀況。
逃げる以外に選択肢はない。
「オマエカ」
ユヅキが言葉を発した。
お前か。
っていったのか?
聲がひどく濁っていて、聞き取りづらい。
「オマエガワレラヲゴロジダガ」
スライムのユヅキの頭の位置あたりから、ぎょろっと眼が浮き出た。
ぞくっと寒気が走る。
咄嗟に、あたしは助手席側のドアのレバーを摑んだ。
すると。
「うわ!」
猛スピードで、スライムのユヅキがあたしにぶつかった。
けない。
まるでトリモチだ。
スライムのユヅキが、あたしのをがっちりを『固定』している。
くそ!
しまった!
あたしはをよじって、スライムの拘束から逃れようと必死に抵抗する。
が。
もがけばもがくほど。
スライムの『粘り』が強くなるみたいで、きが取れなくなってくる。
「小島!」
イイダがんだ直後。
あたしの目の前に、黒いが見えた。
いや。
じゃない。
『口』だ。
牙の生えた獣の口が、目の前に開かれている。
そうあたしは理解した。
「え」
気付いた時には、顔の覚が消えた。
あ。
半分だ。
顔面半分もってかれた。
そんな、気がする。
「小島……お前」
イイダが青ざめた顔であたしを見つめる。
たぶん、五秒ぐらい。
意識を失っていた。
かも。
きっつい。
いきなり『かぶっ』の不意打ちは、マジで勘弁してほしい。
普通の人間なら確実に死んでいた。
だけど。
普段の行いがいいのか。
たまたまラッキーだからか。
車の後部座席に置いたあたしの鞄。
マチコに「お守り代わりに」といわれて、無理やり持たされた【蛆神様】のポスターがっている。
おかげで。
即死だけは免れた。
がりゅがりゅ。
骨とを丸ごと噛み砕く音が聞こえる。
噛みちぎられたあたしの顔の傷口から、夥しい量の『蛆』が湧き出た。
ぼとっ。
ユヅキのスライムの表面に、溢れた蛆が何匹か落ちる。
「ガガガガガガ!」
謎の奇聲をユヅキが発した。
剎那。
あたしとイイダは車外に放り出された。
「うう」
景が二重、三重に映る。
うつ伏せで倒れていたあたしは、立ち上がろうとアスファルトの道路に手をつく。
脇腹に激痛が走った。
息をするだけで、痛い。悲鳴を出すものなら、何十倍の痛みになってに返ってきそうだから、悲鳴が出せない。
わからないけど。
これ、あれだ。
折れた肋骨が臓刺してるんだ。
きっと、そうに違いない。
「いたい……」
心の聲をつぶやきつつ、あたしはイイダを探した。
離れた場所でうつ伏せで倒れているイイダを見つけた。
「ぐぐ」
ゆっくりではあるが、イイダがいているのが遠くからわかる。
よかった。
生きてるみたいだ。
ほっとあたしはがで下ろした。
途端。
ずぎっ。
顔がうずいた。
うずいた顔の部分にると、頬骨が形されていた。
復元している。
だんだんと顔の覚が戻ってきているのはわかる。
ただ。
食われた顔が復元があきらかにいつもより遅い。
いつもなら數秒で傷が癒えるはず。
今は。
骨が構築されるところで止まっている。
離れすぎたせいだ。
車の中に殘してある鞄の中。
【蛆神様】のポスターから『五メートル』以上離れたせいで、傷が癒えるスピードが遅い。
やばい。
噛みちぎられた顔の傷のが止まらないし、おまけに折れた肋骨が臓に刺さっている。
死ぬ。
早く傷を治さないと、本當に死んでしまう。
ぎぎぎぎぃぃ。
金屬がひしゃげる音があたりに響いた。
イイダの車が。
ひとりでに縦方向に潰れ始めた。
車の窓から、逃げ場を失ったシュークリームの中のクリームのように、粘土狀のユヅキのがれ出てきた。
「ゴロス」
ユヅキの聲がはっきりと聞こえた。
顔から垂れるの量が増える。
攜帯は繋がらない。
蛆神様のポスターは車の中。
顔半分は噛みちぎられ、折れた肋骨が臓を刺している。
ああ。
うん。
これ、あれだ。
詰んだかも。
車から無盡蔵に溢れ出る粘土狀のユヅキを目の當たりにして、あたしは思った。
心の奧から、本當に思った。
続く。
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