《死んだ悪魔一家の日常》第一話 延元家
「……。お前、首どこ行った?」
起き上がる妹の首無し死に聞いてみるが、何の反応も示さない。
「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん」
首を巡らせてみれば妹の聲がベッドの下から聞こえてきた。
屈んで見てみれば案の定、妹の首が転がっていた。
「お前、何してんだ?」
「寢相悪いからなー、首引っ掻いちゃって今に至る」
妹の首に手をばし、元のを片手で持ち上げると一階のリビングへと向かった。
「母さん、黒華くろかの首ってー」
リビングでは人な母親と威厳のある父親がいた。
「あなたがってあげなさい。お兄ちゃんでしょ?」
「えー…」
裁道を渡され、肩をすくめた。
妹の黒華は首に包帯を巻いた狀態でヒキガエルをもぐもぐと食べている。
しかしあまり気にらなかったのか今度は別の料理に手をばす。
「味しい!お母さんこれ何?」
「そこらへんで死んでた人間の」
味しいと言われて気を良くしたのか母さんはにっこりと微笑んだ。
「げっ、どうりでまずいと思った」
俺は急いで手元に置いてあったコップにった赤いを飲み干す。
「もう、好き嫌いしないの」
「黒華と母さんはこの手の料理は好きだろうけど俺は人間の生食う趣味ねぇよ!」
「はあ…。わかったわ、今度から焼くようにする」
「馬鹿じゃねぇの!?」
喧嘩が始まりそうな雰囲気を親父が制止する。
「やめなさい紅輝こうき。母さんが作ってくれた朝ごはんに文句を言うな」
「作ったって…潰して盛り付けてるだけじゃねーか。のかけらもねぇ!」
グチャグチャの得の知れないミンチを指差して言い張ると親父は眉を顰めてため息をつく。
─正直に言え、親父。実はその朝ごはんに苦痛をじているということを…。
神妙な顔つきの父親と紅輝を余所に母親と黒華はミンチにむしゃぶりつく。
俺は延元紅輝えんもとこうき。吸鬼。
父親は延元源。同じく吸鬼。
母親は延元華。ゾンビ。
妹、延元黒華。ゾンビ。
お分かりいただけただろうか。延元一家は普通ではない。
お化け一家だ。
俺がこの家族の中でゆういつまともだと思う。
「はあ…彼氏ほしい」
黒華がそう言った。
「お前にはできねーよ」
「死ね」
「ぎゃぁあ!てめー!!」
黒華がヒキガエルを俺の目にめがけて投げつける。
「お母さんはどうやってお父さんと出會ったの?」
目を押さえて藻掻く兄を余所に黒華は母さんに相談。
「えー!私から話すの恥ずかしいぃー」
「もー照れないでよぉー」
両頬を押さえて母さんはをよじる。その橫で黒華もテンションを上げる。
──腹立つわー。コイツらめっちゃ腹立つわ…。
「ねえ、私達との出會いは何だったけ?」
母さんは親父に聞く。
「ああ、そうだ確か…」
親父は懐かしむように語りだす。そういえば俺も二人の出會いを知らない。真剣に聞いてみることにした。
「母さんは…學校の屋上の柵の向こうにいた」
…………。
嫌な予がしてきた。
「母さんはそこから飛び降りて…死んだ。その時だった…」
親父は目を閉じた。
「だらけになった母さんが、壁をよじ登ってやって來たんだ」
「こえーよ!!」
親父の話を聞いて母さんははにかみながら二人の子供に語る。
「運命の人ってどこにどうやって現れるかわからないわ」
…ある意味ね。
「二人にも、運命の人が見つかるはず…」
ほーう、つまり俺は壁をよじ登ってきただらけのの子とに落ちるのか…。
めちゃくちゃ嫌なんだが。
「素敵…。お母さんが化になった最初の日にお父さんと出會ったのね。ロマンチック」
「落ち著け黒華。今の話のどこにロマンチックな要素があった!?」
妹のおかしな解釈にツッコミをれて振り返ると親父はため息をついて再び語りだした。
「あの時は驚いたよ。何せ、人間は死んだらかないものだろう?なのに、母さんだけはき出した。運命をじて、死なない彼に近づいたんだ」
親父ーっ!それ運命じたってよりただの好奇心じゃね!?
「お腹いっぱい、ご馳走さま。それにいいお話が聞けた」
黒華は満足げに口の周りについているを舐め回す。
「お兄ちゃん!犬に餌をやりに行こうよ!」
「はあ…お前だけ行ってこいよ」
「えー、一人じゃ大変だもん。行こうよー」
とりあえず、妹思いの俺は立ち上がり、黒華の我儘に付き合うことにした。
「ドクロ、パンドラ!ごはんだよ。えいっ」
地下にある巨大な鉄格子の間に向かって生を投げ込む黒華。
それに食らいつく超超超大型犬。
白い方がドクロ。黒い方がパンドラ。
「味しそうに食べてる…」
「黒華、よだれが…」
「すまん、牙を立てられ引きちぎられるのさえずりが私を呼んでる気がしたので」
黒華は口から垂れているよだれを吸い込み飲み込んだ。
俺が持たされているのは何かのの塊がったバケツ。
何のかは黒華の反応を見ればわかるだろう。
「あ、そろそろ學校行かないと…」
「何、優等生みたいなこと言ってるの??」
「俺優等生だから!今までどれだけ勉強に苦労してきたことか…」
そんな俺を黒華は蔑んだ目で見てきた。
「優等生って他人に賞賛され勝ち殘った調子こいたやつのことを言うんだよ?そしてあれだろ?テスト高得點取っておきながら「やだー、今回勉強してないから悪いーっ」つって自のクソみたいな才能引け散らかすんだろ?」
「……何があったのか知らんがおつかれ」
ブツブツと誰かの悪口が止まらない妹が不憫に思う。
それに、キレると止まらない妹。
化一家の一員である妹は喧嘩ふっかけてきた男子を毆り飛ばした経歴を持つ。
怒らせるとヤバイやつである。
しかし、俺はコイツの兄貴。
不登校の不良の妹を説得するべく、兄の威厳というものを忘れてはならない。
「黒華。とりあえず學校には行こう。面倒くさいとか思わずに、今のうちに青春しよう!」
「お兄ちゃん…」
差し出された手と兄の顔を見て、黒華は眉を顰めた。
「…死ね」
「おぶぁっ!」
黒華は持っていた生バケツを取り上げ俺の顔面に投げつける。
「貴様!何でいつも顔を狙うんだよ!」
「お兄ちゃんのばか!もういい、自殺してくる!うわーん!!」
駆け出した黒華を引き止めずにわなわなと拳を握りしめる。
──よし、あいつが寢てる間にもっかい首をもいで隠そう。
そう決心した。
學校に向かい、ひとまず安堵の息。
周りは勿論人間なのだが、數人怪が混じってる。
「延元君、おはよう」
宮未音子。このがその一人である。
「今日は妹ちゃんと來たの??」
「あいつは今自殺しに行ってる」
音子は目を細めて、八重歯を見せる。
「だめだねー。無理矢理説得は良くない。面倒臭がりを治すところから始めないと」
そうは言っても、その面倒臭がりを治す方法がわからない。
「まず、散歩に連れ出しましょう」
「あいつ、死ぬか人狩りにしか外に出ないよ」
「それを活用するんだよ。黒華ちゃんに、おやつ・・・食べに行こうって言うの」
なるほど、それならあの食いしん坊の馬鹿でもついてくるかもしれない。
「ありがとう、音子。參考になった」
「お禮なんていらないよ。私は面白そうだからアドバイスあげただけ」
「善意としてアドバイスくれたってことにしとく」
はいはい、と頷く音子。
早速黒華に使ってみよう。
「ただいま」
「おかえりー!見てみて紅輝、ソーセージ作ったの。今朝言われて反省したわ。ちゃんとした料理よ」
「そうそう!俺はそういうのを求めてたの!そのソーセージの材料にはあえてれないでおくけど」
やっと褒めてくれた息子に激した様子の母さんはスキップしながら臺所に向かった。
さて、黒華はどこだ…。
リビングに來て、ソファに座る黒華を見て固まった。
「…。お前、何でだらけなんだ」
「家の屋から飛び下りたのに……死ねなかった!」
「でしょうね!俺らが簡単に死ねる種族かと思ったか!」
黒華は下を向き、詰めが甘かったと反省し出す。
そこで、俺は作戦実行する。
「黒華、俺と散─どぉおりゃ!!」
目の前に飛んできた本を回避する。
「最後まで聞けよ!」
「ごめん、無にミンチを見たくなる衝に駆られたの」
無表でハサミを手にする黒華。
うわー、コイツついに刃まで投げようとしてる。
「落ち著いてくれ黒華!ただの散歩じゃねー、狩りだ!」
狩り。
その言葉を聞いて黒華のきが止まった。
「………」
しばしの沈黙の後、黒華は鼻で笑った。
「はっ、そんなことで私がくとでも…」
「おやつ・・・。食べたくないか」
黒華はわなわなと肩を震わせ立ち上がる。
「そういうこと…………。早く言えよな兄者!!」
「すまんな!我が妹よ!」
ワハハ、と兄妹の笑い聲が木霊するリビング。
その時。
目の前を通り過ぎる包丁をやっとの思いで避けた。
「か、母さん!?」
「ご飯前に、おやつ?何考えてるの紅輝」
兄妹の橫を通り過ぎ、母さんは壁に突き刺さった包丁を引き抜いた。
「違うの!お母さん!」
「黒華!」
黒華が母さんに立ちはだかる。
普段、卑怯で悪の妹が目の前の狂気に立ち向かっている。
…俺のために。
「全部お兄ちゃんが悪いの!」
「何ぃい!?」
コイツ、あとで首をベランダから放り投げてやる!
「紅輝…」
「違う、違う!俺はっ!」
今夜、の雨が降る。
貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】
マート、貓《キャット》という異名を持つ彼は剣の腕はたいしたことがないものの、貓のような目と、身軽な體軀という冒険者として恵まれた特徴を持っていた。 それを生かして、冒険者として楽しく暮らしていた彼は、冒険者ギルドで入手したステータスカードで前世の記憶とそれに伴う驚愕の事実を知る。 これは人間ではない能力を得た男が様々な騒動に巻き込まれていく話。 2021年8月3日 一迅社さんより刊行されました。 お買い上げいただいた皆様、ありがとうございます。 最寄りの書店で見つからなかった方はアマゾンなど複數のサイトでも販売されておりますので、お手數ですがよろしくお願いします。 貓と呼ばれた男で検索していただければ出てくるかと思います。 書評家になろうチャンネル occchi様が本作の書評動畫を作ってくださっています。 https://youtube.com/watch?v=Nm8RsR2DsBE ありがとうございます。 わー照れちゃいますね。
8 54【書籍化】オタク同僚と偽裝結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!
【電撃文庫の新文蕓から書籍化・コミカライズ開始!】 相沢咲月は普通の會社で働くOLだが、趣味で同人作家をしている。それは會社には秘密だ。 ある日イベント會場で突然プロポーズされた。相手はメガネ姿のドルオタ……じゃなくて、同僚の滝本さんだった! 超打算で結婚する咲月と、打算の顔して実は咲月がずっと好きだった滝本さんの偽裝結婚の話。 少しずつ惹かれあって最後にはちゃんとした夫婦になりますが、基本的にオタクが同居して好き勝手楽しく暮らすだけです。 裏切りなし、お互いの話をバカにしない、無視しない、斷ち切らないで平和に暮らしていきます。 咲月(女)視點と、滝本(男)視點、両方あります。 (咲月は腐女子ですが、腐語りはしません。映畫、ゲーム、アニメ、漫畫系統のオタクです) 2020/08/04 カクヨムさんで続きを書き始めました。 ここには書かれていない話ですので、ぜひ読みに來てください! 2022/01/07 オタク同僚と偽裝結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど! 1.5(番外編) として番外編をなろうで書き始めました。 話數が多いし、時系列がグチャグチャになるので新しい話として立ち上げているので 読んで頂けると嬉しいです。 2022/01/17 二巻発売しました。 2022/01/25 コミックウオーカーさんと、ニコニコ靜畫さんでコミカライズ開始! ぜひ読みに來てください!
8 115世界最強はニヒルに笑う。~うちのマスター、ヤバ過ぎます~
數多(あまた)あるVRMMOの1つ、ビューティフル・ライク(通稱=病ゲー)。 病ゲーたる所以は、クエスト攻略、レベルの上がり難さ、ドロップ率、死亡時のアイテムロスト率、アイテム強化率の低さにある。 永遠と終わらないレベル上げ、欲しい裝備が出來ない苦痛にやる気が萎え、燃え盡き、引退するプレイヤーも少なくない。 そんな病ゲーで最強を誇ると言われるクラン:Bloodthirsty Fairy(血に飢えた妖精) そのクランとマスターであるピンクメッシュには手を出すなと!! 新人プレイヤー達は、嫌と言うほど言い聞かせられる。 敵と見なせば容赦なく、クランが潰れる瞬間まで、仲間の為、己の信念を通す為、敵を徹底的に叩きのめし排除する。例え、相手が泣き叫び許しを乞おうとも、決して逃がしはしない!! 彼女と仲間たちの廃人の廃人たる所以を面白可笑しく綴った物語です。 ゲーム用語が複數でます。詳しくない方には判り難いかと思います、その際はどうぞ感想でお知らせください。
8 113比翼の鳥
10年前に鬱病となり社會から転落したおっさん佐藤翼。それでも家族に支えられ、なんとか生き永らえていた。しかし、今度は異世界へと転落する。そこで出會う人々に支えられ、手にした魔法を武器に、今日もなんとか生きていくお話。やや主人公チート・ハーレム気味。基本は人とのふれあいを中心に描きます。 森編終了。人族編執筆中。 ☆翼の章:第三章 【2016年 6月20日 開始】 【2016年10月23日 蜃気樓 終了】 ★2015年12月2日追記★ 今迄年齢制限無しで書いてきましたが、規約変更により 念の為に「R15」を設定いたしました。 あくまで保険なので內容に変更はありません。 ★2016年6月17日追記★ やっと二章が終了致しました。 これも、今迄お読みくださった皆様のお蔭です。 引き続き、不定期にて第三章進めます。 人生、初投稿、処女作にて習作となります。色々、突っ込みどころ、設定の甘さ、文章力の無さ等々あると思いますが、作者がノリと勢いと何だか分からない成分でかろうじて書いています。生暖かい目で見守って頂けると幸いです。 ★2016年10月29日 4,000,000PV達成 500,000 ユニーク達成 読者様の応援に感謝です! いつも本當にありがとうございます!
8 71Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜
全校集會で體育館に集まっていた人間達が全員異世界に召喚された!? おいおい冗談はよしてくれよ、俺はまだ、未消化のアニメや未受け取りのグッズを元の世界に殘してきてるんだ! え、魔王を全て倒したら元の世界に返してやる? いいよ、とっととやってやるよ! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 學校関係者全員が勇者召喚されたとある高校。 〜元の世界に殘してきた、あなたの大切な物の數だけ、代わりにチートスキルを付與します〜 神のその言葉通りに全員が、それぞれ本當に大切な所持品の數だけチート能力をもらうことになる。 全員がだいたい平均2〜4くらいしか付與出來なかったのだが、重度のコレクション癖のある速水映士だけは1000ものスキルを付與できることになっていて!? しかも最初に極運を引いたことで、後に付與されたスキルが超再生、超成長、更には全屬性特攻etc,etc……というあからさまに強そうな能力たち! 元の世界ではただのヲタクソ野郎である彼がこの世界では英雄! しかし、彼は英雄の座には興味を一切示さず!? 「魔王なんてサクッと全員倒してやる。俺には、さっさと地球に戻って未消化のアニメを消化するっていう使命が殘ってるからな!」 ギャグ要素強めな情緒不安定ヲタクソ野郎×チート能力の組み合わせによる、俺TUEEEE系異世界ファンタジー! ※小説家になろうにも投稿しています 《幕間》噓つきは○○の始まり、まで改稿済み 2018/3/16 1章完結 2018/6/7 2章完結 2018/6/7 「いや、タイトル詐欺じゃねぇか」と指摘を受けたため改題 第63部分より3章スタート 第2章まで完結済み 2月3日より、小説家になろうにて日刊ランキングに載せていただきました! 現在作者都合と病弱性により更新遅れ気味です。 《番外》は一定のテーマが當てられてます。以下テーマ。 2018バレンタイン→初めてのチョコ作りをするシルティス 2018ホワイトデー→理想の兄妹の図が出來上がるエイシルコンビ 2018エイプリルフール→策士な王女様と騙された勝気少女 ◇◇◇ ご不明な點がございましたらコメントかTwitterのDMにどうぞ 7/9 追記 公開しようと予約した一括投稿のうち最終話のみ、予約ではなく後悔にしてしまっていたので削除しました。 全體的な更新はまだ先になります。
8 156現代帰ったらヒーロー社會になってた
主人公 須崎真斗(すざきまさと)が異世界に飛ばされ魔王を倒して現代に戻ってくるとそこはヒーロー社會と化した地球だった! 戸惑いながらもヒーローやって色々する物語バトル有りチート有り多分ハーレム有りハチャメチャ生活!
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