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次に目を覚ました時、ユウは牢獄に居た。服を著せられることもなく、足首と手首には手錠がつけられている。右手と左手は鎖で繋げられており、右足と左足は繋がっていて壁と鎖が繋がっているため、まともにこの部屋を移することすら危うい。

だが、それでもユウは絶することはなかった。

「……まだ、何とかなる」

息も絶え絶えになっていたユウだったが、何とか言葉を絞り出した。

絶的な狀況であったのは変わりないというのに、それでも彼は諦めなかった。

何か的な策があるとでもいうのだろうか？

その考えは、彼にしか解らない。

◇◇◇

木崎市が戦場と化して、一週間。

ヘテロダインとアレイスターの戦闘はヘテロダインの敗北に伴い、アレイスターが木崎市の全権を握ることとなった。実質的な侵略である。當然、法治國家であるのでそんなことは許されるわけもない。國が直接アレイスターと渉することとなった。仮にそんなことが了承されようとしても、この國家は法治國家なのだから。

しかし、アレイスターはそれを拒否した。

國の使者を慘殺した映像を、送りつけたのだった。

アレイスターのボス、アリス・テレジアは映像中で語った。

――私たちは、魔師の魔師による魔師のための國家を作ることを、ここに宣言する。

その言葉を宣戦布告とけ取った政府は木崎市を切り離すことを宣言、同時に非常事態宣言を発令した。

木崎市にはヘテロダインが蔓延っており、街の闇に潛んでいたといわれているが今回のアレイスターなる組織の宣戦布告を決定打として、ヘテロダインの壊滅を推測した。

誰かが言った。

魔師と人間の戦爭は、この後の歴史を大きく変えることになるだろう。

人々が魔師の危険を意識する、重要なターニングポイントになるだろう。

その言葉の意味を、いつ人間たちが理解するのか――それはまだ知らない。

◇◇◇

上では撃音が聞こえる。

それを聴いて、彼は自分が地下に居ることを理解する。

「……木崎市に自衛隊がやってきたというのか……。目的は、アレイスターの殲滅、か。いや、そんなことは無理だ。そんなことをしても、魔師を倒すことは敵わない。魔師を倒すなら、同じ魔師でないと……倒すことはできない」

獨り言のように、彼は呟いた。けれど、それは地上の自衛隊に屆くことはない。

「このままだと……木崎の街がなくなってしまう」

消失は無いにしろ、今まで人が住んでいた場所が失われてしまう。

それは避けなければならない。どうにかしなければならない。

そのためには、ここを出する必要がある。

「でも、さすがにこの狀況では出できないわね……」

彼は自分の恰好を見る。両手両足が鎖で繋がれになっている。魔力をすべて吸われてしまったために――力となからず関連づけられている。おそらく薬を使ったのだろう――今はまともに歩くことすら危うい。きっと今の狀況でナイフを突きつけられても何も抵抗することはできないだろう。ユウはそう思っていた。

「どうすればいいかしらね……。スノーホワイトの人間はまだ捕まっていないといいけれど」

そうでないと、彼の計畫がすべてパァになってしまう。

だから、スノーホワイトには頑張ってもらわねばならない――そう思っていた。

そう思っていた。

彼の牢屋の扉があけられたのは、その時だった。

「外に出ろ、ユウ・ルーチンハーグ」

聲をかけたのはハイド・クロワースだった。

その聲を聴いて、彼はそちらの方を向く。

「……あなた自ら、姿を見せるとはね。どういう風の吹き回し？」

「別にそういう意味で來ているわけではない。まあ、し君に用事が出來た、とでも言えばいいかな？　一応言っておくと、これはアリス・テレジアが実行せよ、と言ったことだ。僕としてはもっと君のことを研究したかったのだけれどね……」

そう言って、ハイドはユウに布をかける。

「……けのつもり？」

「まさか。まあ、間違っていないのかもしれないな。それは僕が君にする最初で最後のけかもしれないし。さあ、出ておいで。……おっと、そうか。部屋の鎖を解かないといけないのか。まったく面倒だなあ、こんな仕組みに誰がしたというのか……」

つまらなそうに鍵を外していくハイド。それでも彼の両手両足には鎖が繋がれている狀態となっていることには変わりなく、あくまでも彼が自由にけるようになっただけである。

「さあ、ついてきたまえ」

「……嫌だと言えば？」

「この場に及んで、そんな子供のような言をする君でもあるまい？」

ハイドは笑っていた。笑みを浮かべていた、とでも言えばいいだろう。

しかしその表は非常に冷酷で、殘酷だった。そうして彼はこれから自分に降りかかることが、なんとなくしだけ予測できた。

◇◇◇

到著した場所は、とても熱い場所だった。布しかかけられていない狀態となっている彼ですら、汗が止まらなかった。

「ふう……。さすがにここは暑いな。脳が停止してしまうくらいだよ。早く人間の脳にもファン機能を付けてくれれば、また何か変わるかもしれないけれど。まあ、それは提案の問題だ。実際の実用段階にはまだ時間がかかるが」

無駄な言葉を付與させつつも、彼はユウに付けられた鎖を接続する。

先端となった――岬と言っても過言ではないような場所。

そこに接続された鎖を見て、彼は見當がついた。

「処分する、ということか。私を」

「殘念ながら」

ハイドの言葉は冷たかった。

「まあ、僕としてはもうしデータを収集したかったところなのだけれど、これだけは致し方ないことなのかな。アリス・テレジアがもう価値はないと言い切ってしまったからね。斷言してしまったからね。そうなってしまえば、僕にはもう何も言えない。僕としてはあくまでも利用しているだけに過ぎないからねえ」