《梨》羽蟲
冷たいタイルを這う羽蟲が死んだ。私が用を足している間の出來事である。一歩、二歩と重い足を運び、とうとう死んでしまった。目の前で命の絶えるのをみると改めて気づくのだが、常に何かが死んでいるようである。小學校の道徳では何秒に何人が死んでいるなどと言うけれども、実際に目の前で何人も死なれたわけではない。あれは噓なのか、はたまた死に気がつかないほど生きが多いのか。目隠しをされている気がする。死の予兆はきっと誰もがじるものだと思うが、ではあの羽蟲は死ぬとわかりながらどこへ向かおうとしたのだろう。とにかく私は、かたや用をたす命の前にひとつの絶命をみて怖くなった。
客席に戻りいくつかの皿を平らげ様々な會話をわした頃には、羽蟲のことなど微塵も覚えていなかった。し酒のまわった頭で、夜の道をあるく。一歩、二歩と重い足取りで自宅へと向かう。あの羽蟲のような男がショーウィンドウのガラスに見える。あんなに怖かったくせに、今まであいつを忘れていたことに気づき驚いた。でもまあ、なんというか、常に羽蟲を意識する人生など死んでいるようなものに違いない。死と隣り合わせという事実を意識していては生きていられないのだ。
ここへきてやけに、今日の自分の死への執著に気がつく。一歩、二歩、三歩、重い足を運ぶ。
【書籍化決定】愛読家、日々是好日〜慎ましく、天衣無縫に後宮を駆け抜けます〜
何よりも本を愛する明渓は、後宮で侍女をしていた叔母から、後宮には珍しく本がずらりと並ぶ蔵書宮があると聞く。そして、本を読む為だけに後宮入りを決意する。 しかし、事件に巻きこまれ、好奇心に負け、どんどん本を読む時間は減っていく。 さらに、小柄な醫官見習いの僑月に興味をもたれたり、剣術にも長けている事が皇族の目に留まり、東宮やその弟も何かと関わってくる始末。 持ち前の博識を駆使して、後宮生活を満喫しているだけなのに、何故か理想としていた日々からは遠ざかるばかり。 皇族との三角関係と、様々な謎に、振り回されたり、振り回したりしながら、明渓が望む本に囲まれた生活はやってくるのか。 R15は念のためです。 3/4他複數日、日間推理ランキングで一位になりました!ありがとうございます。 誤字報告ありがとうございます。第10回ネット小説大賞ニ次選考通過しました!
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8 56強奪の勇者~奪って奪って最強です~
「周りからステータスを奪っちゃえばいいのに」 少女がそんなことを抜かす。 俺はそれを実行し、勇者になった。 「強奪の勇者とは俺のことよ!!」
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