《一臺の車から》23.ハッチバックの布教車 (フォルクスワーゲン ゴルフ GTI)
その車は、いまだに風景に溶け込んでいた。
いつも通りの通勤のことだ。
2cvの小さな窓から、一臺の黒い車が高速道路へと上がっていった。
初代フォルクスワーゲン、ゴルフ、GTIだ。
そのハッチバックの車は40年ちかく前の車にもかかわらず、褪せてはいなかった。
フォルクスワーゲン、ゴルフ、GTI。
フォルクスワーゲン、ビートルの進化版といっても過言ではないだろう。
ビートルは、発売してから順調に販売臺數をのばしていき、ついには輸出するようにまでなっていた。
その、輸出先の一つであるアメリカでは、輸車で一番の人気を誇っていた。
しかし、排ガス規制が始まると、空冷のビートルでは、クリアすることが難しくなっていった。
そこで、ビートルに代わる水冷の車を開発することになった。
それがゴルフだ。
ゴルフの開発は、ビートルを見直すことから始まった。
その結果、エンジンの水冷化と前駆に変更することが決まった。
この時點で、エンジン橫置きにすることも決まったため、水平対向4気筒から直列4気筒にもなった。
エンジンが前にいったため、トランクスペースが大きくとれるようになり、ハッチバックを採用した。
ゴルフ以前にハッチバックはルノー4CVで採用されているが、広まっていなかった。
ゴルフが発売されると、瞬く間に輸車で一番の人気となった。
この車がハッチバックを布教させたといっても過言ではない。
現在の日本車で、ハッチバックが多く採用されているのは、ゴルフの功があったからなのだ。
仕事場の駐車場に2cvを止めて、
「うちの2cvも30歳ぐらいか。
これからもよろしくな。
いってくる。」
と、聲かけて、鍵をしめた。
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