験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の果を見せつける-》戦爭Ⅵ

「どうしてですか、殿下! 早朝に山頂を確保せねば苦戦するのは今までの経験から明らかです!」

「それでも、ダメよ。今作戦が進行中なの」

「ならなぜその作戦とやらを教えて下さらないのです!」

「説明が面倒だからよ」

「そのようなことが……!」

もちろんアンとて許されるとは思っていない。

だが、知らないのだ!

ライヤのことだから必要なのだろうと兵を選別したはいいものの!

作戦の説明を聞こうと思ったら既にその場におらず!

置き手紙で「明日は戦線を一つ下げておいてくれ」と書かれてあるだけ!

つまり、説明のしようがないのだ!

(あいつは次に會ったら絶対にシメるわ。大事なことを私に言わない癖をどうにか矯正しないと私の近くにおけるものもおけやしない! ライヤを私のお付きにするにあたっての最優先事項だわ!)

當時、教師になるとライヤは言っていないためアンはどうにかして近衛に仕立て上げようと畫策していた。

まぁ、それも徒労に終わるのだが。

「來たな」

戦場を俯瞰できる位置。

つまり上空で狀況を伺っていたライヤは獨り言をらす。

視界には山頂に迫る敵軍が見えている。

このままでは山頂を占拠され、そのまま攻められることもあるだろう。

しかし、そうはならない。

山頂に到達した敵軍はまず間違いなく足を止める。

なぜなら、今までと勝手が違うからだ。

今まで通りいると思っていたこちらの軍がいない。

よほど想像力に乏しくなければ罠であると考えるのが普通である。

だが、今回の作戦が看破されることはないだろう。

環境にあるものを利用したもの、そしてそれがガスであり見分けがつかないのだ。

しかし、行軍速度は遅くなる。

伏兵などのリスクに対処しなければならないから。

つまり窪地にいる時間は長くなる。

それも、普段より硫化水素が蔓延している場所に。

「! どうしたっ!」

徐々に移していた軍の隊列の中にれが生じる。

1人目の落者が出たのだ。

それを皮切りに、バタバタと倒れていく兵たち。

「た、退避ーーっ!」

倒れた兵たちは即死ではない。

まだ息はあるが中毒狀態で力している。

これを連れての退避がスムーズに行われるはずもない。

そしてその間でも倒れる者は増えていく。

ここで自軍に信號弾が上がる。

いいタイミングだ。

相手軍が撤退を開始したら自軍を山頂に導けるように信號弾を用意してもらっていた。

どうじに、滯留していた硫化水素を上空に逃す。

わずか2時間の間に今日の山頂の制圧を完了した。

この作戦は相手にこちらの手のがわからないままになるという利點がある。

明日以降も今日のようなことを防ぐために進軍が慎重になるだろう。

そうなれば、こちらの軍が先に山頂に辿り著けるというわけだ。

「これでしは楽にやれるようになるかな」

「ライヤ、正座」

「え、いや……」

「正座!」

「はい……」

その日の晩、快勝に終わったその日の戦闘を祝う宴が外で行われている中、ライヤはい地面の上で正座を強要されていた。

「いい!? 今度から何かやるときは私にもちゃんと説明すること! 私にも偉い人たちの中での説明責任ってものがあるのよ!?」

「いや、その中の何人が信用できるかわからないから、言わない方が……」

「なら! 私の方でそこらへんはどうにかするからなくとも私には説明すること! 今やってることがわからないのに待っているなんて無理よ!」

「今回出來てたじゃん」

「生意気なことを言うのはこの口かしら~!」

痛い痛いっ!

「ふふっ。仲がよろしいですね?」

アンに思いっきり両ほほを引っ張られているライヤを見てフィオナが笑う。

笑っていないで助けていただいても!?

「アン王、そのあたりで。皆様待っておられますので」

「……ライヤはそのままね。食事くらいは許すわ」

今日の快勝を祝う言葉を述べるためにアンがスタスタと天幕から出ていく。

「大丈夫ですか?」

「えぇ、まぁ。正座自は得意なんで」

膝のあたりにあって痛すぎた小石をどかしながらフィオナと話す。

なんでこっちの世界にも正座なんてもんがあるんだろうな。

イス文化なんだからまず床に座るという事自があまり考えられないと思うんだけどな。

「今日はお疲れさまでした。こちら、今日の夕食です」

「あ、ありがとうございます。今日はちょっと豪華ですか?」

「えぇ、やはり勝った日には良いものを食べませんと」

いつもより心なしか豪華なフィオナが運んできた料理に手を付ける。

「! おいしい!」

いつもよりし豪華な程度だと思っていたがこれは……!

「お口に合ったようで良かったです♪」

「ということは、これはフィオナ先輩が?」

「えぇ、これくらいしかできませんが」

「十分過ぎます!」

正座したままスープを口へれる。

「よろしければ、明日以降も私がお作りしましょうか?」

「いいんですか! いや、ちょっと待ってください。S級クラスそんなことしてる暇ないくらい忙しいのでは……?」

「S級クラスと言っても私はアン王の護衛ですから前線に出ることはありませんし。地形も特殊ですから大きな魔法の打ち合いも難しいですからね。現狀、一番余っているのはS級クラスでしょう」

言われてみれば、想像していたような大砲のような魔法が飛びう図は見ていないな。

「平野部であれば話は別ですけど、今回は戦距離が近いですからS級クラスを參戦させると味方ごとやっちゃう危険があるという事で保留されているみたいです」

「なるほど?」

隨分と甘いな。

戦爭なんだからそのくらいは織り込み済みかと思っていたが。

「もうし、だったらしいですよ?」

「何がだ?」

「S級クラスの參戦まで、です」

……追い込まれたら出さざるを得ないってことか。

だが、そうなると向こうからも同程度の奴が出てくるわけで。

泥沼化は必死である。

ほんと、戦爭なんて碌なもんじゃないな。

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