験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の果を見せつける-》権力爭い

「分校づくりは順調なようね」

「まぁ、思っていたよりは」

もちろん王都に戻れば學園長への報告が待っていた。

「アンネ先生には大変な盡力をしていただいたと聞いてるわ」

「それほどでもないです」

夏休みだが、クラブ活のある生徒は登校していることもあるのでアンネ先生久しぶりの登場である。

こっちもいいなぁ……。

「そのまま分校の學園長の座に座りそうな勢いだとか?」

「まさかまさか。分校の學園長の指名権限の記載がなかったことなんて気にしてませんよ?」

呑気なことをライヤが考えている間に凄いごつい話してた。

「なに、アン、じゃない、アンネ先生は學園長になるつもりなのか?」

「私がならないと新しいことが出來ないじゃない」

ほう。

的には?」

「魔力量による極端なクラス分けを廃止するわ。一定の評価基準ではあるべきだけど、可能を狹めるものでしかない」

思ってたよりも現行の制度を真っ向から否定したな。

「王都ほど生徒が集まるならある程度の振り分けは必要だとは思うわ。選別くらいしないとあまりにも教師の負擔が大きすぎるもの。それは分校でわかったことね」

そう。

元から持っている知識だとかが違う相手に同じことを教えるのは無理に等しい。

足し算までを知っている人間と、掛け算までを知っている人間と、分數までを知っている人間とに同時に連立方程式を教えているようなものだ。

やってられたもんじゃない。

昔の王國の偉い人もこの問題にぶち當たって現行の制度にしたのだろう。

「分校で功すれば、王都でも學園を分けることを考えてもいいと思うわ。もちろん、それに伴って教師を増やす必要があるけど。1人の教師に多くを求めすぎているだけで、座學を教えるだけならB級(クラス)以下にも適任はいくらでもいるわ。その基準ならライヤなんて魔法が全くできなくても教師になれていたもの、そうでしょ?」

確かに。

日本でも中學からは各教師が自分の科目を教えていた。

いきなりそこまで分化せずとも、座學と魔法學を分けるだけで教師一人の負擔はかなり減る。

「引退した先生方にもまだ座學だけならやってもいいという先生もいるはずよ。そういった方々に聲をかけてみるつもりです。いかがでしょう?」

「……驚きました。そこまで明確なビジョンを持っているとは……」

考え込んでいた學園長は筆を執る。

そしてさらさらと書き込んだ紙をアンネ先生に渡す。

そこには今の一瞬で書いたとは思えないほどの報が。

眼を剝くライヤに學園長が一言。

「もちろん、元から書いてあったわよ?」

ですよねー。

「ここ數年の引退された教師の方々の連絡先よ。あなただけでもすぐに集まるでしょうけど、私なりの応援と思ってちょうだい」

つまり、アンネ先生が認められたという事か。

「でも、それと學園長の話は別よ?」

「もちろんです。でも、決定権も學園長にはないですよね?」

2人の間でぶつかる火花が見える気がする……。

「先生―!」

「おぉ!?」

學園長室を出るなり集団で飛び込んできた生徒たちによりもちをつくライヤ。

「あんたそのくらい避けなさいよ」

「避けない方がいいやつだろ、これは。お前ら、元気だったか」

生徒にこんなに歓迎されるのは先生冥利に盡きるな、うん。

げし。ボコ。ぺし。

様々な方向から蹴りやら毆りやらはたきやらをくらうライヤ。

「は???」

「いきなりいなくなったのはこれで許してやる!」

ゲイルが立ち上がりながらそんなことを言うが、理不盡では?

何より。

「エウレアもそんなことするようになったのか」

「……?」

「いや、首を傾げられても。頭を軽くはたいたのはお前だろ」

何のこと? と後ろを向くエウレア。

いや、お前の後ろに誰もいないから。

なんて古典的なボケだ。

「俺だって別に行きたくて行ったわけじゃないって」

「それでも連絡くらいくれても良かったのでは?」

「……一理ある」

なんか忙しくてそれどころじゃなかったんだよな。

言い訳だけど。

「悪かった。だから、そろそろ放してくれシャロン。俺が悪かったから」

腰にしがみついて離れないシャロン。

珍しくその雙眸はライヤを見つめており、不満がありありと表れている。

そろそろ離れてくれないと!

當たってるから!

アンとウィルからの視線が痛い!

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