《覇王の息子 異世界を馳せる》曹丕、夜這いに苦戦する

曹丕の準備は萬全だ。

曹丕たちが寢泊りしている建には、大量の服が用意されている。

自由に使ってくれと村長からのおもてなしの一貫だ。

その中から、黒い服を選んで著替える。

夜明けまで時間はない。急がねばなるまい。

夜が明けてしまえば、それは夜這いではなくなってしまう。

幸いにも、関羽や他の者たちは、曹丕が治療中だと思っている。

時間はないが、障害もない。

なお、醫者の男は、曹丕の獨り言を聞いてしまっていたので、一眠りしてもらった。

暫くは起きて來ないだろう。

なぁに、彼も醫者なら怪我で錯した患者に襲われる事など日常茶飯事だろう。

醫者なら自の治療もできるはず。人を治す前に自分を治せなくて、何が醫者なものか。

曹丕は暗闇が支配する建の中、誰にも気づかれぬよう、悟られぬよう、見つからないように走り抜ける。

その走は、ほんの前まで死闘を繰り広げていたグルカ達が使っていたもの。

四本獣の如く、を丸め、無音で駆け抜けていく。

まさか、グルカ達の技が、こんなにも早く役に立つとは・・・・・・。

曹丕はそんなことを考えていたが、グルガ一族からしてみれば、

誇り高きグルガの技が、夜這いに使われているとは、夢にも思わないだろう。

やがて―――ついには―――

曹丕はシンの寢室にたどり著いた。

否!たどり著いてしまったのだ。

先に言っておこう。

現代社會において、曹丕の行為は、決して許されるものではない。

しかし、諸君。これを読んでいる諸君よ。

我々の時代の価値観と、曹丕の1700年前の時代の価値観。

そして、異世界での価値観は全く違うなのだ!?

それを理解した上でご覧ください。

異世界、特に曹丕達が迷い込んだこの世界では、なぜだか、西洋式の文化が広がっている。

當然、建も洋式、部の細かい作りも洋式。部屋も洋式だ。

曹丕はシンの部屋の前で止まっていた。

曹丕はドアノブというものが苦手だったのだ。

正確には、音を立てずに靜かにることが苦手だった。

その構造から推測するに、ノブという部分を回す事で、扉の引っかかりを外しているのだろう。

その留めを外す時に生じてしまう音。それを消して開ける事ができるだろうか?

曹丕の額から汗が落ちていく。

曹丕は深呼吸を繰り返し、高まる鼓を押さえつける。

そして、ゆっくりとドアノブを回す。

『カッチ』

無音ではなかった。

しかし、可能な限り、小さな音でドアを開ける事に功した。

その功をかみ締め、曹丕は覚悟の言葉を口にする。

「いざ、尋常に勝負!?」

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