《覇王の息子 異世界を馳せる》曹丕達、話す

王の素質を持つ年 曹丕子桓。

彼は今―――

首をかしげ、考え事の最中であった。

頬には、大きな紅葉の形が赤く浮かび上がっていた。

「はて?なぜ、夜這いは失敗したのでしょうか?」

後ろでは、関羽と直家がお茶を啜っていた。

「若い」と小さな聲で言ったのはどっちだろうか?

「やはりここはシン殿、本人に聞きに行くべきですね」

そう言って部屋を出ようとした曹丕は関羽と直家に止められた。

文字通りの力づくで強引にだ。

馬上の戦い。一騎打ちにおいて、敵將を無傷で捕縛する技を有す関羽。

合戦において、矢もつき、刀さえ折れた狀態でも敵を仕留めるを有す直家。

この2人に押さえつけられ、技という技をかけられ、痛みに思考が停止し、

次に絞め技で意識が停止していった。

曹丕は意識が落とされる直前で解放された。

が痛む。2人の技によるもの・・・・・・というよりも単純に大の男二人掛かりで押しつぶされた痛みのようだ。

をほぐしながら立ち上がった曹丕は、こう前置きをした。

「さて、冗談はさておき・・・・・・」

瞬間、2人の殺気が部屋に充満したが、曹丕は気にした様子がない。

曹丕の場合、普段の様子が様子だけに、どこまでが冗談なのかわかりずらい。

「これから、我々はこの國の中心部である都を目指します。今日中に出発すれば、明日には到著する予定らしいのですが・・・・・・どうしますか?」

「なにがどうしますのなのか?」とは2人は聞かない。

曹丕が言っているのは、この村の事だ。

最初は山賊退治の依頼から始まっているのだが、そもそも山賊など存在していなかった。

山賊に扮した連中が、曹丕たちの向を探るために、この村で暴れていたわけなのだが・・・・・・。

その真相を話すべきか?話さないべきか?

「當然、村人たちには黙っておくべきでしょ」

発言したのは曹丕だ。ほかの2人も黙って頷く。

今、村人たちは曹丕たちが山賊を追い出してくれたと勘違いしている。

勘違いし、喜んでいる。村を上げての祝杯が行われている。

さて、それで「原因は我々にありました。ごめんなさい」と発言すればどうなるだろうか?

せっかく、勘違いしてくれているのならば、そのままにしておこう。

そして曹丕は続ける。

「元々、我々はこの村が山賊に襲われている事に違和をもっていました」

曹丕は確認するのに2人をみる。2人の表は當然、當たり前の事を言わんばかりのものだった。

「それでも、各々方は知らないふりをして山賊退治という茶番を請け負いました。さて、各々方の本當の目的はなんだったのですか?」

関羽は―――

「私は曹丕殿の部下という立場ゆえ、曹丕殿の命令には従います。が、しかし・・・・・・」

「しかし?なんでしょうか?」

「この世界の武を見てみたい。この世界の若者が我らの武に順応するか試してみたい気持ちがなかったと言えば噓になりますな」

「では、どうでしたか?気になる者は?」

「5人ほど、筋が良い若者がいました。農作業で鍛え上げられた膂力も中々のものかと」

「なるほど。わかりました。では、直家殿はどうでしょうか?」

直家は―――

「俺?俺はだな。単純に報酬がおいしそうだったからだな」

「金銭ですか?」

「そうだ。悪いか?俺はよぉ、こう見えて貧乏でな」

直家は笑いながら言う。だが、次の瞬間には真面目な表に変わり、こう付け加えた。

「俺の世界じゃ、一番強かったのは金持ってる奴だったからな。それも経済を獨斷でかせるような化けなのさ。それこそ、『世の中、銭』の極みだぜ」

「・・・・・・ご自もそうありたいと思われるのですか?」

「いやいやいや、そういう奴を見てきたからって話であって、俺が言いたいのは、お金は大切って一般論なのさ。俺の趣味は金儲けより、節約なんだぜ?」

「―――わかりました。マキビ殿はどうでしょうか」

「そうですな・・・・・・」

、今までどこに潛んでいたのか。曹丕の聲でマキビは姿を現した。

部屋にいる全員は、事前にマキビの存在に気がついていたのか、驚いた様子は皆無であった。

「私は軍師ですから、知恵を貸せと言われれば喜んでお貸しします。ですから、今回の目的は強いて言えば、娯楽ですかな」

「娯楽?ご自が楽しみたいがためだったと?」

「そう言ってしまえばも蓋ももない事ですが、軍師という生きは、常に知略が湧いて溢れている者で、どこかしら心の奧では戦を求めてしまう。自らの知を戦場に乗せてみたい。そういう質が軍師にはあるのでございます」

「では、今回の戦は楽しめましたか?」

その曹丕の問いかけは予想外だったらしく、マキビは聲を出して笑った。

「まだまだ、ですな。私の脳髄は有り余っていますよ」

マキビはそう答えた。

「なるほど、なるほど」と曹丕は呟きながら、暫く虛空を見つめたのち、口を開いた。

「では、こうしましょう」

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