《覇王の息子 異世界を馳せる》曹丕と曹昂

「頼めますか?」と曹丕。

「無論、払いこそ、この関羽の務め」

「典韋、関羽は頼む」と曹昂。

「うむ、関羽が相手ならば手加減は無用ですな」

関羽は青龍偃月刀を構えて前に出る。

だが、典韋は後ろに下がり距離を取る。

分りやすい図だ。

接近戦に持ち込みたい関羽。 距離を維持したい典韋。

得意の距離は、互いに真逆なのだ。

「……では、こちらから」と典韋は小刀に魔力を込めていく。

薄らとしたが小刀を包む。強力な電気が小刀を発させている。

その威力は――― おそらく―――

そして―――

典韋は放った。

の轟音。 小刀は音を置き去り、速の域へ。

だが、それは関羽には屆かなかった。

青龍偃月刀の僅かなきで典韋の小刀を弾いたのだ。

「なっ!」と典韋は驚愕する。

しかし、すぐに典韋は気づいた。 関羽の周りにビリビリとが走っている事を。

「なるほど、擬神化……信仰を得ずとも、人ののまま神の領域まで進むか!関羽!」

「なにをわけのわからぬ事を!」

2人ぶつかった。

雷雨が離れていくように関羽と典韋が鳴らす轟音が離れていった。

殘ったのは2人。無論―――

曹丕と曹昂。

2人きりだ。もう邪魔はらない。

2人は同時に剣を抜いた。

「結局は我1人、軍も持たず、剣を振るう。それもまた―――」

「父上の戦い方に違いない」

曹昂の聲に曹丕は続けた。その聲に曹昂は驚いた。

「答えるか曹丕。剣だけではなく言葉もわすか?」

「無論、意識を剣に載せて問答するならば、聲も載せましょう」

「戯言を」と曹昂は笑った。

「父上の生き方を否定して進む、お前に何が語れるものか!」

曹昂が剣を振るう。

曹丕はそれをけた。

「私は父上とは違う。地と人を開拓する先駆者ではない」

「だから、王を目指さず、帰還をむか!」

「私は覇王の息子だから……そう育てられたから……」

「未練だな。々しい奴め!」

「あぁ、未練だとも。執著するとも。國を捨てて、何が覇王か!」

再び距離が離れる。

「貴様、自分は生まれもっての覇王と言うか?」

曹昂は笑う。

「ならば、私のは―――新な王になろうとする私は――――諦めか?」

やはり……曹昂は笑う。

だが曹丕は―――

「否、斷じて否」

「なっ!?!?」

「そのも、私のも父上から―――どちらも等しく曹からけ継いだ。どちらも間違いではありません」

その言葉と同時に曹丕は剣を振るう。

曹昂は、曹丕の言葉に狼狽えたのか、反応が遅れる。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

2人の男がいる。

1人は立ち。1人は倒れている。

立っているのは曹丕。 倒れているのは曹昂だった。

何か言いかけた曹丕を―――

「行け曹丕。どっちが正しいではない。立っている者に倒れた者の聲など聞こえぬものだ。聞こえてなるものか」

曹昂は促す。

「ほら、迎えの者も來たぞ」

曹昂が指差した方向をみれば関羽がいた。

「……兄上、全てが終われば、再び……」

「……愚か者め」

曹昂はそれだけ言うとゆっくりを目を閉じた。

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