《覇王の息子 異世界を馳せる》やはり、覇王の息子は異世界に馳せる

神は、その存在を失った。

もよだつ醜い第二形態に変する事もなく

神すらる真の黒幕が登場する気配もなく

を失い、神だけの存在になった神が、誰かに取りつき、新たなを手にれた・・・・・・と言うこともない。

ただ、當たり前のように神は敗れ、死んだのだ。

しかし、敗北と言うのであれは、どの時點で神は敗北していたのだろうか?

戦爭の、真っ只中、敵兵が総司令である神の元にたどり著いた時點で勝敗は決まっていた?

いや、それ以前だ。

本來ならば、敵勢力に攻め込まれ、首都が包囲された時點で勝敗は決まっていたはずだ。

ただただ、この話が神に挑む話だと人々が認識してしまう事で、その事実を忘れてしまうだけなのだ

つまり、最初から神には勝ち目など一片たりとも存在せず―――

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「兄上、生きておられたのですか?」と曹丕

「幸いにもな……」と曹昂

互いに暫しの沈黙。他の者どもは離れ、様子を窺うだけだった。

最初に沈黙を破ったのは兄の曹昂からだ。

「……曹丕、今なら帰れるぞ」

「帰れる?どこにでしょうか?」

曹昂は空を指した。しかし、そこには何もない。

そのはずだった……

だが、目を凝らせば、僅かな違和に気づくだろう。

そして、それに気づいてしまうと、無視できない確かな違和

「空間が、僅かに捻じれている?」

「その通りだ、曹丕。今、神が《渡人》を呼び寄せるための裝置を弄った」

「……?しかし、こちら側からは、元の世界に戻れぬという話だったのでは?」

「そうだ。かつて、神はこの世界を縄だと例えた。數多く存在する『歴史の可能』をワラに見立てて、それを集約させたのが、この世界だと……その例えで言うなら、先ほど縄をといてワラに戻しておいた」

「なんと!?」

「だから、その場から前に踏み出せば、元の世界に戻れる……いや、違うな。限りなく元の世界に等しい場所へ行ける……だな。しかし、不安定な狀況だ。急ぐが良い」

「限りなく、元の世界に等しい場所……」

「その通り、曹の息子として、覇王の息子として、魏を、漢を、導くがよい」

曹丕はその言葉を聞き終えると、曹昂に向けて手を差し出した。

その意図を読み、曹昂は曹丕の手を握り返した。

次の瞬間、曹丕は腕に力を込めて曹昂を振り回した。

「なっ!」と驚く曹昂をそのままに両者の位置がれ変わる。

そして、そのまま、曹昂は元の世界に戻るための境界線ラインを踏み越えた。

驚いたままの曹昂に向け、曹丕は首を橫に振った。

「曹丕!なぜだ?貴様は、貴様こそが元の世界に執著していたはずでは?いや、まだ間に合う。早く來るがいい!」

「いいえ、兄上。魏國が求めているのは、この曹丕でも、曹昂でもございません」

「なにを?」

「魏國が求めているのは曹なのです。あの日、渡の戦いにおいて曹は死ななかった。そういう事にすればいいのです」

「おまえ……私に……曹になれと言うのか!」

「その通り。では、典韋どの、兄上を…いえ、父上の事を頼みましたよ」

急に話を振られた典韋は、かっかっかっと笑い飛ばし「意に」と曹昂の元に向かった。

「曹丕!曹丕!」とぶ曹昂の姿はを失い、やがて薄れていった。

「父上、私はあくまで太子なので、暫くこの世界を満喫してから帰ります。ではでは、また、あちらの世界でお會いしましょう」

消えゆく、曹昂に曹丕はそう言って別れたのだ。

自分は、この世界に殘るが、必ず帰るので心配は無用だと……

歴史という巨大な縄は解かれた。今は、儚い糸のように揺れている。

いつ切れると知れぬ糸の上。

それでも――― 彼らならば―――

あるいは―――

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