《鸞翔鬼伝〜らんしょうきでん〜》天命.三 偶発〔參〕
今、君主・織田信長はいつもの“遊び”から戻り、夕餉を食べている。
自分はといえば、朝食べた握り飯一つだけで腹がぺこぺこ。
〈…腹が減って目が回る…〉
そう思いながら座っている。
池田勝三郎、佐々蔵助らが毅然として座っているのに対して、翔隆はゆらゆらと揺れていた。
「翔隆、どうした」
信長に聲を掛けられ、翔隆はびしっとする。
「ハハハハハ、そうかしこまる事はない。お主は、お主のやりたい様にすれば良いのだ」
「はあ…」
「時に、一つ尋ねるが……」
「何でしょう」
幾分、気を和ませて答える。
「―――この世を、どう見る」
「え…」
その問いに小姓衆それに塙直政らが翔隆に注目し、耳をかたむける。
信長は、重い口調で更に尋ねた。
「今のこの世を、どう思う?」
 家臣としてこれをどう答えるかによって、翔隆が使える者か否か又、どういう気質かが判ってくるのだ。
〈…義と同じ事を聞くなあ…〉
翔隆はし首を傾げて考えた後、口を開く。
「世、ですね」
「うむ。戦続きじゃ」
「戦を起こす事…。大名達が…領地を増やすそうと…利益を得ようとして〝無駄〟な爭いばかりするから…戦ばかり起き、上手くいかないんだと思います…」
「では、どうすれば良いと思う」
聞かれて、翔隆はしばし考えてから答える。
「を張っていないで、戦を失くそうと思い戦をすれば自然と人心…民や武將が従うだろうし…。何より自分の領地がどうなっているか、民草は何をしているのかを知らなければ、とても平定なんて出來ないだろうし…。民の心を捉えて地の利を知り盡くしていれば、どんな戦にも勝てます。それも出來ない様な族ばかりだから、滅びていくんだ……と、思います」
使える!
誰もが思い、驚嘆した。
とても、ただの平民とは思えない。
その上、腕も立つ。
信長の目がねは、確かであった。
「うむ。よう、そこまで見抜けるものだ」
「いえ…あの…いつも義に言われてましたから…。あっ! 義をすと書くんですけれど…」
「それは誰だ?」
「あ、俺の刀の師匠で…。い時からよく、各地の事を教えてくれました。どの大名も、天下は取れないと言っていて…」
翔隆は焦って説明する。
「ほう…」
信長は、目をらせた。
こういう時は気に障ったか、興味を待ったかのどちらかだ。
「天下は取れぬ、か」
「はい。甲斐の武田は國造りに向いてるし、相模の北條は國を守るのに忙しい、今川は野心しかあらず。利は〝上出來ない〟。九州の島津などは例外だ、と……」
実に、的を得た言葉である。
だが〝凡人〟ではそこまで見抜けまい。
「翔隆、今度そ奴を連れて參れ」
「はあ…」
翔隆は気のない返事をした。
今度とは、いつになる事やら…。
連れて來るという事は、主君を持った事が、ばれるという事なのだから……。
ギュルルルル…
ふいに低い音が、一同の耳を通過した。
翔隆の腹の蟲が鳴ったのだ。
「プッ」
 皆、思わず吹き出し掛けた。
笑いを堪えなかったのは、信長だけ。
「ハハハハハ! さては九郎め、飯を食う間も與えなかったな?」
「い、いえ違うんです! 頂きましたが…」
翔隆はもじもじとする。
代わって直政が、苦笑気味に答えた。
「こ奴、臺所ののにくれてやったそうで」
「自分の飯をかッ!」
「意」
「ハッ! アハハハハハ! そうか、今後は下の者にもたらふく食わせんと大事な〔軍師〕が飢え死にするか!」
実に楽しげに笑いながら、信長は翔隆にも湯づけをやった。
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