《僕は彼に脅迫されて……る?》第1話 を知る
  よく晴れた朝に僕こと、柳瀬太やなせたいようは自分を変えるべくジョギングをしていた。
なんで走ってるかって?それはなんとなくだ。
  ってこともなくて、今日から僕は高校生になる。中學の時の黒歴史は封印して、新しい僕へと変わるべく、まず始めたのがジョギング。というわけだ。しかも中學を卒業したあたりから。
うん。朝日を浴びながらジョギングをするのは気持ちがいいね。なんかもう生まれ変わった気分だ。ここ最近、毎日僕はこう思っている。
走ると人は変わると言うけれど(たぶん)うん、変わると思うよ。だってこんなにも清々しい気分になってるんだから。
 ジョギングをし始めて數分経った頃、僕は尿意に襲われた。汗もかいてきたし、休憩がてら用をたそう。
そう思った僕は、近くにある公園に立ち寄り男子トイレへと足を運んだ。この公園はいつも休憩に使っているけれど、トイレはあまり使ってない場所だ。
今日は學式もあることだし、帰ったら念りにマッサージをしないとななんて考えながら男子トイレへとると、人の苦しそうな聲が聞こえた。
「あっ……ん……うぁ……」
今にも死にそうな聲がする。これは大変だ。救急車を呼ばなきゃ!と思った僕だったが、ジョギングに攜帯は必要無いと思って持ってきて無かった事に気づき躊躇する。
くそっ、なんでこういう時に限って!僕ってやつは!
自分を叱るけれど、そうしている暇はない。今にも死にそうな聲を出している人が居るんだ。まずは僕にも出來ることをしよう。聲はどうやら一番奧の個室から聞こえる。まずはその人の容態をみないと!
ある程度の応急処置の仕方は中學で習った。僕にもそれくらいはできる。頼むからあまり酷くない狀態であってくれ!
僕はそう思いながら個室へと近づいた。近づくときに見えたのは開けっ放しの扉。良かった、扉が開いてるんならすぐに対応できるぞ。扉を壊さなくて良かったと心思いつつ、僕は一番奧の個室にたどり著いた。
そして、僕が目にした景は……
自行為をしているの子の姿だった……。
「あ、えっと、あの……えと」
いや、待つんだ僕。もしかしたら自行為に似た何かかもしれない。けど、ろれつが回らない。というか、言葉が浮かばないし、発せられない。だってこんな経験初めてなんだもん。いや、こんな経験をする人自珍しいと思うけど!
僕が目にした、している景。それは、僕と同い年くらいのの子の自行為、(みたいな)だった。服をの上までまくり上げて、ピンクのって!何を実況してるだ!僕は!右手は部に、左手は満なって!だから何を実況してるだ!ん?あの嗅いでるのはタオル?どっかで見たような……
とにかく自行為、(みたいな)をの子はしていらっしゃった。
さらに驚くことに、そのの子はとびきり可かった。日本人に近い顔立ちからハーフと思われるその髪は、金髪でさらさらしてそうで。の付きもよく、出るところは出てて……丸見えで。ほっぺはりんごみたいに真っ赤っかで。萬人の心を吸い込みそうな大きな二つの瞳は、開眼したみたいに見開いていて……
「あ……あ…ああ……」
口は金魚みたいにパクパクしていた。
時間が止まればいいのになって僕は思った。そして、何かの間違いであってくれとも。
いや、だめだ僕。考え方を変えるんだ。いいことじゃないか!人が死にそうな聲を出していたんじゃなくて、悶えていた聲なんだから。大事にならなくて。うん。良かった良かった。人が倒れていたらどうしようかと思ったよ。ハハ。
よし、とじゃあジョギングに戻らないとね!
「えと、失禮しました」
會議中に間違えてってしまった平社員のように僕は誤った。
そして、何ごともなかったかのようにその場を……
「ま、待ちなさいよ…!」
「大丈夫。記憶メディアの類は持ってないし、このことは誰にも言わないから。それじゃあ…」
僕は勢いよく、立ち去った。
僕の言ったことは本當だからね?さん!もう會うことはないだろうから安心してね!
心の中でそう思いながら僕は、朝日が眩しい帰り道を全速力で走った。
☆
さぁ、僕は今日から高校生だ。朝には日課になりつつあるジョギングをして、気分爽快になったし、の子なんて見てないし、気分よく學校に行こうっ!
真新しいブレザーに袖を通す、うん。中學は學ランだったけど、やっぱり高校生にもなるとブレザーだよね!なんか大人っぽいし。
ブレザーを著込んでいざ學校へ。
僕の通う高校は僕の住んでいるアパートから徒歩數分というところだ。近からず遠からずと言えばいいのかな?
ちなみに、僕は一人暮らしをしている。親に頼みに頼みまくって、そりゃもう靴を舐める勢いで、いや、舐めてはないからね?
まぁ、頼んで、一人暮らしをさせてもらえることになった。理由としては通う高校が実家からだと遠いのと、僕自が地元にいたくなかったからだ。中學の黒歴史を封印するためには仕方ないよね。
僕と同じように今日學式を迎える予定の學生が通學路を歩いている。まだ、一人で歩いているのが多いのを見ると、この時點ではグループを形してないみたいだ。そりゃそうだよね。同じクラスになるとも限らない相手にこのタイミングで話すやつなんてそうそう
「よぉ!お前も新生か?」
いるみたいだ。
「うん。そうだけど?」
心びっくりしながら答える。
まさかこの僕に話しかけてくれる人がいるなんて。
それと、対人コミュニケーションの練習をしといて良かった。オドオド答えたらせっかくのチャンスを無駄にするからね。
「そうか!なら一緒に行こうぜ!」
僕に話しかけてくれた男の子はそう言うと、僕の隣に並び、一緒に歩き出す。この人、すごい対人スキルの持ち主だ。
「おっと自己紹介が遅れたな。俺は第一中學出の辰巳太郎たつみたろうだよろしく!」
「僕は柳瀬太。こちらこそよろしく」
差し出された右手を、僕も右手で握る。握手なんて久しぶりだ。
「おう!よろしくな太!」
「いきなり呼び捨て?」
「別にいいだろう?太も俺のことは太郎って呼んでいいからさ!」
「分かったよ太郎」
なんか、ハイテンションな人だな。こういう人がどんどん友達を作れるんだろうな。
「で、太はどこ中出なんだ?」
「え?僕?」
一瞬ドキッとする。けど事前に答えを用意している僕は、それを冷靜に答えた。
「ここらへんの中學出じゃないから言っても分からないと思うよ」
「へーそうなのか。てことは一人暮らし?」
「てことはの意味が分からないけど、うん。一人暮らしだよ」
僕がそう答えると太郎は、僕に羨の眼差しを向けてくる。
「うお!まじかよ!いいなー!一人暮らし!」
「そうでもないよ。炊事洗濯は自分でやらないといけないし、朝も自分で起きないといけないし」
一人暮らしはメリットがある反面、デメリットもある。それが炊事洗濯を自分でやると言うことだろう。これがまた非常にめんどくさい。
「まぁでもさ一人暮らしだといろいろできんじゃん!」
「いろいろ?」
僕がそう聞くと、太郎は目を輝かせて饒舌に言う。
「の子とか連れ込めんじゃん!」
「いやいやその前に、僕が彼なんかできるはずないじゃん」
確かに太郎の言う通り、一人暮らしだといろいろできる。そのうちの一つがの子を堂々と呼べるということだろう。なぜって?それは想像に任せるよ。
でもそれは、カーストの高い人だけだ。僕みたいに見た目も中…も平凡なやつに彼どころか、の子の友達ができるはずがない。の子を部屋に連れ込むなんて夢のまた夢の話。
「あ、そうだよなー」
うん。そうだよなってどういうことなのかな?
「俺らじゃ無理だよなー」
あっ、なんか太郎とはいい友達になれそうな気がする。でも、太郎は僕と違ってイケメンとまでは呼べないけど、そこそこのルックスがあると思うんだけど。
「俺も一人暮らしだったとしても連れこむの子がいねー」
悲観そうにする太郎。うん。やっぱりいい友達になれそうだ。
「じゃあ僕らは同士だね」
「あーそうだな!」
一日で二度、同じ人と握手をするという出來事を僕は験した。なんか、同士っていいね。
「太郎〜太郎〜!」
「げ、咲月!」
「げ、とはなによ。げとは。置いてかないでって言ったじゃーん!」
「お前が遅いのが悪いんだろ」
「おばさんと話してただけじゃん!」
「え、えーと」
「おっと悪いな。紹介するぜ。こいつは咲月。まぁなんていうかあれだ腐れ縁だ」
「腐れ縁とは酷いわね!あっごめんね。太郎の友達……になったのかな?こいつ馬鹿だからすぐにいろんな人に話しかけるのよ」
「馬鹿とはなんだ!」
「馬鹿だからそう言ったのよ。あ、自己紹介が遅れたね。私は前園咲月まえぞのさつきこいつの馴染で監視役だから。よろしくね!」
彼はニッコリと満面の笑で僕に自己紹介をした。
「僕はさっき太郎と友達になった。柳瀬太こちらこそよろしく」
僕もなんとか返すことに功。
こんな可い子に自己紹介をする日が來るとは思わなかったよ。
ていうか太郎?馴染って言った?
この黒髪ロングニーソの笑顔がキュートな彼が?
リア充がっ!
「お、おいどうしたんだよ太?そんな苦蟲を食ったような顔して」
「太郎とは仲良く慣れなさそうだ」
「急にどうしたんだよ!?そんなこと言うなって!仲良くやろうぜ!」
肩を組んでくる太郎。格がいいな太郎は。リア充だけど仲良くなれそうだ。
☆
「えーと、あったE組か」 
掲示板に張り出されているクラス名簿を見て、僕がどのクラスなのかを確認する。A組から見ていったから、途中で僕の名前がないんじゃ……って思っちゃったよ。
「太!何組だった!?俺はE組だったぞ!」
「僕もE組だったよ」
「まじか!やったな!」
太郎は嬉しいのか、笑顔だ。たぶん僕もとびっきりの笑顔をしていると思う。だって友達になったこと同じクラスになれたんだから。
「私もE組!やったね!」
「あーそうか」
どうやら前園さんも同じクラスみたいだ。すごいな。奇跡みたいだ。友達と話せる異と同じクラスになれるなんて。けど前園さん?そろそろ解いてあげてもいいんじゃないかな?プロレスなんて見ないから技名なんて分からないけど、さっきからタップしている太郎がそろそろ落ちそうだよ。
そんな景を微笑ましく見ていると、
「おい助けてくれ……!太……!」
ん?今のは幻聴かな?ごめんね太郎。僕、痛いのはいやなんだ。
僕の耳に、喧嘩んとまでは言わないけど、言い爭ってる聲が聞こえた。
『らないでくれる?汚れるわ』
『てんめぇ!調子にのんなよ!』
『私は事実を言っただけよ。調子になんてのってないわ』
『このぉ!』
『何をする気なの?暴力?まぁ殘念。學早々停學なんて』
どうやら、お嬢様みたいな子と、それにちょっかいでも出した男の子が言い爭ってるみたいだ。
「教室に行こうぜ太。ここにいるとめんどくさそうだ」
「そうだね」
いつの間にか開放されていた太郎と、前園さんと一緒に教室へ。太郎の首には絞められた跡がまるで、首みたいに殘っていた。この時、前園さんの機嫌は損ねないようにしようと僕は誓った。
☆
教室で今日行われる學式の説明を簡単にけたあと、僕たちは育館に移していた。今年の新生は例年通りみたいで育館にすっぽりと収まる。特に席順とかも無いみたいなので、僕は太郎と並んで座っていた。男はさすがに別だったけど。
「噂によると、今年の新生代表はとびっきり可いらしいぜ」
「どこから仕れたんだよその報」
太郎は仕先など詳しく話していたけど、興味のない僕は聞き流すことにした。太郎が報通、とくにの子のことに関してはすごいと言うのは分かった。
「しかもうちのクラスらしい。1つ席が空いてただろ?新生代表だから居なかったんだな」
「よく見てたね」
「それと、朝の言い爭いはその子のようだ」
「へー」
たわいもない會話をしているうちに、式が始まった。
いろいろな挨拶がされる中、太郎注目の新生代表挨拶が始まろうとしていた。
『うぉぉ』
育館の至る所から、ため息とでもいえばいいのか、嘆の聲があがる。どうやら、太郎の報通り新生代表は可いらしく、それに見とれて、聲をらしたようだ。
僕は朝にジョギングをしているせいか、退屈な式で眠たさがMAXで新生代表を見る余裕がなかった。けど、マイクのスイッチがり、新生代表が挨拶を述べて、凜とした聲が育館中に響きわたった時、眠気が吹っ飛んだ。なんていい聲なんだろうと思った。
僕はその聲の主に興味を持ち、太郎の言う可いさがどれくらいなのかを確認しようと顔をゆっくりとあげた。
下半は、テーブルで隠れて見えない。へそあたりから僕はゆっくりと視線を上げる。
くびれている腰、制服の上からでも分かるの長合。手や首は白く、き通ってるみたいだ。顔もほかの部位に比例するようにしく……しく……
僕は……目を疑った。そして、忘れようとした記憶が鮮明に蘇る。
朝見たが、自行為、(みたいな)をしていたが、堂々とした格好で、凜と挨拶を述べていた。
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