《お姉ちゃんがしいと思っていたら、俺がお姉ちゃんになったので理想の姉を目指す。》41話 真っ赤に染まるは誰?!

硝煙の臭いが鼻につく。嫌な臭いだが、嗅いでいたくなるような不思議な臭いだ。ガソリンや燈油の臭いに近いものがある。

俺は華麗にスタートダッシュを決める。何事も始まりが肝心だ。特に障害競爭では走るだけでなく、名前の通り様々な障害が存在する。ただ走るのが得意でも途中の障害で苦手なものがあればそれだけで手こずるし、中にはその障害が得意としているもので、そこをいち早く終わらせリカバリーないし下剋上を果す者もいる。

俺は萬能のイケメン(自稱)なので特に苦手なものはない。つまりどれも普通にクリアーすることができる。が、逆に言えばどれも突出して得意というわけではない。そうすると得意としている者には劣るわけだ。であればだ。若干足が速いというのを活かし、スタートダッシュで如何に他の奴らと距離を離すかが勝敗を決める。なのでこのスタートダッシュはとても大事だ。

俺は風にな~れ~とでも言うじで周りを置き去りにいち早く最初の障害に辿り著く。ここまでは想定通りだ。

最初の障害は平均臺。中々に細い足場は安定がなく、しでも気を抜き通り抜けようものなら下へドン。それはまだいい方で、落ち方を間違えれば割である。 割 で あ る。

男ならわかるだろう。如何にそれが強烈かつ恐ろしいものかを。俺は小學校の時に一度その割をやらかしたことがあるので猶更だ。今でも平均臺はし恐怖がある。だがしかし!ここで怖気づいては男が廃るというもの!

ついさっき、5秒くらい前に何としてでも1位を取ると決めたのだ。それがたかが平均臺如きで我が歩みを、覇道を妨げるとは何たる不敬!萬死に値する!つーことでこの平均臺君は破棄だ破棄!

だが殘念ながら破棄するなんてことが出來る程俺の権力は高くないので乗り越えるしかない。なんと世知辛いことか……。

俺はゴクリとを鳴らしながらも平均臺上を歩く……ある……く……?

馬鹿野郎!なんで歩く必要なんてあるんですか!!男なら……男なら駆け抜けろ!ちまちま歩いてなどいられるか!こうしてのろのろへっぴり腰してたら次々と後続が追い付いてしまうのだ。折角のスタートダッシュが活きない。

男なら背負わなあかん時があるんとちゃうか?

そう、トラウマっちゅーもんがあったとしても、そいつを背負い前を向いて進んでいかんとあかんちゃうか?なぁ、そうだろ俺様よ!

俺は足に力をれ走る。

MATAWARI?知るかっ!!主人公補正というものが世の中にはあってだな。今の俺は正しく主人公!ていうか、俺の人生で俺が主人公だ!だとすればその補正は俺にも適用されるはず!主人公がこんなところでMATAWARIをして「あ~るぁ、ヤダ~」って漢になるなんてことはあり得ない!俺が……俺がガ○ダムだ!!

周囲にどよめきがはしる。

なんてったって平均臺の上を走ってるわけだからな。普通そんな恐れ多いことをするやつなんていないからな。だが俺はやる。俺だってなぁ、やる時はやる男なんだよっ!

「っし!」

途中グラついて「ひぇっ……ピタ」な場面もあったが俺は走りぬいた。そしてそのおかげで後続とはまたし差が開いた。しかしここで安心してはすぐに追いつかれ追い越されることだろう。油斷はできない。かの黃金の王様は慢心するが故に負けてるからな。俺は慢心を捨てるぞ。

次の障害は縄跳びだ。縄跳びは計10回飛べばOKだ。普通に飛べば10回なんてまぁすぐだけれど、ちょっと頭を捻れば普通飛びなんて非効率なことはしない。

「うおおおぉぉぉぉ!」

俺は縄を手に取るとその場で駆け足をしながら縄を回した。

――そう。この縄跳びだが、飛び方に制限はない。別に普通飛びでやれなんてルールはないのだ。であればより速く飛べる方法を使えばいいわけで、それはこの駆け足飛びというわけだ。

この縄跳びの計測上縄が一回転することに一回とカウントすることから、如何に腕を回す効率が良い飛び方をするかで勝敗が決まる。二重飛びでもいいのかもしれないが、そこはやはり安定を取る俺だ。二重とびだと滯空時間が長くなるし、飛び上がるスパンを短くすれば失敗に繋がってしまう。それはつまりロスになる。

RTAでもあるだろう。冒険をするのは取り返しが付かなくなった時だって。今はまだ冒険する時ではないのだ。

ここでも最速で縄跳びを終えた俺は次の障害に辿り著く。次はバットだ。バットで校舎の窓を割って歩いたり、バトルロワイヤルが始まるというわけでもない。所謂ぐるぐるバットである。ぐるぐるバットを知らない?ただバットを地面に垂直に當て、柄の部分に額を當て10回転するだけだ。するとどうなるか?目の前がぐわんぐわん。脳が震えるぅ~。

三半規管がやられ真っ直ぐ進むことができなくなる。しかしそこは気合だ!気合さえあれば何でもできる!真っ直ぐ進むという強固な意志さえあれば俺たちは進めるんだ!

「あちゃー……真のやつふらふらだな」

「多分本人は真っ直ぐ進んでるつもりなんだろうね」

「可哀そうだね」

「可哀そうって、みーちゃん何気に毒吐くよね」

「気のせいだよ♡」

お前ら全部聞こえてるからな。

途中友達の心無い會話に俺のハートはし傷をつけられたが、それでも何とか1位をキープしたまま最後の障害に辿りついた。

最後にして難関……いや難関というか運ゲー。こればっかりは天に祈るしかない。その恐ろしい最後の障害の名は『四次元BOX』。青い貍がポケットをまさぐり「でぇたぁー!」なんてやってるあのポケットのBOX版だ。中には4次元空間が広がっている……なんてことはないが、様々な指令書がっている。そこから取り出した指令通りに行し、ゴールまで向かうというのが最後の障害である。

一見大したことがないように見えるかもしれないが、これが本當に曲者なんだ。とある裏ルートからリークされた報によると、あの中には中々"えぐい"指令がっているらしい。基本は誰でもクリアーできる容らしいのだが、人によっては行することがとてつもなく勇気がいるものがあるとのこと。

流石に容までは教えられないとのことだが、それでもその"えぐい"と呼ばれる指令があり、それにあたってしまうと大変だということ。

まぁ、コメディアン的には"えぐい"指令が來る方が味しいが……うむ、両取り出來ればそれにこしたことはないのだけれど。何がこようが関係あるまいか……そう!何が來ようと俺の障害たりえぬ!

「ええい、ままよっ!」

俺は未だふらふらとしながらもBOXの中に手を突っ込む。中には紙の。それなりの枚數がこの中にはっているらしい。

ここで俺の経験談だが、こういうくじのようなものはえてして選び始めるといけない。選ぶ時間がそもそも無駄であるし、選べば選ぶほどセンサーていうの?そんなんが働いて寧ろドツボと。どうせ何がっているのかわからないのだし、ここは一つ男らしく引くのがいいだろう。

「さぁ!どんな指令が!!」

俺は勢いよくシュバッと指令書を取り出す。

そして指令書を開き中に目を通す。そこに書かれていた容は……。

「……ん?」

書かれている文字は理解できる。日本人だし日本語読めるよね。だけど書かれている容が良くわからないのですが。

『嫁を連れてゴールする』

嫁?

よめ?

YOME?

Your own meets everyday?

「なんでだよっ!!」

俺は指令書を地面に叩きつけたい衝に駆られるが何とかそれを抑える。

おかしいだろっ!

なんでそんなのがってんだよ!明らかにおかしいだろうが!普通そこはお父さんやお母さんを連れてくるとかじゃねぇの?!中學生にもなってパパンやママンと仲良くお手手を繋いで恥ずかすぃ、プークスクスと笑われるところまでだろ!俺的には味しい展開というやつだ。

だがな!これはあかんだろ!下手するとこれは在學中妙なレッテルを張られることになる!……既に不愉快なレッテルが張られているが……。

嫁。

普通に考えれば奧さんのことだろう。まだ學生でしかも、18歳未満の俺では結婚はできない。凄いお家柄というわけでもないので婚約者なんてのもいない。つまりここでいう『嫁』というのは彼やそれに近しい人ということになるのだろう。

これってただの公開処刑じゃね?

學校さんよ、あんたは何を考えているんだ。こんなの……こんなのおかしいやろがいっ!

「どうする……どうする俺……」

既に指令書を取り出してから1秒も経過している。本來であれば見た瞬間ダッシュ余裕なのですけど、あまりにも突飛な指令で俺の頭がいていない。というかパニックだ。

そうこうしているうちに徐々に開いた差はまってくる。このままでは俺は1位を取ることができない。どうする、どうするんだ俺。ここは見なかったふりをしてもう一度指令書を引くか……?いや、それにしては人目が付きすぎている。一応ルール上は反則は強制ビリという扱いだ。であれば引き直し行為は反則に當たるため俺の目的を達できなくなることになる。

俺の學生生活をある意味捨てるか……それともここで甘んじてビリをけ止めるか……。

俺は……何を求めている。

俺が求めるもの、それは明るく楽しい學校生活。その中には苦い経験も楽しいことも、泣きたいことも沢山ある。それこそが學校生活だ、青春だ。安牌で生きるのなんてのは社會人になってからでいいっておばあちゃんが言っていた。

だったら決まってるだろう。

俺がここでやるべきこと、それは……!!

クワッと俺は目を見開く。(ここまで0.5秒)

そして俺は指令書を握りしめある場所へと走る。

「なんか真がこっち向かってきてるよ?」

「あー、みーちゃんの言葉に怒ったのかも」

「えぇ私が原因なの??」

「それ以外考えらないな」

「わぁ!誠治までぇ!」

「……ふぇぇ、荒井君の顔が怖いよっ?」

「大丈夫澪ちゃん。私があなたを守るわ」

「川田さん……!!」

目的の人の前までやってきた俺。目の前ではなんか不愉快な茶番が繰り広げられているが、俺の目的はただ一人。

「頼む……俺と一緒に走ってくれ」

俺はその人に向かって右手を差し出す。

そいつは一瞬目を丸くするが、すぐにいつものような笑顔を浮かべた。

「いいぜ・・・」

目的の人、嫁、それは誠治だ。

言っておくが俺はホモではない。ノーマルにの子が好きだ。出るところは出てて母に溢れるが好きだ。であれば何故男であり、親友であり、馴染である誠治を選んだのか。

嫁とはパートナーである。

パートナーとは言い換えれば相棒だ。

俺にとって人生での長い相棒、つまりは一番の親友は誠治以外に考えられなかったのだ。故に俺は誠治を選びゴールまで走ることに決めた。ホモに対するレッテルの言い訳もカバーし、を連れて走ることを回避し、かつ1位も逃さない。素晴らしい。

俺はチラッとだけ琴音を見る。

もし、もしだけれど、で連れていくことになるとしたら琴音なのだろうなと思う。として好きかどうかはわからないが、嫌いではない。一緒にいて楽しいし元気ももらえる時もある。偶に煮え湯を飲まされる時はあるが、それでも一生の友達ではいたいと思う。

巷では俺と琴音は夫婦であるという誠に憾な噂が流れている。

俺がここで琴音を選んでゴールすればその噂を更に強めてしまうことになる。それは俺もそうだし、琴音もんではいない。茶化すのは好きだが茶化されるのは嫌いなんだ。

ただまぁ……二人でゴールに走ってみるのもありっちゃありだったんだろうな。

しだけ後ろ髪を引かれる思いがあるが、誠治を連れゴールまで突っ走った。

結果は1位。

し決心するまでの時間が長すぎたのだろう。ゴールしてすぐに2位のやつらがってきたので割と危なかった。

取りあえず俺の目的は達だ。

1位取ってやったぞ!俺はまだまだ戦える!!

因みにその後、誠治と真と琴音を巡る三角関係があると噂になった。とあるたちからは黃い聲を上げられイラスト化もされたとか。尊い。

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