《朝起きたらの子になってた。》旅行 part26

整理と著替えを終えてから、忘れはないか確認して、部屋をチェックアウトした。お土産も昨日のうちに買っておいたので、そういった心配もない。

青森を飛行機で出発する時間は晝過ぎなので、それまでの間が暇である。その暇な時間をどうしようかと考えた結果、空港まで行って大きな荷を預けてから、近場で時間を潰そうと決めた。

そう決まったので、俺達はホテルから空港行きのバスが出ていたのでそれに乗った。俺は一番後ろの席に座り、紗香が俺の右側の席。母さんと姉貴は1人用の席に座った。俺の左側に座れば良いのにと言ったのだが、こういうのは1人席の方が良いと言っていた。

そんな事もあり、バスがき出すのを待っていると、猛烈なダッシュをしてバスに乗ってくる2人組のがいた。その2人組がバスに乗ると直ぐにバスは出発した。

そして、その2人組はバスの運賃を電子マネーでピピッとタッチして済ませると、息をしながら俺が座っている席に近づいてくる。

はぁはぁ、また、また會ったわね……

はぁはぁ、さ、沙雪ちゃん神様!

その2人組とは、例のバスガイドと焼屋で働いていたバスガイドの妹さんだった。今回は、仕事じゃないようで2人とも私服だ。

「「……」」

「やっぱ、スカート履き慣れないわ。それに丈も短いし……」

「じゃあ、げば?」

「それは、ただの変態なんだよな」

 「沙雪は、むっつりだもんね」

「誰がむっつりや、紗香の方がむっつりじゃねえか」

俺と紗香が無視を決め込んで會話を始めると、バスガイドが俺の左側の席に座る。バスガイドの妹さんは、バスガイドの左側の席に座る。

「ちょっとちょっと、お姉さんのこと無視しないでよ」

バスガイドの人がこちらに話し掛けてきたので、紗香は不思議そうに返事をした。

「知らない人には関わっちゃいけないって習いませんでした?」

「それだと、買いとかで會計して貰ったり、お店で店員に注文する時も関わっちゃうじゃない。その時は、どうするのよ」

  「會計はセルフレジを使って済ませて、注文はタッチパネルで注文する」

「じゃあ、セルフレジが無かったら?タッチパネルで注文出來なかったら?」

「はぁぁ……おばさん、しつこいと皺増えるよ?」

「まだそんな歳じゃないです〜まだピッチピチの20代です〜」

「油斷してると出て來るからね」

「そんな事言うなら、貴だって10代じゃない。あと10年もすれば皺が出てくるんじゃない?」

(俺を挾んで會話しないで貰いたいな……)

俺は居た堪れない気持ちになったので、席を立ってバスガイドの妹さんの左側の席に移した。そこで俺は気になっている事をバスガイドの妹さんに質問する事にした。

「あの、し質問良いですか?」

「何ですか神様?」

バスガイドの妹さんは、昨日の焼屋の帰りに見せた時と同じ様な微笑みをして返事をする。

(やっぱり、可い……)

俺はその微笑みに見惚れた。しかし、聞きたい事があった為、俺は頭を左右に振って正気に戻る。

「あの、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「そういえば、言ってなかったね。でも私の名前を言う前に……そんなに畏まらなくて大丈夫だよ?」

「いえ、その、これは……」

「どうしたの?」

(うぉぉぉ近ぃぃぃ)

バスガイドの妹さんは、俺の煮え切らない反応に心配したのか顔を近づけてくる。

(ぶっちゃけてしまえば、この人の顔かなり好みなんだよな……)

リア充の人がポンポン言いそうな臺詞を軽く言えないのが、沙雪さんである。それに焼屋で一緒に食べていた時もチラチラと見ていた。

「な、何でもないです」

「ふふ、神様って可いね」

「いえ、貴の方が可いです」

「そ、そう、ありがと……」

バスガイドの妹さんは、頬をほんのりと染めながらお禮を言ってきた。

(ぐはっ……めっちゃ可いよぉぉぉぉ)

俺が心の中で絶していると、バスガイドの妹さんは話の続きを再開した。

「それで私の名前は「先に言わせてあげない!」……んんぅ〜ん〜」

バスガイドの妹さんが自分の名前を俺に教えようとした時、バスガイドに手で口を塞いで邪魔をしてきた。

(本當に邪魔しないでほしかったぜ)

「良い?雫しずく? 沙雪ちゃんを紹介したのは私なんだからね」

(雫って言うんだ……)

バスガイドは、自分が名前を言ってしまったことに気付かないままバスガイドの妹さん……いや、雫さんにグチグチと言っている。

しばらく経ってからバスガイドは、雫さんにグチグチ言うのを止めた。そして、バスガイドは再び紗香と言い爭いを始めてしまった。

「雫、雫さんって名前なんですね」

俺はバスガイドに聞こえない様に小さな聲で喋る。俺の意図を察したのか、雫さんも同じ様に話をする。

「雫でいいよ。それに、もうしでお別れの時間だからね」

「……え?」

「空港にもう直ぐ著くから」

俺は車窓から外を見ると、雫さんに言われた通り空港が見えたので到著は間もなくなのだろう。

(何だと……れ、連絡先も聞いていないのに……ダメだ、勇気を出すんだ。たった一言、たった一言を言えばいいんだ。「『LIME』のアカウント換しませんか」と。そうすれば繋がりができて、もしかしたら俺にも春が……)

俺がネチネチと考えていると……

『えぇ〜間もなく、終點、終點の青森空港に到著です。お荷などの忘れには、充分にご注意下さい』

バスは空港に著いて停車してしまった。バスが停車すると乗っていた人達がぞろぞろと席を立って降りていく。雫さんもその中の1人で……

「じゃあ、神様またどっかで會おうね」

「あ……ちょっ……」

雫さんは降りていってしまった。雫さんの次はバスガイドが席を立つ。

「最後に、沙雪ちゃん私の名前「言わせない!」ちょっと、押さないで貰える?」

紗香はバスガイドに名前を言わせまいと、バスガイドの背中を押してバスを出て行った。

そして、最後にバスの中から出たのは俺であった。

その様子をミラー越しで見ていた、當時のバスの運転手はこう語る。

が啜り泣きながら、バスを降りていくからどうしたんだ?と聲を掛けてみたんだが、「俺の、俺の春が……」と奇妙な言葉を呟きながらバスを降りていったよ。

と春が散っていった様な雰囲気を出していたようであった。

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