《朝起きたらの子になってた。》沙雪ちゃんの存在

泣き疲れてしまったのか、そのまま私のお腹目掛けて前のめりになって倒れた。寒そうなのと勢がきつそうに思えたので、がしてしまった制服を著させた後、私が沙雪の後ろに移して楽な勢にする。なので今は、膝の上に沙雪の頭を乗っけている勢だ。

「沙雪……」

沙雪の髪をでる。そういえば、最初の頃は髪の洗い方は私が教えていたけど、今では自分で気を使って洗っている。

もう片方の手は、先程沙雪にキスされたる。すると、僅かに生暖かいが殘っていて気恥ずかしくなる。まさか、告白されて初のディープキスをされるとは思わなかった。でも、その分沙雪の好意が伝わって來たのは確かだった。だから、後悔はしていない。でも、どうしてだろうか。

「とっても、苦しいよ……」

沙雪の泣いている姿を思い出すとが張りさせそうになる。どうにかしたくても、何も出來ない。沙雪を泣かす奴は許さないと思っていた本人私が泣かせた。それが何よりも辛い。あの時、れていればこんな事には……でも、それは出來ない。沙雪もそう思うだろう。

思えば、の子している沙雪の事を私は何も知らない。どんな生活をしてどんな環境にいたのかさえ分からない。そして、私にした理由も……。

初めての子している沙雪と出會ったのは、お姉ちゃんが働いているデパートの服飾店の更室だ。あの時は突然の変化でお姉ちゃんも私も揺していた。暴走してあの様なの子モードになっているのかと思っていたが、全然違かった。でも、今になって分かった。

あれは、純粋な一人のの子だ。

お灑落が好きで可らしくなりたいと思っていた、一人のの子だ。

學校で自己紹介した時、男子で好きな人はいるかと聞かれた後、『男の子ですか… ごめんなさい。生理的にけ付けません』と答えていた。私はその時、お兄ちゃんの部分がし出ているのかと思っていた。でも、それも今になって分かる。

あれは、個だ。

ただ、男子が苦手だっただけ。過去に男子絡みで問題が起きていれば、自ずとそうなるだろう。お兄ちゃんとは何一つ関係なかった。それなのに、私は一人のの子の存在を無意識に否定していた。

「ごめんね……私が変な事言ってなければ、こんな事にはならなかったのに……」

気付けば涙が溢れて止まらなかった。自分の馬鹿な行の所為で、沙雪を傷付けたと思うと悲しくて辛い。

「……紗香お姉ちゃん、泣いてるの?」

「え、……」

いつの間にか目覚めていた沙雪が手をばして、私の頬に零れ落ちてくる涙を拭う。

「泣かないで……。ほら、好きな人が泣いてたら苦しいでしょ? だから、笑ってほしいな」

「沙雪……ごめんなさい」

「謝るなら『私の沙雪!』って言われながら抱きつかれた方が私は嬉しいよ?」

「それは……」

「できないよね。私も紗香お姉ちゃんの立場だったら、そうする。悔しいけど、紗香お姉ちゃんには私よりも大好きな人がいるから」

「……うん。ほっとけないから側にいてあげなきゃって思ってるの」

「ふふ、紗香お姉ちゃんは笑ってる姿が一番可いから、私を落とす時・・・・にはその笑顔が武になるね」

「え?」

沙雪の言っている意味が理解出來なかった。特に、『私を落とす』というところが。

「その様子だと気づいてなかったの?」

「なにを?」

「私はこの場所にいる筈の人がの子として産まれた人なんだよ? でも、産まれた時期はその人より遅かったんだけど」

「そ、それって……」

それが本當なら私は……

「思ってる通りだよ。私は紗香お姉ちゃんの兄ーー樹お兄ちゃんがの子として産まれた場合に存在していた人なんだ」

お兄ちゃんを振った事になる……。

その思考に辿り著いた時、私は泣いていたのも忘れて膝の上に頭を乗せている沙雪の顔を覗き込んだ。

「沙雪がお兄ちゃん……」

「私は樹お兄ちゃんじゃないよ?」

「で、でも、魂とかって同じなんでしょ。沙雪は自分が男の子で産まれていたら、どうなっていたんだろうって考えた事はないの?」

「紗香お姉ちゃん? 私は何でも知ってる訳じゃないよ? なくとも、紗香お姉ちゃんが好きって気持ちは変わらないと思うよ」

「っ!?」

思わぬところから攻撃が飛んできて、目を逸らす羽目になった。

「う〜ん、やっぱり、好き。今の反応を見て思ったんだけど、諦めたくない。だから、人になろ?」

「それはできない……」

「そっか。なら、お別れ・・・だね。本當はこのは私のなんだけど、どういう訳か今は樹お兄ちゃんのみたいだから、返さないといけないね」

「それって、沙雪がいなくなるってこと?」

「いなくはならないよ。眠りに就くだけ。必要になったら出て來ると思うけど」

「そうなんだ。なら、見てて。私がお兄ちゃんと人になるところを」

「それは、私に『好きな人を取られるところを見ていて』と言ってるの?」

「あ……なら、目を逸らしていてね」

「ふふ、了解です。紗香お姉ちゃん」

そう言った沙雪は目を瞑り、再び私の膝の上で眠りに就いた。しかし、これ以降は沙雪が出て來る事はなかった。

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