《朝起きたらの子になってた。》ーー生きていく。
「きたか」
「姉貴、何のよう?」
「これを見ろ」
姉貴に呼ばれて部屋に向かうと、椅子に座ってノートパソコンを作している姉貴がいた。
「なになに……ッ!?」
私がノートパソコンで見たのは前、姉貴が遊び半分で私に試した「の子」になる方法の「男の子」バージョンだった。
「えっと……」
男の子になる方法は飛ばすとして、私はそのサイトに載っている備考の部分に目がいった。
そこには『異なる別になった人、なってしまった人はこの方法で元に戻れますが、なってから約半年を過ぎてしまったら元の別に戻れなくなります。*一度異になった人は元の別に戻ると、二度と異にはなれませんのでご注意下さい』と記載されている。
ちょっと、分かりにくいが私で例えてみると、一度姉貴にの子にされたが、それは半年以になら男に戻れる方法がある。だけど、戻れば二度との子にはなれないということだろう。
私がの子になったのは4月の下旬。今は9月の始まりの方だから、約2ヶ月間の期間がある。その間に男に戻るか決めればいい。だけど、私は決めた。
「私は前に遊び半分での子にしたと言ったな」
「付き合わされたにもなってほしいな」
「でも、あれは噓だ」
「え?」
遊び半分じゃなかったら、何だ? 遊び100%か? 勇気100%じゃないんだぞ。
しかし、そのふざけた考えは間違っていた。
「私は前の沙雪を見ていられなかったんだ。何の為に生きているのか、何で生きているんだろうって疑問に思っているように見えて、それが何か良からぬ事態になるんじゃないかって心配だった」
「……」
先程までの雰囲気と私を置き去りにして、姉貴は真剣な話を始めた。
「高校生の時、私は弱かったから沙雪に迷を掛けた。私の判斷が間違っていたから沙雪に被害が及んだ。私と家族ってだけで沙雪は妬まれた。それなのに急に格変えて、挙げ句の果てに優しく接するべきだった沙雪にきつく當たってよぉ……。そんな権利なんかないのに……本當にごめん……ごめんなさい……」
急に姉貴が泣き始めたので、我に返った。そして、何故だか分からないが泣いている姉貴を見ると無に泣きたくなってきた。の子の涙腺は緩いんだな……。それに今の姉貴はあの頃の……。
「お姉ちゃん・・・・・、俺は……いや、私はの子になれて良かったって思ってる。確かに辛い時もあった。でもさ、私は今幸せなんだよ。それを與えてくれたのはお姉ちゃんで、ずっと心配してくれていたのは紗香。見捨てずにご飯を作ってくれていたのが母さん。私はさ、この家族の元に生まれてきて嬉しかったんだよ。だから、今から変えろとは言わないけど、私は優しかったお姉ちゃんが見たい。誰にでも優しくて気遣いがすぎるお姉ちゃんが見たい」
し最後のは自分勝手なものだけど、私が思っている事の全てだ。
「はぁ……それが言いたかったもんの全てか?」
「うん」
ため息をついたお姉ちゃんは私を抱き寄せた。
「ばか! 心配かけて! どうして一人で抱え込んじゃったの? 私が頼りないから?」
あぁ……やっと戻った。
「ごめん」
「だめ、許してあげないもん」
私が待ち続けたあの頃の……。
「どうしたら許してくれる?」
「どうしても許してしかったら、もっと幸せになって」
「幸せか……。お姉ちゃんに抱きしめてもらって幸せかな」
「な、何言ってんの!」
がかで、すぐに人の事をバカにする……。
「懐かしすぎて口調が安定してないね」
「そんな訳ないもん。沙雪のばか。ばーかばーか」
「うん。前のお姉ちゃんみたい」
「うるさい。沙雪だっての子口調で話すの慣れてないくせに」
「そりゃ、の子歴一年未満だし」
「言い訳は聞きたくない」
この世で一人しかいない私のお姉ちゃんが。そう思ったら居ても立っても居られなかった。
「お姉ちゃん」
「ふん」
今度は私からお姉ちゃんの腰に手を回す。これで、私達はお互いに抱き合っている姿になった。
「な……」
「スリスリ」
「さ、沙雪?どうしたの?」
「ずっとこうしたかったんだ。男だった時やったら変態って言われるし。でも、今はの子だからこうしてもいいよね?」
私はお姉ちゃんの頬に自分の頬をり付ける。
「いやいや、の子同士でも普通は……」
「ダメなの?」
「くぅぅぅ……」
渾の演技で殘念そうな表をすると、お姉ちゃんは悶え始めた。
「もう! 可らしくなっちゃって! そんな子にはこうだ!」
「うぶっ」
私の顔に二つのらかいがじられる。試しにグリグリと頭をかしてみると、甘い香りが漂ってくると共に、優しく包み込んでくれた。
「はぁ……」
お腹いっぱいに幸福な匂いを堪能したら、眠気がどっと押し寄せてきた。
「お姉ちゃん……」
「眠くなったの?」
「うん」
そう返事をした後、私はすぐに眠りに就いた。
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