宿に戻った俺はステータス畫面を開くことにした。

カゼハヤ・ソータ

職業 魔使い 

レベル　557 

生命力　252

筋力値　95 

魔力値　200

神力　2898

加護

絶対支配

スキル

カプセルボール　鑑定眼　魔配合　コンタクト

使役

アフロディーテ

キャロライナ・バートン

ワーウルフ

ゴブリンナイト　×１５

ウルフ　×　４

ライトマッシュ　×８

アメーバスラッグ　×２

相変わらずにピクリとも上がらないレベルについては置いておくとして、新たなスキルが追加されていた。

コンタクト　等級Ｄ　パッシブ

（使役した魔との思念會話を可能とするスキル。有効範囲は使用者から半徑５０メートル以まで）

取得條件

・神１００以上

・使役した魔にスキルを使用させること

所謂、テレパシーのようなものなのだろうか？

説明分に書いてあることが確かならば、かなり便利なスキルのように思える。

試しに俺はアフロディーテとキャロライナに向かって、コンタクトのスキルを使用してみることにする。

（あー。あー。現在、新しいスキルのテスト中。テレパシーのスキルを覚えたみたいなんだが、聞こえていたら心の中で返事をしてくれ）

俺がコンタクトのスキルを使った次の瞬間。

ベッドの上でくつろいでいる二人のがピクンと反応したのが分かった。

（え？　ウソ？　この頭の中に聞こえてくる言葉ってソータが送ってきているの？）

（激しました！　これで２４時間、ご主人さまと會話することができるのですね！）

メッセージを信したアフロディーテとキャロライナは、驚きながらも新スキルに対してを覚えているようであった。

それから。

暫く俺はコンタクトのスキルについて検証を重ねることにした。

やはりと言うか何と言うか……。

このスキルは第一印象の通りに便利なものであった。

注意點としては、あくまで俺を経由しなければコンタクトのスキルは使えないということくらいだろうか。

要するに魔同士、あるいはアフロディーテからキャロライナといった組み合わせでは使用することはできないらしい。

けれども。

それを考慮しても非常に有用なスキルであることは間違いない。

特にカプセルボールの中にいてもコンタクトのスキルを利用できるのが大きい。

ボールの中にいる彼たちの立場からすれば、何時でも好きなタイミングで召喚の催促が可能になったのは大きな利點だろう。

～～～～～～～～～～～～

コンタクトの検証が終わった後は魔同士の配合の時間である。

なまじ収穫の多い遠征であったが故に、今晩はやるべきことが山積みであった。

俺は《魔配合》のスキルを利用して、進化させることが可能な組み合わせを探すことにする。

それから１０分後。

どうやら新しく進化が可能な魔は下記の１種類だけらしい。

マッドマッシュ　等級Ｆ

図鑑ＮＯ　７３２

種族 植族

等級 Ｄ

レベル　1

生命力　35

筋力値　10

魔力値　25

神力　25

スキル

痺れ　れ

進化條件

ライトマッシュ×アメーバスラッグ

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植屬の下位種族となるモンスター。

相手を発される胞子による攻撃を得意とする。

その胞子は薬の材料として高値で取引されることがある。

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マッドマッシュは、ライトマッシュにアメーバスラッグを加えることによって作ることができるモンスターのようである。

スキルには新たにれの項目が追加されていた。

れ　等級Ｄ

（遠距離・範囲攻撃。特定の相手を発狀態にするスキル）

ふむふむ。なるほど。

発狀態……そういうのもあるのか！

このスキルについては迅速な検証作業が必要みたいだな。

俺は魔配合のスキルによってマッドマッシュを作すると、部屋の中に召喚することにした。

「ノコッ！　ノコノコッ！」

マッドマッシュはライトマッシュの２Ｐカラーのようなモンスターであった。

が黃からピンクに変化している以外はこれと言って外見的な違いは見られない。

強いて違いを挙げるのなら、キノコ傘がし大きくなったくらいだろうか？

「あ！　ソータ！　また新しいモンスターを作ったのね」

召喚したばかりのモンスターを発見したアフロディーテは、興味津々といった様子でマッドマッシュに近づいていく。

「それにしても便利よね～。魔配合のスキルって。このスキルさえあれば強い魔を作り放題！　つまり魔王を討伐してアタシが天界に帰れる日も遠くないわね！」

風呂上りのバスローブ姿のアフロディーテは、無防備にもマッドマッシュのをツンツンと指の先でつついていた。

スキルの効果を検証するには今が絶好のタイミング！

（マッドマッシュ！　れだ！）

つい先程、俺は重大な事実に気付いてしまった。

コンタクトのスキルを使用することでアフロディーテの側からでは、俺がマッドマッシュに命令を下したことが分からなくなる。

つまりそれが何を意味するのかと言うと……。

コンタクト＆れのコンボを用いることで、完全犯罪のセクハラが立してしまうのである。

俺の命令をけたマッドマッシュはキノコ傘からピンクの粒子を飛ばす。

「ちょ!?　何なのよ！　このは!?」

「ぬおっ！　この胞子……俺の方にまで……！」

迂闊だった。

どうやらマッドマッシュの持っていたれのスキルは、痺れよりも攻撃範囲が格段に広いものであったらしい。

部屋の中はピンクの胞子で充満していくことになり――。

結果として、俺自も鼻と口から胞子を吸い込んでしまうことになる。

「あれ……。なんだか……が熱く……」

最初に異変が起きたのは、アフロディーテであった。

れのスキルを至近距離でけたアフロディーテは、ポワポワとしたけた表になる。

「……ソータ。アタシの……何か変だわ」

アフロディーテは羽織っていたバスローブをぎ捨てて下著姿になる。

こ、これが発狀態の効果なのか!?

俺の方もがおかしい。

強力な栄養ドリンクを口にした時みたいにがポカポカとしてきて、アフロディーテのが段々とエロく見えてくる。

いや。

冷靜に考えると、アフロディーテのがエロいのは元からなわけだが……。

「お願い。ソータ……。しの間だけジッとしていて……」

アフロディーテは息遣いを荒くしながらも俺のをベッドの上に押し倒す

吐息がれるくらいに顔が近い。

やがて、アフロディーテはゆっくりとを俺の顔に近づけていき――。

「……何をやっているんですか？　アフロディーテさん」

殺気の籠った聲が聞こえたかと思うと、アフロディーテの頭上には大量の冷水が注がれていた。

「冷たっ!?」

「これで目が覚めましたか？」

「ハッ。アタシったら一何を……？」

冷水をけたアフロディーテはハッと我に返って周囲の様子を窺っていた。

「ち、ちょっとソータッ！　こっちを見ないでよね！」

下著姿で俺のにっていたことに気付いたアフロディーテは、ベッドの上から跳ね上がり手足を使ってを隠す。

「……これは違うのよっ！　魔が差したというか何と言うか……とにかくアタシはソータのことなんか、これぽっっっちも好きじゃないんだから！　変な思い上がりはしないでよねっ！」

そんな捨て臺詞を口にしたアフロディーテは、慌ただしい様子で浴室に駆け込んで行く。

キャロライナは俺たちの一連のやり取りに対して、冷めた目線を送っていた。

（あの雌貓が……。私の魔王さまに目を使いやがって……！　殺す。殺す殺す殺す殺す殺す）

「……えーっと。あの。キャロライナさん？」

「はい。なんでしょうか。ご主人様」

（いけません。私としたことが……を抑えなければ……）

とびきりのスマイルを浮かべながらもキャロライナは振り返る。

……。

…………。

なんということだろう。

どうやら俺がコンタクトのスキルを取得したことにより、キャロライナかられた思考の一部が聞こえるようになっているらしい。

それにしてもキャロライナは、どうして俺のことを魔王さまと呼んでいたのだろうか？

「……えーっと。それにしてもマッドマッシュのスキルに冷たい水が有効なんてよく知っていたな」

「はい。以前、私の住んでいた村にも時々マッドマッシュが出現したことがあったので対応策は知していました」

「そ、そうなんだ。參考になるよ」

「ところでソータ様。今後、スキルの検証作業をする際は私のことを使っては頂けませんか？　私ならアフロディーテさんと違って、どんな恥ずかしいことがあっても逃げ出したりしませんので」

「…………」

コンタクトのスキルを使ったにもかかわらず――。

俺が命令を下してマッドマッシュにスキルを使わせたことは、キャロライナにバレバレたったらしい。

「……ああ。考えておくよ」

何故だろう。

し前の俺だったら飛び上がって喜びそうな臺詞であったが、今は素直に喜ぶことができない。

キャロライナの腹黒い本を知ってしまった俺は暫くの間。

寢付けない夜を過ごすのであった。