《異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育しています ~》を作ってみよう

ミ~ンミンミンミンミ~ン。

なんだろう。このデジャブ。

異世界アーテルハイドは、夏真っ盛りである。

庭の木に止まったセミたちが嫌がらせのように合唱中である。

俺こと、カゼハヤ・ソータは、風通りが良好な屋敷の縁側の部分で、死んだように倒れていた。

熱い。

熱すぎる。

なんだか今日は何時にも増して気溫が上がっているような気がする。

「流石に熱いですね。おそらく今日が夏日のピークになると思われます」

うおっ!

キャロライナの口からもようやく『熱い』という言葉が出たか。

今日みたいな日に植たちの水やりとは本當に頭が下がるぜ。

「ソ〝~ダ~! なんなのよー! この暑さはー!?」

キャロライナですら愚癡を零すレベルなのだから、ウチの駄神さまに耐えられるはずがない。

聞くところによるとアフロティーテのいる天界っていうのは、常に気溫が一定に保たれていて、年中快適に過ごすことができるらしい。

まさかクーラーに慣れた現代っ子である俺以上に、弱なやつがいるとは思わなったぜ。

(た、大変ッス! ソータさん!)

そんなことを考えていた時である。

コンタクトのスキルを使用したシエルから心の聲が飛んでくる。

クラーケン?

ああ。あの筋力値上昇(大)さんのことか。

そういえば捕獲してからは1度も召喚したことがなかったな。

ボールの中での生活に馴染めているだろうか。

(クラーケンがっ! スルメになってしまうッス~!)

(な、なんだって――!?)

そこで俺は慌ててクラーケンを召喚してみる。

すると、どうだろう。

あれ? クラーケンってこんな小さかったっけ?

の艶を失ったクラーケンは見るからに元気がなさそうな様子であった。

「うぅぅぅ。自分のせいッス。キャロライナさんと相談して、クラーケンの面倒を見るのは自分の擔當だったんスけど、ついつい作業に集中していて」

一緒に召喚したシエルは、クラーケンの傍に駆け寄り申し訳なさそうな表を浮かべていた。

「キャロ。回復魔法を頼めないか?」

「……出來なくはないですが、おそらく効果はないと思われます。クラーケンに必要なのは治療ではなく海水でしょうから」

そうだったのか。

となると今後クラーケンを使役するには、定期的に海に行かなければならないということか。

ワイバーンを使うと移時間は短できるが、何かと面倒ではあるな。

「あれ? でも変じゃないか? ボールの中って、あらゆるストレスから解放されて、病気にもならないし、腹も減らないって聞いていたんだけど……」

「基本的にはそういう認識で間違いないのですが、例外もございます。ボールの中でのの変化がゆっくりになるのです。

私が計算したところボールの中の1日は、外での暮らしの60日程度です。なので長く過ごせば、空腹になりますし、ストレスも蓄積されます」

知らなかった。

ボールの中ってそういう仕組みになっていたんだな。

仮にクラーケンを捕獲したのが60時間前と過程した場合、海水なしで1時間も過ごしていることになる。

なるほど。

クラーケンの元気もなくなるわけだ。

「よし。なら今日は海に行ってクラーケンを労ってやることにするか」

「ご主人さま。私から1つ提案よろしいですか?」

「ああ。何でも言ってくれよ」

「ボールの中に海洋生たちが暮らすことのできる『海エリア』を作ってみてはいかがでしょうか?」

「なんだと……!?」

流石にその提案は予想外だったわ。

だがしかし。

キャロライナが言っているのだから満更できないということでもないだろう。

「本當に作れるのか……?」

「はい。大きなを作って、そこに海水を流し込むだけの作業ですからね。ゴブリンナイトたちを総出で稼働させれば、今日中にそれらしいものを作ることが可能だと考えています」

たしかに聞いたじだと、手軽に作ることができそうなじはするな。

普通は汲んできた海水なんか直ぐに腐ってしまうものなのだが、そこはボールの中の特殊な環境が活きてくる。

もちろん定期的なれ替え作業は必要だろうが、外の世界より60倍も時間の流れが遅いボールの中であれば、かなり長持ちすると思う。

「自分も賛ッス! キャロライナさん。海エリアの基本設計は自分に任せてしいッス!」

「えっ。なになに? ボールの中に海を作るの? やったぁぁぁ~! これで1年中、海水浴ができるじゃない!」

決まりだな。

2人もこう言っていることだし反対する理由が特にない

今後のことを考えておくと、海エリアを作った方が使役できるモンスターの幅も広まっていくだろう。

「キ、キャロライナ様!」

俺たちが海水エリアの設立を決定した直後であった。

どこからともなく現れたロストがキャロライナの前で片膝をつく。

「海エリアの設立という大義! どうかボクにも一役噛ませては頂けないでしょうか!」

ロストの表は何時になく真剣なものであった。

そうか。

ロストのやつ……海エリアの作で手柄を挙げてキャロライナのポイントを稼いでおく作戦か。

何もそこまでしなくてもいいのになー。

ロストがキャロライナに対して忠誠を誓っていたのは知っていたけど、過剰に畏まった態度を取るのは心しない。

俺たちは……互いに互いを認め合った仲間じゃないか!

「――ゴミ蟲が。二度と私の前に姿を表すなと忠告したはずですが」

全然認め合ってなかった!?

キャロライナの機嫌が悪い理由は直ぐに分かった。

おそらく前回の逆レイプ事件(?)のことが尾を引いているのだろう。

詳しい事は俺からも説明したのだが、事はどうあれロストが俺に牙を向けたのは事実である。

その辺のこともありキャロライナとしては、未だに納得がいっていないのだろう。

「うぐっ。何卒……何卒……ボクにチャンスを~!」

「くどいですよ。ご主人さまに対する反逆は、本來であれば死を以てして償わなければならない大罪。命あるだけで幸運と思いなさい」

土下座で泣きつくロストであったが、キャロライナは取りつく島もない様子である。

1度こうなってしまったキャロライナは頑固である。

俺の方から頼んでも果たして考えを変えるかどうか……。

「キャロ。俺からもお願いするよ。ロストに手伝わせてやってくれないか?」

「分かりました。ご主人さまがそう言うのでしたら」

はやっ!

即決にもほどがあるだろ!

前々から思っているのだが、キャロライナって俺に対してだけ異様なまでに甘いよな。

嬉しいことは嬉しいのだけど、なんだか他の魔族たちに対しては申し訳ない気持ちになってくる。

「……す、すまない。カゼハヤ! 恩に著る! 恩に著るぞ!!」

俺のフォローがよっぽど嬉しかったのだろうか。

ロストは鼻水を垂らしながらも謝をしているようであった。

ロストよ。

お前……それでいいのかよ。

あの事件が起きたのは半分以上、俺の下心に原因があるわけなのだが……。

なんだかここ最近のロストは、どんどんチョロイン化が進んでいるような気がするな。

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