《《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーでり上がる。いまさら戻って來いと言われても、もう遅い……と言いたい。》1-1.勇者パーティーから追放されました!
「あなたは、お荷なのです」
ハッキリとそう言われたときには、脳天をガツンと毆られたような衝撃をおぼえた。
冒険者ギルド。
付嬢の言葉である。
えげつない言葉とはウラハラに、らしくネコ耳が頭上にてヒョコヒョコといている。
「いや、しかしですね……」
と、オレは冷や汗が吹き出るのを覚えた。
みずからの汗が、したたり落ちて、カウンターテーブルの上にシミをつくった。
「しかしも何もありません。勇者パーティは冒険者たちのなかでも、もっとも優れた者たちの集まりです」
「ええ」
「果を出せない者が、勇者パーティにとどまることは許されません」
そうしてオレは、勇者パーティから追い出される運びとなったのである。
☆
これからどうするかなぁ……。
とりあえずモンスターを倒さないことには、今日の収がない。しかしモンスターを倒すことは、オレひとりのチカラではし遂げられない。
なにせオレは強化師エンハンサーである。
仲間を強くして、仲間に戦ってもらうという、なんとも人任せな職業である。――なんて、いやいや、そんなことはない。
ときに颯爽と仲間を強化して、ときに鮮やかに仲間を強化したり、そしてときには華麗に仲間を強化したりするのだ。……まぁ、仲間を強化するほかにすることはないんだが、決して無下にされて良い職業ではない。いわゆるまぁ、あれである。縁の下のなんとやらである。
「えい、くそっ」
いまごろオレを追放した勇者パーティも、えんえんと泣きわめいていることだろう。いなくなって、はじめて実するありがたみというヤツである。
『影ながら、あんなに活躍していたのか』『こりゃ參った』『ヤッパリ戻って來てもらおう』『うん、それが良い』……なんてことになって、そろそろ『戻って來てくれないか?』と、聲をかけられるはずである。そしてオレは、鼻息を荒げて言い放ってやるのだ。
「いまさら戻って來てくれと言われても、もう遅い」
と。
なんて華麗なるザマァだろうか。
しかし、待てよ。
いまの自分の境遇を考えてもみよ。
付嬢から追放宣告をされて、ギルドの前の石段に座り込んでいる。さながら浮浪者である。今日の食費にも困っているありさまである。さながら――っていうか、ガチの浮浪者である。
こんな狀態で、「今さら戻って來てくれと言われても、もう遅い」とか言っても、それはただの強がりにしか見えないことだろう。逆にミジメである。
華麗なるザマァ達のためには、自分が相手より良い立場になっている必要があることが理想だ。
そのためには、どうすれば良いか。
オレは冒険者だ。モンスターを倒して名をあげる。これがイチバンの近道だ。でもオレは、モンスターを倒せない。だって強化師だし。
「はっ」
堂々巡りである。
あやうく無限ループに陥るところであった。
「よし」
掛け聲とともに立ち上がった。
とりあえずいっしょに戦ってくれる仲間が必要である。「オレは強化師だから、君が戦ってね」という條件を呑んでくれる、都合の良い駒――ゲフン、ゲフン、仲間が必要なのである。
まぁ、大丈夫だろう。
なにせ元勇者パーティだ。追放されたとはいえ、そのブランドはなかなかのものがあるはずだ。
オレのほうから勧する間でもない。むしろ、「うちのパーティに來てくれませんか」「いいや、オレのパーティに來てくれ」と引く手あまたとなるはずである。ほら。後ろを振り向いてみれば、いまにも勧がかかる……。
ヒュゥゥゥ……――。
むなしさを演出するような、一陣の風が木の葉をさらってゆく。
「なんだよォ、なんなんだよッ。オレは元勇者パーティだぞ。勧してくれても良いじゃねェか」
怒鳴った。
メッチャ小さい聲で、誰にも聞こえないぐらいの大きさで怒鳴った。そんな鬱憤を大聲で発する度は、いかんせんオレは持ち合わせていない。オレは、慎ましいのだ。
こうなれば恥を忍んで、こちらから頭を下げるしかない。
「あ、あの。すみません。パーティの空枠とかありませんかね」
冒険者ギルドにろうとしている、2人に聲をかけた。パーティなら誰でも良いわけではない。人だったから、聲をかけた。つつましいオレにしては、なかなかの勇気である。
「はぁ? キモ。お荷くんじゃん」
「ほら、行こ、行こ」
と、オレの起などしらず、2人はすたこらさっさとギルドにって行ってしまった。
嗚呼……無……。
「ウォォォッ!」
心臓破壊ハートブレイクと言えば、何かの技名みたいでカッコウ良いかもしれないが、要するにめっちゃショックである。傷つく。そんなことを言われたら、二度と立ち直れない。
わかっていた。
オレのお荷っぷりは、勇者パーティのみならず、ほかの冒険者たちからも有名なのだ。
こればかりは、マジメに言わせてもらうが、ギルドの制度が悪いのだ。オレは世界で最強の強化師だ。1番目じゃなくても、2番目か3番目――まぁ、10番以にはっていることだろう。
しかし、強化師というのは単獨では評価されない。なにせギルドでは、「モンスターの討伐數」によって評価される。
討伐數である。
ンなもん、強化師が不遇になるに決まってるだろ、ハゲ。そんな制度を決めたヤツに、まっこうからそう言ってやりたいね。まぁ、もちろん、イザそんなことを言う度は、オレにはないんだけどね。
「討伐數」が多いほど、世間も評価するわけで、強化師も魔師との二足のワラジという場合パターンが多い。
じゃあお前も、魔師やれば良いじゃん。誰もがそう思うことだろう。
ふはは。殘念である。
オレは、強化エンハンス全振り男なのだ。
強化のみを極めし男なのだ。ふはは。
……笑いごとじゃねェ
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