《貧乏だけど、ハイスペックです!》プロローグ
あぁ、寒いな。
12月24日。
クリスマス・イヴの夜に僕は何をやっているんだろう。
あたりには大勢の幸せそうなカップルたちが
イルミネーションを見にやってきている。
僕はというと、當然そんなことをする余裕もなく、
ただただこの寒空の下、生きるために必死で路上を
歩く。
そんな最中、
「こんな寒いイヴの夜にどうしたのだ?お前は」
知らないの子に話しかけられた。
腰までびた黒髪がイヴの夜風に棚引いている。
目はトパーズのようにしく澄んだ橙で、
僕のボロボロのコートとは大違いの高級そうなコートを
羽織っている。
「僕は、いろいろあって、今生きるために
仕事を探してるんだ。」
「ふーん。こんなクッソ寒いイヴの夜にか?」
「うん、そうだよ」
口は悪いがうーむ、どうしたものか、
と考えてくれている。なんて心の優しい子なんだ。
「そうだなあ、よし、お前!私の家で働け!
それで文句はないだろう?立派な仕事になるはずだ」
「……え?」
あー、そもそもなんでイヴの夜にこんなことになったんだっけ。
語はし、いや、かなり遡さかのぼる。
8月1日。
僕の高校生活初の夏休みの初日、
僕は、バイトをしていた。
好青年に見える僕は18歳以上のみが許されるバイトを
していた。
そう、年齢を偽っていたのである。
まあ、そのバイトっていうのは、
カフェのバイトなんだけどね。
さて、ではなぜ僕が年齢を偽ってまで
必死にお金を稼いでいるのか。
それは、言うまでもなく、親の責任だ。
率直に言うと、僕達……いや、僕には、
5億円の借金がある。
もちろん、僕がつくったものではない。
親がつくったものだ。
では、なぜ僕の借金になってしまったのか。
それは、親はもうすでに他界しているからだ。
まあ、そのほうが僕には神的にも的にも
安心なのだが、この件ばっかりは
そうも言っていられない。
なんせ、5億円の借金なんて、
高校生活全てを犠牲にしてもとてもじゃないが、
返せる額ではないからだ。
さらに言うと、並みのサラリーマンでは
一生かけても返せはしないだろう。
では、なぜ僕のバカ親たちは
こんな多額の借金を背負ってしまったのか。
それは、まあ、一番最悪なことに、賭け事だ。
休日は愚か、平日までも賭け事に沒頭していた
バカ親たちは、賭け事に勝っては掛け金を増やし、
勝っては増やし……を繰り返していた。
その結果、とうとう負けてしまい、
一気に10億円借金を背負ってしまった。
そりゃ、そうだ。
ギャンブルなんて、結局は運営側に利益が回るように
なってるんだもの。
それでも勝ち続けられる人は、本當に一握りなのだ。
では、なぜ今は5億円なのか。
それはもちろん僕が一生懸命働いたのもあるのだが、
一番大きいのはやはりバカ親たちの生命保険だろう。
それを全額借金返済に回した。
噓だ。多の學費分を抜いてある。
じゃあないと、學校なんて行けないからね。
まあ、しかもその借金相手が賭け事の取り締まりを
している賭博社ギャンブルカンパニーなのだ。
この會社は日本だけでなく、世界全ての賭け事を司る、
いわば賭博の支配社だ。
そんかおっかない組織に借金をしてしまっている。
しかも返済期限は今年の12月24日ときた。
そんなこんなで僕はあの子と出會う12月24日まで、
學校以外の時間はほとんど晝夜問わず働き続けたのだ。
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