《うちの姉ちゃんはこわい》両手に花
「ねぇ、ハルちゃん。明日、お姉ちゃんとデートしない?」
唐突だった。だけど、斷る理由なんてなかった。
だって、ユリ姉がおれとデートしようって言うんだ。斷れるわけないだろ。
「いいよ。どこ行くの?」
「な・い・しょ」
そのいに乗って行ってみると……。
「何でサリ姉も……?」
「悪かったなぁ、邪魔しちゃって」
全然悪いと思ってなさそう。
サリ姉はいつものように、長くばした明るい茶髪をなびかせる。今日はオシャレなシャツに、膝下くらいまでの白いズボン、耳にはピアスもしてる。
さすがに高校生だけあって、オシャレだ。
ユリ姉も、やや茶がかった髪をシュシュで結わえてルーズサイドテールにし、刺繍のった白いブラウスに、膝丈の淡い黃のスカートをひらひらさせている。
今日は心なしか、ほんのり化粧もしてるみたい。
この二人のに挾まれて、おれは巨大なショッピングモールに來ていた。
「ハルちゃん、ちょっとちょっと」
呼ばれて行ってみると、明らかにのブラウスを手にしたユリ姉が、それをおれに合わせてくる。
「うーん、ちょっと違うかなぁ」
ようやく、おれはこのデートの意味に気がついた。
どうやらユリ姉は、おれに裝させるのがすっかり気にってしまったらしい。
「桜莉菜、これどう思う?」
「そっちのの方がよくない?」
しかもサリ姉まで一緒になって、おれをマネキンにする始末。
「お二人さん、おれが男だって、知ってる?」
返事はなんとなく想像がつくけど、一応聞いてみる。
「知ってるよ?」
「……諦めなって。こうなった柚莉菜は誰も止められないから」
サリ姉で無理なら、そうだろうね。
「あ、このワンピースかわいい〜! これと合わせて……。あ、でもこっちのスカートもいいかも」
そんな調子で、一日振り回されることになった。
どうしてこうなった……。
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