「は⋯⋯？　あ⋯⋯」

そこで左手に貓の尾の様なものを持ってた事を思い出す。

いや、いやまさかね⋯⋯え⋯⋯冗談だろ？　何が起きてるんだよ。

そう、左に持っている尾は冷奈のおのあたりからびているのだ。

手を離すと、冷奈は真っ赤な顔で輝夜をにらみながら起き上がる。

コスプレ？　な訳ないよな⋯⋯意味が分からない、生えてきたとか？　まさかね。

「な、なぁ冷奈⋯⋯それなんだ？」

「それってなんですか？」

冷奈は顔をそらし両手でを隠す様にして、そう答えた。

自然とその年相応、いやそれ以上に育った緩やかな膨らみのあるそれに目が吸い寄せられて⋯⋯さっきあのらかく⋯⋯だから、今はそんな事考えてる場合じゃないんだって！

俺はぶんぶんと顔を左右に振って雑念を消し去る。

「いやそれ偽なのかって事」

「⋯⋯⋯⋯輝夜？　私のが偽で盛ってる、と言う事ですか⋯⋯？」

冷奈のオーラが途端にドス黒いものに変わり、綺麗な黒髪は逆立ってさえ見える気がしてくる。

なんか、凄い勘違いを⋯⋯そんな事言うわけないだろ、妹に「お前の偽だろ」なんて事平気で言える兄が居たら是非會ってみたいね、そしてうちの妹様と対面してしいものだ。

そんなくだらない事を考えつつ、俺は必死に弁解を試みる。

「いやいや違うから！　そんな事この際どうでも良いから！　その冷奈が付けてる尾の事だって」

「どうでもいい⋯⋯ですか。　まぁ良いです、それより何言ってるんですか？　私がそんな意味の分からない付けてるわけないじゃないですか」

なんか更に圧が強くなった気がしたが何故だろう。

「いやいくら恥ずかしいからって、付けてないと言い張るんだったら、って教えてやろうか？」

「別に噓なんてついてません！　勝手にすればいいじゃないですか、私そんなコスプレ趣味無いですし、そんな道持ってませんし、ありえないん──」

斷固として俺の発言を認める気は無いのね。

まぁ、いきなり「尾生えてるよー」なんて事言われても信じれるわけないんだけど。

「後悔すんなよ、冷奈」

「だからそんなは──」

俺は冷奈が何か言い切る前に尾を優しく持って冷奈の目の前に持って行こうとして──。

「きゃっ！！」

え？　悲鳴？　やっぱりほ、本⋯⋯？

それよりその悲鳴可い過ぎるんだけど⋯⋯。

妹から生えていた尾が本だという驚愕な事実が発覚するも、普段では、いや生まれてこのかた聞いたことのない冷奈の可すぎる聲に心臓が急速に鼓を早めてしまう。

「え、なん⋯⋯で⋯⋯？きゃっ、ちょっと⋯⋯も、もうや、やめて」

途端に普段俺に対して冷めきった様な表を崩さない妹の顔が恥ずかしさからか、頬が紅に染まっていく。

なんだよその可さは！？　チ、チート⋯⋯。

「いや、俺最初に忠告したじゃないか⋯⋯」

それより、覚はあるようだし、溫かいしやっぱり本⋯⋯。

どうして冷奈に？　しかもこれって貓の尾？　だろ？

「きゃっ、そ、そんな優しく⋯⋯て、調子に乗らないでください！」

「ぐっ、痛って！」

尾をでながら、そんな事を考えてた俺は、冷奈に突然打ちみぞうちをもらい悶絶する結果となった。

危ねぇ⋯⋯いや、ただでさえ見た目が可い妹だぞ？　それに尾って⋯⋯可過ぎるんだよ！　久しぶりに冷奈とまともに話せてるんだぜ？　まぁ、冷奈にとっては迷なんだろうけどな。

冷奈は數回深呼吸をして息を整えると、先程よりも更に殺気のある笑顔をみせてくる。

「輝夜？」

「はいぃ！　し、死刑だけは、勘弁してください！」

「し、死刑？　輝夜ちょっと聞いていい？　私そんな事する妹だと思われてるんですか？」

ま、まぁ本當に殺しはしないと思うけど⋯⋯いや、するか？　なんか考えれば考えるほど本気で殺られそうな気が⋯⋯。

いやいや、妹じゃなくても、こいつと結婚なんて無理だろ⋯⋯てか、まずこいつに釣り合う奴なんてそうそう──。

「はぁ、なんでこうなってしまったんでしょうか⋯⋯」

「え、なんて？」

「いや、なんでもないです。変態兄への不満と怒りを乗せた普通の獨り言です」

「それは普通じゃないからな！？　絶対ズレてるからな？」

なんでそんな驚いた顔してんだよ⋯⋯こっちが驚いてるよ！　本當にこいつ俺の前と人前で変わるよなぁ！

「まぁ、それより、本當に私から尾が生えてるんですね⋯⋯私には見えないですけど⋯⋯」

まぁ、たしかに普通ありえないよな⋯⋯一何が起きてるんだよ、世界の終わりでも近づいてんのか？」

「まぁ、ここにあるから、ってみてくれないか？」

「それよりなんで私は見えなくて輝夜は見えるんですか？　変態だからですか？　変態じゃない私には見る事が出來ないんですか？」

お前なぁ⋯⋯質問ぜめで俺を殺そうとしてるの？　それと俺は変態じゃねぇよ。

「いや、多分俺がさっきれたから、かな。あと、一つ言わせてもらうけど変態じゃないからな？」

冷奈は、はぁとため息を吐くと、指示された様に尾のある位置に手を持って行き、それにれる。

「ほ、本當ですね⋯⋯何かあります」

冷奈は目を白黒させ、自分から生えてる尾を優しく握っている。

あれ？　絶対びびると思ったんだけどな⋯⋯。

「なぁ、冷奈、それ何の尾か分かるか？」

「いえ、わかりません⋯⋯犬、でしょうか」

やっぱり見えてない、どうしたら⋯⋯冷奈としても見えてた方が良いよな。

「いや、違う。うーん⋯⋯ならもうし強く握ってくれないか？」

「え？　はい」

「まだ見えない？」

「見えません」

「なら、どんどん強くして行ってくれ、出來ればもう片方の手で俺にも同じぐらいの強さで握ってもらえると助かる」

俺がそう言うと、冷奈は無言で頷き俺の腕を握った。

冷奈に手を出したのだが、冷奈は手をばし手をスルーし、腕を握ろうとしてそれすらも一瞬躊躇した事に今更ながらを痛めてしまう。

そして、どんどん握る力が強くなっていく。

「あ⋯⋯え、これって⋯⋯⋯⋯ね、ねね貓ぉ？！」

あ、ようやく見えたか⋯⋯握力でいうと2キロぐらいかな。

それより、まだ冷奈は貓が苦手なんだな。

貓の尾と気づき、耳を両手で塞いで小さく丸まって震えている冷奈を見て、笑ってしまう。

何でも出來て、可くてそれでもって優しくて、まぁ、俺以外になんだが、そんな完璧な冷奈の弱點が実は貓だなんて、可すぎないか？

て、そんな事考えてる場合じゃないか、いつも完璧な妹の取りすところを見て、昔を思い出し、妹に対して失禮ながらもほっこりとした気分になってしまう。

「冷奈落ち著いて、本の貓じゃないから、あくまで尾だぞ」

「で、でも⋯⋯う、いてるし、貓はどうしても⋯⋯！　な、何で私がこんな目に⋯⋯なんでなんで⋯⋯良い子にしてたのに⋯⋯」

冷奈は目に涙を浮かべ肩を震わせる。

明らかに取りし、ブツブツと何かを言い始める。

「いやいや考え方を変えるんだ！　それは本の貓の尾なんじゃなくて、コスプレ用の尾の進化版なんだって、あくまで偽そう捉えるんだ」

理屈もクソもないことを駄目元に言ってみる。

「貓の尾じゃない⋯⋯？　⋯⋯お兄ちゃんが⋯⋯そう言うなら⋯⋯。た、たしかに、本の貓の尾じゃないけど」

突然の外敵に混しまくっている冷奈は、途中聞こえなかったのだが、どうやら納得してくれたらしくし落ち著きを取り戻し、耳から手を離した。

いや、これ多分本だよねと思った事は伏せておこう。