《量産型ヤンデレが量産されました》罠
まず俺がしなければならないことは田中が本當にフェロモンの影響下にあるのかを確かめることだろう。
しかし俺にそのは無い。何故なら俺は巻き込まれただけであり、フェロモンの影響も対象も全て馬鹿の報しかない。
むしろ馬鹿の報を何の疑いも無く信じた俺の方が馬鹿だった。実験だって言ってたもんな。それでも薬の影響だけでもしっかり把握しとけや馬鹿。
だが、だが、まだ一縷のみもある。それはコイツが単にふざけているだけであり、フェロモンの影響はけていないという可能もある、ということだ。
榛名や文と比べると行が非常に大人しいことや學校では普通であったことがそう考える理由だ。
つまりフェロモンの影響云々を考えるよりもコイツがふざけているだけかどうかを判斷した方が建設的だろう。
必死に考えている間にふと気づいた。俺、田中に抱き付かれている。考えることに集中するあまり田中のきに気づいていなかった。
考えがまとまった瞬間にふざけていないと判斷が出來た。恐らくフェロモンの効きが遅かっただけなんだろう。理由が分かってよかったねチクショウ!
野郎らしからぬフワリとした良い臭いにトキメキかけるが、いや、むしろだからこそ野郎に抱かれたままなどいられないので何としてもコイツを引きはがさねば。
「おい何やってんだお前!」
「ご、ごめん!でも、あの、雄太が前にの子に抱き付かれてみたいって言ってたから………」
いや、言ってたからどうした。離れろ。
「ほら、俺ってみたいな顔してるだろ?前に何度も間違われたことがあるし、雄太に出來ることって言ったらこれくらいしか思いつかなくて………」
「いやいや、みたいな顔だからってお前が男なのは変わらないだろ、いいから離れろ」
「うぅ………嫌だぁ………俺を捨てないでくれ………雄太ぁ………」
中的な聲にな顔、そんな相手に涙聲でこんなことを言われれば変な気分になりかねない。いい加減離れろと思うがかなり力を込めて抱き付いてきているせいで無理矢理引きはがすことも出來ない。
こうなれば文の時のように相手が何を気にしていてるのか、そこを利用して言いくるめるしかなかろう。とりあえず気になるのはコイツがいきなり捨てないでくれとか言い出したことか。
「はぁ、なあ田中、捨てないでくれとかいきなりどうしたんだお前」
「だって雄太、如月に頼み事されたって………それって多分付き合ってくれって告白されたんだろ?だから、俺のことなんか捨てちまうんだろ………?
嫌だよ………そんなの嫌だよ雄太ぁ………」
違うのにある意味正解している。なんだコイツは。
「いやいや、確かに付き合うことにはなったけど、だからってお前と遊ばなくなるなんて無いから」
「っ!そんなの噓だ!雄太が如月みたいなの子と付き合ったら俺なんか捨てちまうに決まってる!
なあ雄太、お前がしてほしいことなら何でもしてやる。俺が男なのが嫌だってんなら手だってけてやる。
口調だって、みたいなのに頑張って変えてみせる。だから雄太、どこにも行かないでくれ………」
どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!主治醫は出てこい!いやいやいや、これ説得不可能ですわ。これを説得するってなったらコイツと 親友から親♂友となることを認めるくらいしか見當たらんわ。
ああ、こいつが本當にならちょいと依存が激しいってだけで済んだのに。でもコイツ手けるとか言ってるから別に問題は、っていかん!いかんぞ!何でそっちの方向で話を進めるんだ俺は!
気持ちで負けたらアウトだ!黙っていたら負ける!ともかく出まかせで喋り続ける!
「なあ田中、俺はお前のことを一番の親友だって思ってる。
お前は間違いなく俺の一番の友達で、得難い友達で、俺たちはずっと一緒だ。
だから、な?ちょっと落ち著けって」
「………じゃあさ………俺のこと、苗字じゃなくて、たーちゃんって呼んでよ」
「た、たーちゃん?」
「ああ。本當は名前で呼んでほしいけど『太郎』だと男ってことが強く出るだろ?だから、たーちゃん」
俺としては男ということを強く意識しておきたいので太郎の方が良いのですが。だがコイツを転換させたりコイツとおホモ達になることと比べれば呼び名を変える程度なら問題無い。
何をすればいいのか全く手がかりが無かった文の時と比べれば難易度が低くて助かる。
「たーちゃん」
「もういっかい」
「たーちゃん」
「もういっかい!」
「たーちゃん!」
「うん!」
呼ぶたびに機嫌が直る。ちょろい。だが笑顔が眩しい。榛名に負けないくらいのナイススマイルだ。こいつが男と知らない奴がこの笑顔を見れば間違いなく惚れてしまう。
………………俺は何もじてないぞ。
いかん、難易度が低いと思っていたがある意味で難易度が高いぞ。文の時は兄妹という超えてはいけない壁だが、こちらは別の壁という、余計に超えてはいけない壁だ。
超えてはいけない壁なのに高さが非常に低いのは明らかな欠陥である。訴訟。
何とか田中の機嫌を直すことに功した頃にはいい時間になっていた。 々マ○カをやりすぎた。
逃走劇をしたりを飲まされていると知ってショックをけたり、安全と思っていた場所が全然そんなことは無かったりで心労がマッハな狀態である。さっさと眠りたいが田中が抱き合って寢たいと言い出した。
何だコイツは。何だコイツは。別々の場所で寢たいと伝えると嫌だ嫌だと泣き出す。終いには俺が寢るまで起きておいて、それから抱き付いてやるとまで言い出す。
ならば逆にこっちは徹夜してやると言いたいところだが疲れがヤバいので徹夜は無理だろう。そこで折衷案として一緒に寢る代わりに俺は仰向けで寢るというところで決著がついた。
本當は俺は田中に背を向けて眠りたかったのだが、それをしたら俺が寢た後に反対側に移すると言われた。顔が見えないのがどうしても我慢ならないらしい。
寢る前に余計に疲れてしまったが何とか家で寢るよりは多マシな狀況で眠れそうだ。
俺がウトウトとしている間に田中が俺に語り掛ける。曰く、顔のせいでいつもからかわれてばかりで初めてできたまともな友達が俺だったとか、顔のせいで母親にの服を著せられたこと何度もがあったとか、それゆえか俺のことをそういう対象として意識してしまったとか。
何だろう、安全だと思っていた逃げ場所が全然安全じゃなかった。
々な意味での危険度を考えれば榛名が一番マシだという判斷に落ち著いた。何故俺は逃げてしまったんだ。これが功明の罠か。
目が覚める。外で鳥が鳴いているが斷じて朝チュンでは無い。橫を見ると田中が居ない。既に起きているようだ。
學校を休むと決めているので布団から出たくないが、世話になっているのにそれを行うのは々不義理にすぎる。顔を洗ってからリビングに行くとご飯に味噌に焼き魚と卵焼きという見事な朝食が用意されていた。
これは田中が用意したのか、と料理がそれ程得意ではない俺が大いに驚いていると「おはよう」と田中が聲をかけてきた。
何故こんなに料理が出來るのか尋ねてみたところ、これまた母親に「あんたも料理ぐらい出來ないと結婚できないよ!」と言われて仕込まれたらしい。
絶対何かが間違っていると思うが、料理自に罪は無い。旨い飯は正義。黙々と食べることにしよう。
「ふふっ、こうしてると何だか新婚さんみたいだね」
俺はむせた。
いや、確かに絵面的にはそうなんだろうけどさ、それはアカンでしょ。口調もいつもと違うところが蕓が細かい。やめろ。
むせる俺を見て田中はかなり心配してきたが心配するくらいなら最初からそういう発言はしないで頂きたい。
々と想定外なことがあったが何とかここまでこぎ著けた。あとは田中が學校に行くのを見屆ければ今日は安全に過ごせる。しかしそうは問屋が卸さない。俺が休むなら自分も休むと田中が言い出す。
やめてくれよそういうの。
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