《異世界イクメン~川に落ちた俺が、異世界で子育てします~》剣も學び始める第7話
俺の1日の基本スケジュール。
5時、起床。ゴウトさんと共に牧舎の掃除。
それと牛の方の餌箱に餌補充。
7時、朝食。朝の報番組で最新の知識を得る。
8時、自由時間。
主にゼオラ(子羊)に愚癡を聞かせて過ごす。
10時、セレナとトレーニング。
12時、晝食。その後セレナとトレーニング第2部開幕。
この中に家畜の運の手伝いや糞の片付け等も含まれる。
14時、セレナとトレーニング終了。すかさずシルビアさんに拉致られる。
たまにだが、この後20時頃まで意識がタイムスリップする。
17時(タイムスリップが起きなかった場合)、自由時間。
主にゼオラのブラッシングしながら愚癡。たまに姉妹のどちらかと町に買い出し。
20時、夕食・風呂など。
その後自由時間。
21時、就寢。寢ないと流石にが持たない。
結構スカスカなのに、何故か疲労が凄まじい不思議なスケジュール。
まぁ今まで大こんなじだったのだが、本日より、これに結構な追加要素が加わる。
それは、サーガの世話。
「何で俺が……」
サーガのオムツを替えながら、俺は中年サラリーマンの様な深い溜息をこぼす。
「おい、もっと誠意を込めてやらないか」
何が悲しくて齢い16にして赤ん坊のオムツを引っペがし、ウェットティッシュでそのケツを拭き、新たなオムツを裝著するという作業に誠心誠意取り組まにゃならんのだ。
「……つぅかお前がやれよ、お世話役だろ?」
「そうしたいのは山々だが、サーガ様のご意向だ。だからこうして見守っている」
またそれかよ……
サーガもサーガだ。何かある度に俺を指名しやがって……まぁそれだけ俺が好きだと言うのならもう仕方無いね。
っていうか、本當に何でこんなに気にられているのだろうか。
もしかして俺がどこか魔王ちちおやに似てるとかか?
……そうだ、魔王と言えば……昨晩のアレ、確認しておこう。
「なぁ、シング」
「何だ、急に改まって」
「お前らさ、どうやって魔王を討った連中から逃げて來たんだ?」
「……!」
シングの表が、一変する。
とても不愉快そうな表だ。
「……何故、そんな事を気にかける?」
その質問に対し、昨晩ゴウトと話した「何故サーガが逃げ延びている事が伏せられているのか」という疑問を説明する。
「……程な」
「あ、いや、思い出したくも無い事ならいいんだけど……」
「……いや、そうでもない。ただ、アタシにもよくわからないんだ」
「よくわからない?」
「……魔王様を殺した男……ゲオルとか言ったか? ……奴は、『興味が無い』と言って、アタシにサーガ様を連れてさっさと逃げる様、指示したんだ」
ゲオル、と言えば、この前テレビに出ていた魔王城を落とした冒険者チームのリーダーだ。
……そいつが、何故か魔王の息子を見逃し、その存在そのものを隠蔽している、というのか。
一、何の目的で?
それはシングに聞いてもわからない、か。
「さ、この話はここまでだ。これ以上アタシが語れる事は無い。それとも、アタシが栄養失調で倒れるまでの過程を事細かに聞きたいのか?」
「いや、俺にそんな趣味はねぇよ」
シルビアさんなら喜んで聞きそうだが。
「次はおやつの時間だ。リンゴを磨すれ」
「それくらいはお前がやってくれよ……」
「サーガ様はお前が磨ったリンゴをんでる」
「だぼん!」
誰が磨ろうと味は変わんねぇよ……
まぁ衝撃魔法が飛んできてもあれだし、面倒だけどまぁそこまでまれると仕方無いかなとか思っちゃう訳だ。
てな訳で大人しくリンゴを磨るべくキッチンへ向かう。
「おいロマン……って、取り込み中か」
そこにやって來たのは、ゴウトさん。
「何か手伝いか?」
「いや、そうではないんだが……お前もそろそろ基礎トレーニングは充分だろうと思わないか?」
「ああ、まぁ……」
もう力との頑丈さは充分なレベルに達しているとは思う。
「そろそろ、俺が剣でも指南してやろうかと思ってな」
全の骨が、軋む。
視界が、ひっくり返る。
何故か。
簡単だ。
ゴウトさんの振るった木刀の一撃を、こちらの木刀でけ止めたは良いものの、そのまんま力任せに吹っ飛ばされたのだ。
「正面からけるな! 下半を使って衝撃をいなせ! 今のが大型モンスターの一撃だったら、そんなモンじゃ済まないぞ!」
「いっつぅ………こ、コツくらい教えろよ!」
「冒険中は常に想定外の事態だらけだ。誰もその都度コツなんぞ教えてはくれないぞ」
コツは自力で発見してみせろ、という事か。
「それに、技コツなんぞ二の次だ。まずお前に足りないのは、気合と。もっと必死になれ!」
「っ……わかったよチクショウ……!」
飛び起き、木刀を構える。
ゴウトさんは、アレだ。
普段は気の良いおっさんだが、気合がるとすごい系の人だ。
さっきから、セレナやシルビアさんなんぞ比にならない様なスパルタ指導が続いている。
セレナとの特訓を越え、筋力には自信があったのだが……
ゴウトは俺を、コンビニのビニール袋か何かの様に気軽に吹っ飛ばす。
なんつぅ馬鹿力だ。
そして俺が吹っ飛ばされるたび、見學しているセレナ・シング・サーガは「ダメダメですね」「なってないな」「あべし、ひでぶっ!」と好き勝手にコメント。
「気合が足りんぞロマン! そんなんだから、未だに初級魔法1つ使えないダメダメ狀態なんだ! この総合ド3流がっ!」
「く、くそう! 神責めまですんのかよ!」
「悔しかったら一撃でもいいから耐えて見せろ!」
「う、…上等だこの野郎!」
そして、俺はまた宙を舞う。
「今のお前の筋力なら、力づくでも充分堪えられるはずだろうが! ビビッてんじゃないぞ!」
「む、無茶苦茶言うな!」
「無茶じゃない!」
いや、無茶だろ。
人一人を空高く吹っ飛ばすようなアホみたいな一撃を、力づくで抑えるなんぞ。
この日、結局俺は、ゴウトさんの破壊力抜群な一閃を、一撃たりとも耐えきる事は出來なかった。
「……死ぬ……」
ソファーの上で死の如く転がり、俺は実に的確な現狀報告をする。
しかし、セレナは「はいはい」とそれを適當にいなし、読書を続ける。
全が痛い。
そらあんだけ舞って落ちるを繰り返せば全打撲にもなるだろう。
「だぼん」
そんな俺におかまいなしに、サーガは抱っこを要求してきた。
「……お前は本當に……」
ここに追い打ちを食らう方がキツイので、大人しく抱っこするが、本當キツイ。
「すっかり抱っこしている姿が板についてきましたね」
「……そうね……」
「うむ。悪く無い。サーガ様も満足げだ」
「……勘弁してくれ」
しつこい様だが、俺はまだ16歳。
赤ん坊を抱いているのが似合うというコメントを、褒め言葉として処理するのは微妙な年頃だ。
「んち」
……テメェはクソするにしてもタイミング考えろよ。
夕飯もうすぐだぞこの野郎。しかも匂いから察するにカレーだチクショウ。
痛むに鞭打ち、俺はオムツ替えの準備を始める。
「しかし、魔法は未だ微塵も使えない、・剣も散々……自慢できるのは打たれ強さだけ……こんなんじゃ冒険に出れるのは何年先になるんですかね」
「う、うるせぇ……」
「何? 貴様、冒険に出る予定なのか?」
「ん? ああ。そういや話してなかったっけ」
そういえば、俺が異世界人だと言う事すら話していなかった。
良い機會だし、話しておこう。
「……それはダメだろう!」
俺の話を聞き終えたシングの第一聲は、それだった。
「貴様はサーガ様のお気にりだぞ! 異世界に行くなど言語道斷だ!」
「俺の積み上げてきた努力全否定かこの野郎」
「貴様と別れたショックで、サーガ様が心に癒えない傷を抱えたらどうする気だ!」
「……そんな繊細なタマか、こいつ」
「サーガ様は繊細だ! 水晶硝子の様に、繊細で気高くしい心をしておられるのだ!」
「あう」
そんな奴がカレーの匂い漂うリビングで堂々とクソを垂らすか、普通。
しかも、ムカつくくらい堂々としてるぞ。
腕組みしながらオムツが替えられるのを待つ赤ん坊なんて、そうはいないだろう。
まぁそれはそれで不思議と可かったが。
「好き勝手言うけどよ、俺にだって家族や友達ってモンがいるんだぜ?」
「……それは……ううむ……」
シングはし考え、
「あ、じゃあアレだ。家族友人みんなまとめてこっちの世界に連れてこい」
「アホかお前は」
「じゃあ、もういっそアタシとサーガ様も貴様の世界に行く」
「何でそうなる!?」
「だってアタシはサーガ様が傷つく所なんて見たくない! そうだ、そうしよう! 萬事解決だ!」
「解決してねぇ! 向こう行ったとしてどうやって暮らす気だお前ら!」
「なんとかなる!」
「だい!」
「なるか!」
俺の住んでた國じゃ褐というだけでも目立つ。
それなのに、角やら尾の生えてるこいつらがまともに暮らしていけるはずないだろう。
「……というかそもそも、ロマンさんには帰れる保障が無いんですけどね」
「……そこは希的観測で行こうぜ……」
「何だ、宛も無い話だったのか。ビックリさせるな」
いや、まぁ魔王を倒すという宛はあったんだが……
それは、話すと「魔王様を倒すために訓練してただとぉぉっ!?」とかすげぇキレられそうなので辭めておく。
「これであれだな。安心してサーガ様のお世話役に勤められるな」
「……俺はついにお世話役に認定されてしまったのか……」
「ああ。サーガ様が『立派な魔王』となり、散り散りとなった魔王軍を再建できる様、盡力しろよ」
「サラッと魔王軍再建させようとか企んでるなお前」
「はうあっ」
全く、とんでもない事を言う奴だ。
まぁ魔王軍には魔王軍なりに々あるのだろうが、人間の敵対勢力の再建に手を貸す訳無いだろう。
「……ん……?」
ちょっと待て。
そういえば、こいつ魔王の息子って事は……
魔王になる素質がある……かも知れないんだよな。
……もし、もしも、だ。
こいつが將來魔王になったとして、その時俺が、こいつに「ちょっと負けてくんない?」と頼んだとしよう。
そしてこいつが、「いいよ、ぐえー」とか八百長の片棒を擔いで一芝居うってくれたら……
俺、元の世界に帰れるんじゃね?
そうだ。魔王を倒すという事以外條件は無い。
八百長はダメなんて言われちゃいないのだ。
つまり、俺がこいつを『親の言う事をよく聞いてくれる』立派な魔王に育てあげれば……
「……って、アホか」
「あい?」
「どうした?」
「いや、何でもない」
そんなん、何年かかるかわからない。
大、俺が元の世界に帰るためだけに、魔王を再臨させて良いわけが無いだろう。
……ま、案の1つとして、心のには留めておこう。
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※都市伝説や陰謀論、政治、スピリチュアルな話を元にした內容が主に2章から展開されます。実際にあった出來事などを用いた設定がありますが、あくまでフィクションとお考えください。 Lvはあるけどステータスは無し。 MP、TPあるけれどHP無し。 ”誘い人”と名乗った男により、わけが分からないまま洞窟の中へ転移させられてしまう主人公コセは、ダンジョン・ザ・チョイスという名のデスゲームに參加させられてしまう。 このゲームのルールはただ一つ――脫出しようとすること。 ゲームシステムのような法則が存在する世界で、主人公は多くの選択を迫られながら戦い、生きていく。 水面下でのゲームを仕組んだ者と參加させられた者達の攻防も描いており、話が進むほどミステリー要素が増していきます。 サブ職業 隠れNPC サブ武器 スキル パーティーなど、ゲームのようなシステムを利用し、ステージを攻略していく內容となっています。 物語の大半は、HSPの主人公の獨自視點で進みます。話が進むほど女性視點あり。 HSPと言っても色々な人が居ますので、たくさんあるうちの一つの考え方であり、當然ですがフィクションだと捉えてください。 HSPの性質を持つ人間は、日本には五人に一人の割合で存在すると言われており、少しずつ割合が増えています。 ”異常者”がこの作品のテーマの一つであり、主人公にとっての異常者とはなにかが話しのメインとなります。 バトル內容は基本的に死闘であり、そのため殘酷な描寫も少なくありませんので、お気をつけください。
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