文香と別れ、帰りの電車。16時半の電車に乗り、窓の外を見ると綺麗な夕焼けが見えた。

しかし、會社付近の駅から4駅しかない為、その綺麗な夕焼けを眺められる時間はなかった。

もうし見ていたいと思った俺は、駅前の公園へ。あそこは木々はあるが、近くにビルなどの遮蔽がない為、夕焼けなどの風景を見るにはうってつけだろう。

そして、俺は公園に寄り、以前座った場所と同じ所に座る。駅側のり口から近く、そこそこ木々もない。ここならいいじに見えるだろう。

その考えは見事的中。綺麗な夕日が沈んでいくのが見えた。

その風景を眺めていると、仕事の疲れが癒されていくようだった。

「──おや、朝倉さんじゃないですか」

い聲だが、何処か大人びた聲。俺はこの聲を以前にも聞いた事がある。

「……また會ったな。指名手配さん」

「あちらの世界の方から、事を聞いたのですか」

彼は、優しく微笑んでいた。それと同時に、俺を寒気が襲った。

彼は、前と同じ雰囲気ではなかった。以前より、何処か余裕があるような雰囲気があった。

次に彼にいつ會えるか分からない。ならば、俺が聞きたい事を、今聞いてみるしかないだろう。

「単刀直に聞きます。貴方の目的はなんですか？」

「本當に単刀直ですね。いいでしょう。貴方にだけはお教えしましょう。その代わり、他言無用ですよ？」

そう言って、彼はまた微笑んだ。

何故、俺にだけ教えてくれる？もしかして、何かの罠なのでは？

そんな考えが橫切ったが、今は報がない。しでも報が聞き出せるなら、聞き出しておいて損はないだろう。

俺は彼にを向け、話を聞く制になった。

「私の目標──それは、『復讐』です」

「復……讐……？」

「えぇ。私は一度、死んでいるのです」

衝撃的な発言。そして、理解が出來ない発言だった。

彼は一度死んでいて、その復讐をしようとしている……？

いや、だから新たな世界を作るのはおかしい。何も復讐出來ていないし、何より意味がない。

すると彼は目を閉じ、話を続けた。

「私はあの世界で見捨てられ、死んだ後魂だけとなりました。この世界で言う、幽霊みたいなものです」

「見捨てられた……？」

「えぇ。多くの暴行や、教育と稱し沢山の事をされてきました。私はその事を、何度も警察や施設に話しました。が、返ってくる答えは笑い者。誰も私を救ってなどくれませんでした」

あまりにも殘酷な真実。俺はその真実を知らず、彼を危ない事をする悪だとなからず思っていた。

彼は詳しくは話さなかったが、両親だけならここまで心は傷つかないと思う。つまり、周りの獣達からも暴行などをけていたと思う。

……彼は、辛い人生を送っていたのか。

「魂だけとなった私は、あの世界に居る事すら耐えられず、何処か別の世界に行く事を決心しました。その時、18歳になったらける試練の日がやってきたのです」

「18歳の試練……まさか！？」

その時、みぞれの姿が脳裏に浮かんだ。

確か、みぞれがこちらの世界に來た理由。それが、18歳になったら行う試練のようなものだと本人が言っていた。

つまり、彼の魂はその時にこちらの世界に來たのか。

「ご存知なら話が早いです。その時に私はこちらの世界に來ました。そして魂で彷徨っている時に、このの持ち主に出會ったのです」

「その、君のものじゃなかったのか」

「えぇ。このは本來、後數日保てばいいレベルの重癥でした。彼は両親からの待をけていて、意識不明の重癥だったのです」

このの持ち主も、彼と同じって事か。そして、待が酷いレベルまで達して病院送り。待されたまま放置された時間が長く、も神もボロボロだったという訳か。

「私は彼に提案しました。彼に自由を與える代わりに、私の願いを聞いてしい……と」

「それが、復讐だったのか……」

「えぇ。彼は、私の願いを聞く前から提案を了承しました。『どうせ死ぬなら、誰かの為に役に立ちたい』……と」

このの持ち主は、恐らく優しい子だったのだろうな……。死を直前にしても尚、誰かの為に役に立ちたいなんて普通は考えないだろう。

そして、その條件を飲んだ彼のを借りて今生きている。それが今の彼か。

「私は基本はこのの中で眠っています。二重人格……の様なものですね。名前もこのの名前を借りて名乗っています」

「そういえば、名前聞いてなかったな」

「華です。佐倉 華さくら はなと言います」

佐倉 華。それが今の彼の名前か。

初めは巫狐さんに伝えるつもりだった。しかし、この世界の事を絡んでいてはいくら偉い人であってもく事が出來ないだろう。

何より、俺が彼の事をあまり広めたいとは思えない。出來れば、穏便に解決してあげたい。それが俺の今の願いだった。

「さて……。私はそろそろ帰ります。夜遅くなってしまいますので」

「……なんというか、ありがとな」

「いえいえ、私が勝手に話した事です。気にしないで下さい」

そう言って、彼はこの場を去った。時刻は既に18時を回ろうとしていた。

俺も帰るか……。ここに居ても、何か進展がある訳じゃないしな。

……そういや、夕日あんまり見れなかったなぁ。