《逆転した世界で楽しんでやる!》オリエンテーリング
「柊 楓です。気軽に楓ってよんでね?」
五人一班で縦五列、橫は三十列ほど並んでいる比嘉谷小學生たちに自己紹介をする柊さん。かわいい。小さい子に対して慣れているような気がする。弟か妹でもいるのだろうか。家庭的なの子ってポイント高い。
柊さんの前にも何人か紹介されている。どれも西高の生徒だ。
おっと、僕の番に回ってきたみたいだ。子供たちの視線が一斉にこちらを向く。視線がもしも5.56×45ライフル弾だったら僕はもうすでに蜂の巣だ。元引きこもりの僕には注目されるのはしきつい。まあしかし、相手は小學生ガキ共なのだからそう張しなくてもいいだろう。
「七峰 命です。えーと、気軽にみー君って呼んでください。三日間よろしくね?」
ニコッと笑いかける。顔をし赤らめる子小學生もおり効果は上々だろう。第一印象よし、と。小學生たちは皆『よろしくお願いしまーす』と挨拶をしていった。
「お、命はみー君にしたのか。俺は前後 琉斗。気軽にりゅー君とでもよんでくれ。よろしくなっ」
そう言って軽く手をかし挨拶する琉斗。
「今日はたくさんの高校生にお手伝いとして來ていただきました。気軽に、と言っていましたが先輩です。しっかりと〇〇先輩、と呼ぶようにしましょう」
男教師にはーい、と返事をする小學生。これから班に分かれ自己紹介をするらしいが僕のけ持つ班は、男子二人、子三人のバランスのいい斑だ。
「僕は一ひといろ 真也しんやです。よろしくお願いします」
「俺は東山とうやま 広翔ひろとだ。よろしくなっ」
「私は伊丹いたみ 奈菜ななですよろしくおねがいします」
「あやは間宮まみや あやっていうんだー。よっろしくぅ!」
「……明石あかし 五十鈴いすず」
男子メンバーは、禮儀正しくお坊ちゃまのようなメガネ年真也くんと、活発で短髪の広翔君だ。子メンバーは大人しそうな奈菜ちゃん。お調子者のあやちゃん。そして最後に黒髪をばしお姫様カットにしている五十鈴ちゃんだ。
再び僕も自己紹介をする。
「七峰 命です。三日間よろしくね? みんなで楽しくやろう。さっきも言ったけどみー君ってよんでね」
「「よろしくお願いします、みー君先輩」」
どうやら僕の呼び方はみー君先輩に決まったらしい。みんなそろえて挨拶をしてきた。
ここでオリエンテーリングのルールを説明しておこう。小學生と高校生ははんでわかれ、それぞれ年の家敷地を探索する。
敷地には各地にクイズのとクイズに正解するともらえる食材の書かれたものが用意、設置され、ゴールした時に正解したぶんだけの追加食材をもらえる。何も得ることができなければコメとカレールーだけのむなしいカレーになる。追加食材にはタマネギやじゃがいも、牛などのていばんなものからなんとマスタードからレモンなどカレーには合わないだろうモノまである。
次々斑が出発していく中、僕の斑の番がやってきた。どうやら六〇秒ごとに出発しているらしい。玄関口前に居た僕らはそのまま坂をし下っていく。ちなみに、生徒には地図と館図が配られているが、僕達には特別にクイズの場所が描かれている地図を事前にけ取り、子供たちが危険な場所に行かないようにしてほしい。と、いわれている。
「クイズ、どこにあるかなー?」
「そのへんけばあるだろ。あー、もう疲れた」
「さすがにいくら広翔でも早すぎやしませんか?」
「あやはおなか減ったー!」
「まだ十時だよ、あや……」
奈菜ちゃんの一言から始まり、奈菜、広翔、あや、真也の四人はワイワイガヤガヤと楽しんでいる。が、五十鈴はひとり僕の橫を歩いていた。初めは僕の後ろに歩いていたのだが、僕の視界に居てほしい。ということで橫で並んで歩いてもらっている。五十鈴ちゃんは四人にハブられている様子もないし、五十鈴自が一人でいたいからこうしているようなじだ。どうやら四人は僕らのことをチラチラとみているし。そのうち子二人はしうらやましそうな目でこちらを見ていて、それを勝ち誇ったような顔でむふん、としているが。なかなか神経図太いなこいつ。
この、五十鈴は終始無言で歩いているのだがときおり訳のわからん替え歌を歌いだしたりする、なかなか特徴のある子だ。それでいて人なので、もう二歳ほど歳があれば彼にしたいなぁと思っていたりする。僕は大きなお友達ロリコンではないので小學生にはしない。
「で、ででで、で、で、で、でででででで、じーんせいなーんにもしないで、いーきてーゆーこうー♪」
某水戸圀公のテレビドラマの主題歌で全世界共通自宅警備員ニート宣言をする五十鈴。やはり五十鈴はし、いや大分人と変わっている。
「みー君先輩みー君先輩」
「どうしたの?」
とうやら四人が全員同じ方向を指している。どうやらクイズの書かれた看板を見つけたらしく指さす方を見るとちょっと高い丘の上に看板がポツンと立っていた。
「よし、さっさと終わらせよう。行こうぜ」
と、広翔君が駆けだした。それを『待ってください、なぜ走る必要があるのですか!?』と、真也君も広翔君をおい走る。それにつられて子二人も走り出していた。
「どんな時でもこのあやが一番なのだ!」
「あっ、まってよあや!」
二人殘された僕ら。どうにか五十鈴に仲良くしてもらいたいと思った僕は、
「五十鈴ちゃんは走らないの?」
「……走るのが面倒くさい。私をかすには報酬が必要」
「……じゃあジュース僕に買ったらジュース一本でどうだ!」
「ジュースごときでは駄目。第一ばれたら面倒なことになる」
確かに、と思う僕。教師陣の中に逆三角メガネのいかにもザマス口調が似合う教師がいた。たしかにあの人厳しそうだな。しかし平然と報酬を要求することがあたかも當然のようにふるまっている五十鈴をみるとなぜか報酬を支払わなければならないと思ってしまう。
う~ん。品では駄目なのだから今與えるものでは行為で払わなければならない。っは!! まさか夜部屋に呼び出されてあんなことやこんなことを要求されるのか!? そして逆らえずにいる僕はベットに押し倒されて……ビクンビクン、悔しい、でもじゲフンオホゴホガフゲフン! 僕は小學生はストライクゾーンにっていないので大丈夫だ。しかしなぜエロ方向に向かうのか。いやだって膝枕や頬にキスをするならいざしらずあんなk……ゲホゲホ。ん? 膝枕? おおその手があったのか。
よし、ここは大人の余裕だ。
「うーん、膝枕でどう?」
「それ本當?」
ジュースごとき、とゆったりと歩いていた五十鈴だが勢いよく膝枕に食いついた。
「うん? ジュースが、ていうかはダメなんでしょ? なら膝枕しかないかな~って」
「言質はとったからね」
「じゃあ行くよ。よーい、ど……ってあれ!?」
ドン、と言いかけていたころにはもうすでに五十鈴はゴールクイズまでたどり著いていた。それも殘り三分の一といったところを走っている三班子殘り計二名を抜かしてだ。うそぉ……。
僕も走ってはいるものの引きこもりであった時の運不足もあり、男子にすら追いつくことができなかった。いくらこの世界で子の方が力や能力が優れているとはいえ、小學六年生に負けるとは思わなかった。悔しい。
息絶え絶えになっている僕は犬のようにゼーハーゼーハーしながらも、
「ハァ、ハァ、足早いね、五十鈴ちゃん」
「には、やらねばならぬ、時がある。一句。膝枕はもらった」
と、表に変化のない彼がドヤ顔をしながら答えた。季語がないぞ、おい。
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