《気なメイドさんはヒミツだらけ》夢野さんは突然すぎる
「稲本君、ちょっといい?」
「……誰だっけ?」
「夢野よ!夢野ありす!あんたのメイドから席を強奪された夢野ありすよ!」
「すいませんっしたぁ!!」
俺は機に頭をぶつける勢いで頭を下げた。
いかん、すっかり忘れていた!うちのメイドがほんっとうにすいません!
念の為紹介しておこう。この子は夢野ありす。霜月さんに席を強奪されたクラスメートである。
霜月さんとは対照的なふわふわした長い茶髪は、れたら気持ち良さそうだ。絶対やらないけど。
顔立ちもそこそこ可く、スレンダーな型と腳が素晴らしい。
ちなみに、去年同じクラスだったこともあり、そこそこ流がある。フラグは立っていないが……。
そんなじで、謝罪のついでにモノローグで紹介を済ませていると、彼がやや引いている気配がした。
「ちょっ……そんな大聲でやめてよ。皆見てるじゃん……べ、別にいいわよ。気にしてないから……」
「そっか。ならよかった。霜月さんなら、今職員室に呼ばれてるけど、何か用?」
「えっ?職員室って……あの子また何かやらかしたの?」
「いや、メイド服のことで呼ばれてるだけ」
「……ああ、なら納得」
納得……しちゃうのか。仕方ないか、このクラスはだいぶ覚が麻痺してるし。
まあ、もうじき『論破』して帰ってくるだろうな。もしくは腕相撲で撃破してくるだろう。うん、どっちでもいい。俺に迷がかからなければ。
「それで、夢野さんは何の用?」
「ああ、忘れるところだったわ。ちょっと今日の放課後付き合ってくれない?」
「……ごめん。今好きな人いるから。」
「そういう意味じゃないわよ!アンタみたいな変態好きになるわけないじゃない!」
「誰が変態だ!誰が!」
「アンタよ!學校にメイドをつれてくるメイドフェチだって評判よ!」
「ぐっ……」
それに関しては反論できない。かくなるうえは……
「それで、夢野さん。何の用だっけ?」
「気持ちいいくらいの話題転換ね。ま、いいけど。ちょっと買い付き合ってよ」
「……はあ?何で俺が……」
「荷持ちしてくれたら、アンタのメイドの件は水に流すわよ」
「了解しました」
くっ……メイドの失態は主人の責任かもしれないが、何で俺が……!あとで霜月さんに仕返ししてやろう。風呂覗くとか……いや、やめておこう。バレたら間違いなくただのにされてしまう。
すると、ちょうど霜月さんが教室にってきた。
「た、ただいま戻りました……主人様」
「先生から何言われたんですか?」
「……も、問題ありません。論破、してきました」
「…………」
絶対に噓だ。何なら今度目の前で論破してもらおう。どんな地獄絵図が展開されるか楽しみだ。
霜月さんは、俺と夢野さんを互に見て、不思議そうに首を傾げた。
「主人様……の子と話してるなんて、珍しいですね」
「やかましい。ああ、霜月さん。今日俺、放課後用事があるから」
「……主人様、ご、ご冗談を……」
「いや、冗談じゃねえよ。てなわけで、今日は一人で帰ってください」
「……私も……今日はデート」
「対抗しようとして変なウソつかなくてもいいですから」
「わかりました……では、お気をつけください……夢見さん」
「どういう意味だよ!」
「てかあたしの名前間違ってるわよ!」
「あわわ……!いえ、その……主人様と二人きりだなんて、夢山さんが心配と言いますか……」
「いい加減、俺をの権化みたいに言うのをやめろ!」
「だから、まだ私の名前間違ってるわよ!」
「あわわ……あっ、チャイムが鳴りましたので、席に……」
「「鳴ってない!」」
*******
放課後……。
俺は夢野さんと並んで、駅前のデパートを歩いていた。ざわざわと混んではいるものの、その喧騒もどこか遠い。
いかん。突然のラッキーイベント発生で、授業にまったくがらなかったぜ。
「まったく、アンタんとこのメイドはどうなってんのよ」
「夢見さんちのメイドほど優秀じゃあないかもな」
「うちにメイドなんていないわよ!ていうか、アンタまで名前間違わないでよ!」
「失禮、噛みました」
「噓つき。わざとでしょ……って、このやりとりやめたほうがいいわ。んな意味で」
「はいはい。それはそうと、買いってどこに行くんだ?」
「ついてくればわかるわよ」
……やばい。
これはモテ期にって、が攻めてきたのかもしれん。
まさかその第一弾が夢野さんとは……悪くない。むしろいい。
「……何ニヤニヤしてんのよ。気持ち悪い」
「いや、ほんのちょっと空想に浸ってニヤニヤしてただけだよ」
「それが気持ち悪いのよ。たまに教室でもなってるから改めなさい」
「はい」
マジか。そういうの人から教えられると、滅茶苦茶恥ずかしい!
「てか、そんなの見ないでくれよ。あとその場で教えてくれればいいと思うんですが」
「いやよ。私まで変人扱いされそうだし……あ、著いたわ。ここよ」
「ようやく著いたか……は?」
目をぱちくりさせ、何度も確認してみるが、現実は変わらない。
夢野さんが指差したフロア。それは……下著屋だった。
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