何だか木村先生の後退した前髪部分が心なしか薄が生えて來たようなじをけた。というか、眉間の縦皺たてじわがすっかり無くなったせいかもしれないが。

「そうですか。香川外科の醫局ではウチの科自が責められているわけではないのですね」

なんだかぱあぁっとが差したような笑顔を浮かべている木村先生には申し訳ないけれど。

「いや、醫局ではそういう雰囲気ですけれど……。香川教授とか黒木準教授、そしてあの事件の功労者でもある田中先生のホントののは分からないです。すみません……」

ウチの科ではそういうことは聞かないけど、ほかの科では醫局で教授が言ったのがタテマエにしか過ぎずに、教授執務室ではボロっくそ言われていたとかいうウワサは聞いたことがあった。

風通しの凄く良い香川外科は病院でも珍しい醫局ではあるものの「ここだけの話」とか言っている可能は０ではない。まあ、１か２とかのレベルだろうけど。

「白河教授も科の田教授や救急救命室の北教授に『教授とはどうあるべきか』を習っている最中さいちゅうでして、しかも香川教授に合わせる顔もない狀態です。心からのお詫びと反省の弁を申し上げたいと醫局一同思っているのですが、なかなかそんな機會はないですよね。

久米先生、もし機會がありましたら脳外科一同が謝っていたとお伝え願えれば幸いです」

深々と頭を下げられてしまったが、そんな機會が來るとも思わなかった。

田中先生とかなら救急救命室の凪の時間とかに話せるけど、香川教授や黒木準教授などは教授総回診と手室でしか顔を合わせない。患者さんに関することなら話せるし、そういう研修醫が拾った報でも有益なモノはたくさんあるのもご存じだ。

でも脳外科の話題なんてとてもじゃないけど口に出せる雰囲気ではない。

「一応努力はしてみます。してみますが、あまり期待はしないで下さいね。

一介の研修醫ごときにそんな大任が果たせるとも思えないので。

その點はお分かりかと思いますが」

井藤はともかくとして、木村先生も研修醫時代が有っただろうし、そんな職階の時に教授に直訴なんて出來るわけはないのも知っているハズだ。

「はい！それは存じていますが、手スタッフにも選ばれている上に救急救命室行きという『醫局のエリート・コース』に乗っている久米先生のお力をお借りしたいのです。

ああ、岡田君」

いきなりの指名にアクアマリン姫が驚いたじの表を浮かべている。

それは。