「何だか、香川教授の執務室なら、違った意味で怖いと思います。

けれど……」

アクアマリン姫は適切な言葉を探すようにピンクの綺麗なをいったん閉じている。

の端にしだけ付いている生クリームが逆に可くて、ドキドキしてしまった。

このまま――田中先生特製のデートマニュアルが絶対に効くと思うので、その點は滅茶苦茶心強い――付き合うことにでもなれば、「初めてのチュウ♡」も出來るハズで、この綺麗なにオレのが重なったらと妄想するだけで、心臓が破裂しそうだった。

「初めてのキスはレモンの味」とかって何かで読んだ気もするけど、岡田看護師の場合は淡いイチゴの味のような気もする。、

いやいやいや！！そんな未來のことを考えると心臓が保たないような気がしたので、違うことを考えよう！！香川教授の執務室には局の挨拶の時に呼ばれたことがあったけど、それ以降は行っていない。

でも、呼ばれるのは凄く怖いのも確かだった。

雲の上に呼び出されると思っただけで、岡田看護師のことを考えている時とは違った意味で心臓が破裂しそうになる。

そんな冷たい手で心臓を鷲摑わしづかみにされるようなおっかないコトは絶対に嫌だった。

「香川教授の執務室は、きっと想像通りだと思いますよ。アカデミックな靜謐さが漂う、本當にキチンと整頓されていました。それに家も適度に古びて――というか、由緒のある神社とかお寺の佇まいみたいなじでしたし。

まあ、一度しか行ったことはないですし、次回呼び出される時は叱責だと思うので行きたいとも思いませんが、でも神社仏閣を観しに行くようなフラットな気分で行くのなら、また行きたいかもです……」

嫌なのは、あの重厚漂う室で「叱責」されることダケだったのも事実だ。

同級生とかには「外科醫は荒っぽいので苦手」とか言う人もいたけれど、香川教授は全くそんなことはないし、むしろ怒ったトコとかは想像出來ない。

普段から靜謐な表を端整な顔に――天は二を與えたってカンジだ――浮かべているだけのような気がする。まあ、教授だって人間だから、時には怒る時もあるのだろうけど、全く想像出來ないというか。

「戸田教授の部屋は、もうぐちゃぐちゃで、どうやったらあんなに雑になるんだろう？って白河教授が呆れていました。

ただ、めったやたらに積んである書類とか本とかも、戸田前教授『だけ』にはキチンと分かるらしくって……」

え？と思った。