《転生しているヒマはねぇ!》48話 歓迎
「移魔方陣は、村の中にあったんですね」
まだ、顔は赤いままだったが、ソレイユはようやく顔を上げて、オレたちを取り囲む妖たちに目をやる。
「……いや、もしかしたら村ごと移してきたんじゃね?」
オレの言葉にソレイユの肩に腰かけたシャーロが拍手をする。
「さすが元植部監視課! わかってるじゃん、ダイチ!」
キョトンとしているソレイユに、オレは推測混じりの説明をする。
「迷いの森の植は、ほとんどが自分で移できるんだよ。
たいていの場合は同じ所でじっとしているらしいけどな。
ここからは、オレの推測だけど、大森林が構されているだけあって、ここら辺の気候や土壌は、植さんにはありがたい場所だ。だから、植自に生まれた場所からくメリットはほぼないんじゃないかな? 
だから、植が移する時は、別の意思が介してるんじゃないか? 例えば妖……とかな」
「うん! ダイチ、ほぼせいか〜い♪
あたしら妖てのはね。力の塊である霊の加護をけて生きてるわけ。
水、風、土、なんかのね。それらの力を、植さんたちの為に使ったりしてあげる替わりに、あたしたちに害を與えそうな相手から、を隠す手伝いをしてもらってるって訳よ。
他にも、本當に迷い混んじゃっただけの子を出口に導したりなんかもしてるね。
そういうのをみんなに移してもらって、やってるの!」
「それが、迷いの森の正……ということですか」
「そういうこと。霧なんかは霊の力を借りてだけどね」
目を丸くするソレイユに、シャーロが自慢気に頷いてみせ、スッと立ち上がる。
「さぁ、みんな! あたしたち妖の村の記念すべき、9番目と10番目のお客様。ダイチとソレイユだよ!」
シャーロの掛け聲に応え、先程以上の歓聲が、村中を埋め盡くす。
「「「「「ダーイーチ!!!!!」」」」」
「「「「「ソーレイユ!!!!!」」」」」
大漢字ふりがなおお! なんか、すごい歓迎してくれてる! 正直嬉しい!
「「「「「ダーイ・・・」」」」」
「「「「「ソーレイユ!!!!!」」」」」
「「「「「ソーレイユ!!!!!」」」」」
ん?
「「「「「ダ・・・・・・」」」」」
「「「「「ソーレイユ!!!!!」」」」」
「「「「「ソーレイユ!!!!!」」」」」
「「「「「ソーレイユ!!!!!」」」」」
え?
「「「「「ソーレイユ!!!!!」」」」」
「「「「「ソーレイユ!!!!!」」」」」
「「「「「ソーレイユ!!!!!」」」」」
「「「「「ソーレイユ!!!!!」」」」」
「いや! もうちょっと、オレも歓迎しろよ 」
思わずぶオレの周りを、沢山の妖たちが笑いながら飛び回り、シャーロにいたっては、空中で腹を抱えて笑っている。
……しまった。擔がれた。
「アハハ! ゴメン、ダイチ♪ 怒んないでよ。
あたしたち妖にとって、イタズラってのはさ、噂話と同じくらい好なのよん♪」
「ぬぅ~」
シャーロが満足気に、オレの肩にとまってニコニコしやがる。
「いや〜、ダイチはイタズラしがいがある魂で良かったよ。
ノラちゃんとこの記者さんたちは、冥界暮らしが長いからか、反応がいまいちの時も多くて。
それでもましだとは聞いてるんだけどさ。
やっぱり現界を忘れてない魂は、格別だよね」
譽められてんだか、馬鹿にされてんだかわかんなくて、ムスッとしてると、ソレイユが完璧な乙の微笑を俺に向けてくる。
「それは、ダイチさんの素敵なところです。
私たちの、どんな言に対しても、全力で応えてくれます。
真剣にだったり、冗談であったり、よく分からない不思議対応だったりもしますし、手加減してほしいなって思うときもあります。
けれど、やっぱり、嬉しいです。
この人は正面から、真っ直ぐにぶつかって來てくれる。私を見てくれてる。私をけ止めてくれる。
私の心が、魂が寂しくならないように、守ってくれてるって。
そう信じることができるから……」
靜まりかえった。
あれだけ騒がしかった妖たちが、ソレイユが語り終えると同時に、ピタリと騒ぐのを止めた。
シャーロでさえ、オレの肩で黙って目を見開いている。
これまでとのあまりの違いに、ソレイユがオロオロし始める。
「あ、あれ? 私、なにかマズイこと言いました 」
可い♪ 
男だと思ってた時も、ドキドキさせられたことはあった。
あくまで、ほんのしだけだ!
だがしかし オレの語BL突の危機を回避した今!
聲を大にして言いたい!
ソレイユは可い♪ 
なに銀髪ショートって? 反則じゃね? まさしくファンタジー♪
そんなオレの気持ちを代弁するかのように、超大歓聲が靜寂を破った。
「ソレイユ、カワイイ!!」
「ラブラブ〜♪」
「ダイチ、されてる〜!!」
「ソレイユちゃん、こっち向いてー!」
「チューしろーっ!!」
「「「「「 !!!!! 」」」」」
一番最後のシャーロの発言に、全ての妖が反応した。
耳をつんざくチューチューコール!
「「「チューしろーっ!!!」」」
「「「おでこにチュ!!!」」」
「「「ほっぺにチュ!!!」」」
「「「「「チュー、チュー、チュー!」」」」」
オレは、みんなの期待に全力で応える男、ダイチ!!
目をつむり、あえてコールになかったを突きだす。
ソレイユの泣きそうな聲が、オレの耳を打つ。
「む、無理に決まってるじゃないですか!
みんなの前でなんて、恥ずかしすぎますよ!」
……後で、二人きりになったら、頼んでみよう。
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