《転生しているヒマはねぇ!》79話 仲良し夕食會
「皆、じゃんじゃん食えよ。食材はたっぷり運ばせたからな!」
マーシャがご機嫌な様子で、率先して網の上に食材をトングで並べていく。
現在夕刻、我が家の庭で絶賛バーベキュー中。
人も増え、立食パーティーのようになっている。
レイラさん、チェリー、プルルさんの書組。オレの大親友ンボさん。ノラ夫妻……奧さん五人だが。
それから先日の冥界説明會で頑張ってくれた、神類部のシャンセ係長を筆頭とする企畫係の面子と、オレの部下である対応係のメンバー。
魂事部のブチブチブッチ部長の姿も見える。あの方には、神類部の俺の上司の二人の態度に関して土下座で謝られた。
別に彼が悪いわけではなかったのだがな。さすがにあの二人の姿は見えない。オレとしては神様たちへの対応を反省してくれるのならば、思うところはないんだがな。たぶん聲をかけてもビビってこないだろう。マーシャの創った質壊すような力ぶつけちゃったからな。
本日、こんなパーティーをやる予定はなかったんだ。
発案者はもちろんマーシャ。
俺がマーシャの魂魄に押し潰され、危うく消滅しかけてから、マーシャはとてもご機嫌である。
別にアイツが、オレを苦しめて喜ぶ過度のSというわけではない。
マーシャにとっては、いつもなら四魂で夕方まで遊んで終わりだったところが、今日はオレと嫁さん合わせて八魂全員で遊んだという認識のようだ。
家族として迎えれられた。そんな印象を抱いたのかもしれない。
アイツの親父さんは仕事で忙しいみたいだし、お袋さんは消息不明。
それでもレイラさんがいる訳だが、姉という立場で、どちらかというと可がっている側だ。一緒になってはしゃぐというじでにはなれないのだろう。
普段から好き勝手しているように見えるマーシャ。でもそれは、もしかしたら寂しさの裏返しだったのかもしれない。
だから全員でもみくちゃになったあの時間が、とても嬉しかったんじゃないかな。
ひと仕事終えたマーシャが、ホクホク顔でオレに歩み寄って來る。
純粋にキラキラ輝く碧い瞳が眩しすぎて、真っ直ぐにみれない。
うん。オレ反省。すごく反省。八つ當たりはよくないよね。
神と天使のラブコメは、マーシャにまったく関係ないもん。
リア充死ねとか思ったけど、考えたらいま、オレがリア充だもんね。リアルで死んでんだけどさ。
それにこいつには冥界説明會で助けられている。
アイツの魔力のこもった巻のお蔭で、その後のスケジュールが滯りなく進んだと言っていい。
謝こそすれ、八つ當たりして良い相手ではなかった。
「マーシャ。説明會の時の巻。アレ、ありがとな」
「なんじゃ、急にあらたまって」
隣に立ったマーシャが、これまで通り三子魂を頭と両肩に乗せたオレを、眉を寄せて不思議そうに見上げてくる
「いやさ。お前の渡してくれた巻。あれのお蔭で、転生界に反のもってた神が、こっちへの態度をだいぶ和らげてくれたんだよ」
俺の言葉にマーシャが満足気に頷く。
「そうじゃろう。そうじゃろう。
儂が心を込めて書いた謝罪文じゃ。さぞかしきゃつらのをうったであろう」
「謝罪文? そんなもの書いてねえだろう。書いてあったのは料理名だぞ。酢豆って」
「すまめ? なんじゃそれは? するめの仲間か?
儂は、お前が教えてくれたヒラガナというもので『すまぬ』とかいたのだぞ?」
……馬鹿かコイツは! クソッ! 『ぬ』と『め』か。いままで気づかなかった自分が恥ずかしいわ!
そもそもマタイラの現界の神様たち、ニホン語読めねえだろうが!
落ち著け、オレ! コイツが馬鹿なのはいまに始まったことじゃない。
大事なのは言葉じゃない。心だ!
そう。神々は書かれていた文字には関係なく、こめられた魔力に、こめられた気持ちにしたんだ!
「そ、そうか。いやいいんだ。大事なのはお前の魔力だったから」
「魔力? ああ、もしかもしたらってしまったかもしれん。
一文字書くのに一時間はかかったからのう。集中しすぎてしまった。
れるつもりはなかったんじゃが、それはすまんことをしたのう」
「……お前たち、やっておしまい!」
オレはマーシャをビシッと指さして、三子魂に命じた。
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