《転生しているヒマはねぇ!》85話 魂の洗濯
「アチキも仕事に戻るでござんすよ。姐さん、ダイチさん。後でアチキの働きっぷりも見にいらしてくださいな。それじゃ、ごゆっくり~」
界長室から退室したオレたちにそう告げると、カレンは金のロングヘアーと九尾のシッポをフリフリさせて立ち去って行く。
「キャハ♪ やっと二人きりにもどれたねぇ~。それじゃあ、早速地獄巡りといきますか」
チェリーが嬉々として俺の腕を引いて歩きだす。
「なあ、結局地獄ってなにすんの。悪いことした魂に罰與えて改心させんの?」
「う~ん。確かに悪いことしたから地獄に來てるんだけどさ。目的は改心させるって言うよりも、大きく黒く汚れちまった魂をさ、洗ったり削ったりして元のきれいな狀態に戻すことになるかね~」
「ふ~ん。魂の洗濯みたいなもんか。でも魂ってさ、なんか火の玉っぽいから洗ったら消えちまいそうな気がするんだけど」
「キャハ♪ 面白いこというねえ、ダイちゃんは。確かに似てなくもないけど、魂は水かけたって消えやしないよ。そもそも水で洗うわけじゃないしさ。おっとこの部屋から見ていこうか。アタシらは魂の汚れ合を『穢けがれ度』って言ってんだけどさ。ここは比較的『穢れ度』の低い魂が洗われているところだね」
と言って大きな扉の取っ手に手をかける。って言うか地獄界の扉でけえな。全部両開きだし。
まあ地獄界って天井自高いんだけどね。4・5mはあるんじゃないかな。その天井近くまでドアの高さがあるんだ。アダイブ界長も長的には2mは越えてるように見えたけど、あの人が使ってるにしても大きすぎる気がする。チェリーはその大きくて重そうな扉を苦も無く押し開く。
「おお、そこ! 浮いてくんじゃねえ。全部浸かるんだよ。全部!」
扉が開け放たれたとたん怒鳴り聲が耳に屆く。
そこには競泳用50mプールみたいのがあって、そこが白っぽい霧みたいなので満たされているんだが、そこから黒い魂が浮いてくるたびに、このり口から見て左右に一人ずついるニホンでいうところの二本角の赤鬼が、長い鉄棒で霧から浮き上がろうとする魂をぶっ叩いては霧の中に沈めるということを繰り返している。
その赤鬼がとんでもなくデカい。アダイブ界長よりも縦橫幅全てにおいて、1.5倍はある。
「うわー、地獄界ってあんなデカい仮いるんだ。多いの?」
「そうだね。ああいうのは多いね。魂が逃げないように監視する役目もあるから、大きいほうがなにかと便利なんだよ。そう考えると仮はつけた側の影響もけてるのかねえ。でもアタシは大きくなんなかったし。もっともアタシは飛べるんだけどね。カレンはカレンで知魔法も得意だからね。大きくなくても、監視という點では別に困んないのさ」
そっか。別に仮つけてから仕事振り分けるんじゃないものな。各界に送られて責任者が仮をつけるって言ってたか。そうなるとつける側も仮に影響與えてそうだな。そう言えば。カレンもノラが仮つけたって言ってたけど、アイツも嫁さんたちもシッポはえてないもんな。ノラの趣味なのかな? マーシャの場合は、自分で考えるのが面倒だからつけられる側に丸投げしてるだけって気もするが。
「ん? おお。チェリーの姐さんではありませんか。そう言えばカレンちゃんが近々お越しになると言ってましたな」
「うむ。言ってた。言ってた。はい、そこ。浮いてこない!」
二魂の赤鬼が仕事の手を休めずに、朗らかにチェリーに聲をかけてくる。チェリー、人気者っぽいな。明るいし良いヤツだからな。元悪魔族だけど。
「ああ。久しぶりなのさ。こっち、アタシの良い魂で、ダイちゃんって言うのさ」
「どうも。ダイチです。こんちは」
「おお。姐さんに見初められるとは、たいした仁だ」
「うむ。驚きだな。はい、そこ。他の魂の上に乗らない!」
右の赤鬼が、他の魂の上に乗っかってくつろごうとした魂を叩き落す。左の赤鬼もプールの縁から這い出ようとした魂を霧の中に沈める。
「この白い霧って、もしかして魔力?」
チェリーにしがみつかれたまま、俺はしだけプールに近づき、白い霧を眺めながら尋ねた。
ニ魂の赤鬼が俺の質問に答えてくれる。
「おお。よくわかりましたな。冥界の魔力を濃したモノになります」
「うむ。現界から戻った魂は現界の魔力に染まっていますので、まずはこうして冥界の魔力を魂になじませてやるのです」
「とは言ってもさ。大きくなって、より重度の『穢れ度』になっちまった魂は、こっちの魔力を表面で弾いちまってね。け付けないのさ。だからまずは表面を削ってやったりしなきゃいけない」
「へえ~。全部の魂が最初にここにくるわけじゃないんだ」
「おお。まさしくその通り。地獄界に來られた時に、転移の間でく床をご覧になったと思います」
「うむ。あのく床で最初に運ばれるのは選別の間と呼ばれるところでして。まずそこで送られてきた魂を、どこの処置の間に送るかを決めることになっているのです」
「そういうことさね。さっきも言ったけど、ここは比較的軽度の『穢れ度』の魂が送られてくるのさ」
「なるほどね。ところでどれくらいこの霧にひたすの」
「おお。言っておりませんでしたな」
「うむ。ざっと100年くらいですな」
うわ。長っ! そりゃあじっとしてられないよね。俺は何度も魔力の霧から出しようとしては、二魂の赤鬼に押し戻される薄黒の魂たちにほんのしばかり同した。
「さて、そろそろ次に行ってみようか。二魂とも仕事の邪魔してわるかったね。アタシらはもう行くよ。説明してくれてありがとなのさ」
チェリーの言葉に二魂揃って破顔する。
「おお。姐さんのお役にたてたのなら、これ以上の喜びはない」
「うむ。お二人ともごゆっくり地獄巡りをお楽しみください。はい、そこ。他の魂をこちらに投げつけない!」
いや、本當にチェリー慕われてるな。面倒見もいいもんなコイツ。オレも散々助けてもらってるし。
謝の念も込めて、部屋の外へとオレを引っ張っていくチェリーの頭をでた。
「どうしたのさ、ダイちゃん」
「いや。チェリーはすごいなと思って」
「へ? よくわかんないけど、惚れなおしたかい?」
チェリーが悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「おう。ちょっとだけな」
「ちょっとは余計だよ!」
文句を言いながらも、チェリーは満更でもないといった様子で、オレに頭をでられ続けていた。
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