《俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。》031.アシスタントとは何をするのですか……?
まだ暑苦しくない気溫、さほど生活に苦難を要しない度。そして午後3時という最も世界が平穏としている時に俺はその部屋にいた。
背後からが差し込み、悠々と俺を眺めているは、バリバリの現役小説家、如月桜こと水無月桜。
 まるで自分がこの部屋の主かのような佇まいで(これは俺の見間違いかもしれないが)、椅子に座り、俺に案じてきたのだ。もっと端的に言えば、まるで裁判長が被告人に判決を下すように見える。
どうして俺が容疑者なのかは置いておいてだ、つまりは俺に異論の余地なく、こうしろと命令されたのだ。
「明日から、あなたが私のアシスタントマネージャーよ」
俺はまず、水無月に目線を合わせた。そして次に自分の背後を確認した。
その言葉の行先が本當に俺なのか、それとも俺ではない誰かなのか。だが前者のようだった。
「どこを見ているのかしら、この部屋にはあなたしかいないと思うのだけれど。あ、そうね、あなたのお仲間ならその辺にうろうろしているものね、これは失敬失敬」
誰に対して敬っているのか全くもって理解できないが、十分俺のことを昆蟲呼ばわりしているのは伝わる。なるほど通常運転まっしぐらだ。
ひとつコホンと咳ばらいをしてから、なるべくこの神々しいに分かりやすく答えた。
「さっきのをどうでもいいと認めてしまうのも問題だが。今はどうでもいい、とどのつまり俺が……あんたのアシスタントになるということか?」
「そうよ」とすぐさま回答する水無月。
そこで俺は「よし分かった、手伝ってやろう」と否定せずにすんなり承諾した方が良かったのだろうか。他人の願いをけれるのは事この上なく簡単なことだ、なぜなら願う者の思い通りになるからだ。
しかもそれこそが、他人との隔絶も生むことはない方法であるし、俺の面倒なことを避ける主義にも反しない。だから答えるべきだったのだ。YESと。
「斷固拒否するッ!!」
ポケットに両手を突っ込み、目線だけを日によって照らされている神の瞳に合わせる。まるで従順な下部だった人が、反逆せしめようとしている図である。
すると水無月はパソコンのデスクトップから目線をこちらにずらし(というかそもそもこっち見てなかったんですね……)、小さな溜息を溢してから、応えた。
「そうなの?ならあの話はなしってことにするわ」
あの話、それは俺が責任者でもある新聞部の記事作の話だ。この水無月桜という奴は俺よりも小説家になって長い(というか俺はまだ仮小説家だが)。
その分、このの文章を作る能力は類まれないものの才能の持ち主だ。あの面倒なめ事騒19話~24話があったことがそれを証明している。
だからこそ、この大先生には手伝って貰わなければならない。なんて卑怯な手を……
「すみませんすみません、分かりました。やればいいんですよね、あなたがおっしゃったそのアシスタントっていう作業を」
もはやそこには先の仁王立ちした男はいない。いるのはへりくだって話しかける部下のような男だけだ。
「どうしていきなり敬語を使い始めたのか疑問の余地が殘るのだけれど、別にいいわ」
と俺の方も別の疑問が生じた。それはつまり、
「つーーか、アシスタントって何やるんだ?漫畫とかなら分かるけどよ、小説ってのは作者が書かなきゃならないんじゃないか?」
そう、どんな仕事をするのか、容が思い浮かばかったのだ。たとえ作品の補助をするといった名前アシスタントだとしてもそれが的にどんなことをするのか、俺にはししか思いつかなかった。し、それは水無月や編集者がいる前で、考えたことを呟いただけのことのみだ。
「そうね……」
俺の思考を遮って「あなた、それぐらいも分からないの?」なんて罵倒するのかと思ったが、彼自も悩みの種らしい。
「的なことは決まってないのだけれど……」
決まってないんかい。
「私の作品について批評してくれるぐらいかしら」
まるっきり考えてたことそっくりで「ぶふっ」と吹きそうになったが、満面の笑みで思い留めた。
「そ、そうか。ならこの前レストランでやったようなじか?」
俺は予想した答え、要は絶対正解の自信ある回答を繰り出すが、この世はそんな単純構造なのではなく複雑化した巨大な迷路のようなものらしい。人生そううまくいかないのはよくあることだ。
「……それとはまた別ね」
正解ではなく、不正解と伝える言葉が彼の口から吐き出された。だが、確証は得られないような、ある合の不安定さを持った聲の調子であったようにもじられて、俺にはどことなく彼らしくない違和を覚えた。
どこが違うのか?どうして違うのか?何よりどうしてそんなに聲が違うのか?
俺は聞きたくてならなかったが、
「やっほーーい!!今日も元気してる?どうですかなあ?」
エンジンを空ぶかししたようなテンションの高さ。気というレベルのさらに上を行くようなエネルギーの持ち主に俺はしばかり、溜息をつく。
果てしない明るさ、こいつがいれば暗い夜道でも街燈代わりにり得るんじゃないかと思ってしまうほどの格。神無月茜だ。
「よっ、神無月。今日も、というか今週も元気だな」
「いやいやーー、華の青春をだらだらと過ごしていたらなんか勿ないなってじてねえ」
「だからこうやって挨拶しようって決めた!!」
右手の指をピースサインにしながら俺に見せつけてくる。神無月本もを張って堂々とした風貌だ。
というかだらだらとは。俺のモットーを全否定されたような心地だが、別に反論するまでもない。何せ生きていく場所が違うだろうからな。いや次元だろうか。
「そうかい。なら三日坊主にならない程度で頑張れよーー」
俺はそんなに興味がないようなエールを送る。言っておくが別にこのに対して恨みを抱いているとか、何か腹立たしいことがあったわけでもない。
ただ、価値観が違うのだ。そう、何かを考えた時に思いつくものがこの、神無月とは異なっているということだ。
「オッケー(^^♪)三日は持つように頑張るよーーうっと」
「んでどしたの?そんな険悪なムードしてさーー」
背筋が凍てつくように冷たいのは気のせいだろうか、いや気のせいなはずがない。背後からずっと冷徹な眼差しが突き付けられているのがよく分かる。
要はさっきの話は他言無用だということだろう。確かにこれから出版させていく小説の容がれてしまうということは危険だ。公式でネタバレしてどうするって話だ。
そうやって無限に続く永久無窮の迷路をさまよっていると、
「いえ、しだけ今後の部の活について討論していただけよ」
気兼ねたのか、水無月が俺の代打をしてくれたようだ。なんだろう、フォローしてくれたはずなのにあまり嬉しくない……
「なんだーー!!そうだったら私もってよ~~」
「悪いな、今日は掃除當番じゃなかったから早めに部室に來たんだよ」
だからといってこの編集者様の意向を妨げれば、あとで何をされるか分からないのでそのまま乗ることにした。とはいうものの……
実際に討論なんてしていないのだから、何を話していたのか分からん……
「で、どんな話してたの?今後って?やっぱり記事関連かな??」
やはり來たああ、大どんな質問をしてくるか予想は出來たが、実際となると別だ。よく言うだろう、頭で考えるのと、を使って行をするのは同じではないということを。
しかもこの頭を捻って「ん?」と訊いてくるところ、神無月ならではの怖さというものもある。無論、あの格裏腹教師には遠く及ばないが。
こんな俺を察したのか、耐えきれなくなった編集者こと水無月桜は再び代わりに応じた。
「そうよ、新聞記事に何を書こうかと迷っていたところ」
水無月はいつの間にか自分のパソコンが置かれている機を離れ、俺と神無月が話している最も近い機に座ろうとしていた。
とまあ、ここからようやく本格的な部會が始まるようだ。
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