《俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。》032.どんな記事にするのだろうか……?

「さて、さてさて。どこから話していこうか!?」

ボルテージMAXとまではいかないが、とにかくハイテンションな神無月の聲掛けによってたった三人による會議がようやく始まった。

しかし、この気ぶりはいつ見ても飽きない。普通ならテンションが高い人といるならば疲・れ・る・と思うだろう、だが小説家の俺にとっては有り難い。これほどまで特殊な人間は小説のアイデアにり得るからだ。

「話し始める容なんてもうすでに決まっているんじゃないのかしら」

そこに冷え切った言葉を投げ捨ててくる、この猛者は水無月だ。

もう何度目だろうか、この二人の格は信じられないほど対をしているようにじてしまうのは。

よく格やキャラが違い過ぎて仲が悪い人間関係を見る。馬が合わないってやつだ。一見彼らもそうなるかと思いきや、

「そうだよね!大まかな方針を立てなきゃ事が始まらないのは、記事を作るのに限ったことじゃないし」

「よく分かってるわ。さすが神無月さんね」

と容易に意気投合するのだ。なぜだろうか、いつ考えてもその理由が思い浮かばない。

すると俺の傍観思考を察知したように神無月と話していたはずの水無月は、一瞬だけ俺の方に目線をずらしてきた。なるほど、アレ小説のことか。

だから分かっているような素振りを見せるために「ああ、そうだな」と頭を掻きながら俺は応じた。

ところで今のこの狀況というか立ち位置を語るならば、簡単だ。一つの長機に左から俺、神無月、水無月が座っているのだ。

つまり何か戯言を言ったとしても神無月が間にいるのでこの恐ろしい編集者の耳にはらない…………はずだったのだが……

「ねえ、今何か言わなかったかしら?」

ちょうど記事のメインたる部分、すなわち何を書いていくのか決めようとした時だ。水無月は高校名義で提出するのだから高校に関する容で十分なのではないかと提案したのだが、そこに俺が「つまらんな」と、一言囁いてしまったのだ。

別に異論を呈するのは悪いことではない……が場というものがこの時は悪かったのだ。

「言いたいことがあるなら言ったらどう?」

討論が始まってから第一の言葉がそれだったのだ。それが、それこそが最大かつ最兇の狀況を作り出した要因。

「そうだな……はっきり言えばつまらない、に限る。だってそうじゃないか?他の高校でもやっているような容なんか書いてどうすんだ、模倣したところで、オリジナルには勝てっこないことは分かってるだろ?」

神無月を挾んで向こう側に座っている水無月は一つ、沈黙を挾んでから、

「なら……何を書くって言うのかしら?」

「市の稅金の使い道とか?」

わざとらしい普段と同じような溜息が離れた俺にさえ聞こえる。なるほど、やはり卻下か。

「あなたねえ、もっと現実を見ることはできないの?冗談のつもりなのかもしれないのだけれど、本気で言っているのなら、こればかりは脳レベルが蟲以下なのは避けられないわよ」

「何を、俺は本気だぞ」と俺は凹まずに応える。

「読んでみたい、知りたい記事を書くなら一番じゃねーか。だってこれ以上に俺たちが知りたいことなんてないだろ。人の金をどこに、どうやって勝手に使っているのかなんて市民全員の好奇心を湧かすだろうよ」

俺は現実味がないことを淡々と述べていく、これも俺の職業柄であることが原因だ……

水無月はどうやらそれに勘づき始めたらしい。無言で俺の言葉を全て聞き取り數秒経ってから、

「卻下」

と、まるで積み重ねようとした積み木を片手だけで破壊するように俺の意見をゴミ箱へ投げれた。

「な、なら高校の話と高校じゃない話をれるってのはどう?」

勝手に論爭を始めてしまった俺と水無月との間の生徒、神無月は息を吹き返したように論爭に混じってきた、というか解決への兆しを見せてくれたのである。なんとこいつは永遠と続く討論を終わらせる救済者だったのか……

「そうね、私はそれでいいのだけれど……その男はどうなのかしら?」

「何言ってんだ?俺だって良いに決まってるだろ」

まさに神無月がここにいなければこの問題は解決しなかっただろう。何せ、

「でも……的に何を記事にするのかしら?」

「そこで良いアイデアがあるんだよーー!」

と、高校周辺の施設について記事に取り上げるなんて提案したのも彼だったのだから。

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